【うちの本棚】第百三十三回 ふきだまり/川崎のぼる

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは川崎のぼるの『ふきだまり』です。ドヤ街を舞台にした友情と青春の人情ドラマ。同時収録の時代劇とミステリー作品もほかでは読めない作品で、川崎ファンであれば必読の一冊です。

【関連:第百三十二回 川崎のぼる傑作漫画集】

 

この単行本はオリオン出版から刊行された「ポケットコミックス」というシリーズの一冊にあたるのだが、オリオン出版というのはスタジオシップが一時使用していた出版社名。この単行本と同時期には少女マンガを多く刊行していた(牧野和子やのがみけいといった作家の作品が印象深い)。

自動車会社社長の息子とその使用人の息子とが親友として仲良くつき合っていたが、あるきっかけでし子調の息子が怪我をしてしまい、その原因が使用人の息子だったことから、社長の陰湿な復讐が始まり、使用人と息子は将来の夢を絶たれ、仕事もなくしドヤ街へと流れていった。それから3年。すっかりすさんだ生活に馴染んでしまった使用人の息子は、社長宅のお手伝いだった女性と再会し、社長の息子もその後の生活を心配していたと知る。

そしてドヤ街で出会った中年男性に「ドヤ街の上辺だけを見ているからだめなんだ」と諭され、ドヤ街にも将来の夢を抱いて生きている若者がいることを知る。

お手伝いの連絡で社長の息子もドヤ街で再会し、同時に家を飛び出し使用人親子と生活を共にするのだった。

ドヤ街を舞台にした人情ドラマであり、川崎のぼるらしい作品と言っていいだろう。
『ある浪人の死』はある浪人がひとりの少女と出会い、旅路を共にする話。『浪人丹兵衛絶命』に印象が似ている。掲載誌を意識したのか、コマ割りや表現が他の川崎作品とちょっと違っているような気もする。
『悪魔博士』はミステリー作品。夜汽車の中から始まる展開はいいのだが、中盤、ラストとどうにもわかりにくいところがあり、謎の解決についても犯人の手紙を読むという安易なものになっている上に手紙の内容自体がわかりにくいという、川崎のぼるにしては隙のありすぎる作品だった。絵柄的にも初期の作品と思えるが、制作に時間がかけられない状況だったのかもしれない。

個人的にこの単行本は、川崎作品の一冊として記憶に残っているもののひとつなのだが、一般的にはオリオン出版、ポケットコミックス共にレアなものになるのではないかと思う。

書 名/ふきだまり
著者名/川崎のぼる
出版元/オリオン
判 型/新書判
定 価/350円
シリーズ名/Pocket Comics
初版発行日/1976年5月10日
収録作品/ふきだまり(秋田書店「週刊少年チャンピオン」1970年6号〜12号)
ある浪人の死(虫プロ商事「COM」1967年11月号)
悪魔博士(初出不明)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/