記憶するくらい1冊を短期間に繰り返したほうがいいのです。

基礎がないまま公式問題集に取り組んでも、解説の意味がわからないので、ある程度で伸び悩んでしまいます。

マラソンでいえばまずはジョギングで基礎体力をつけるようなイメージです。

問題と解答を覚え、どのページを開いてもわかるようになれば、次の問題集に進むのです。

問題集を1回取り組んだだけでほかの情報が気になり違う教材を買い、それも数ページ解いただけでさらに違う教材を買う、ということをしがちですが、それでは教材にかけた時間とお金の無駄になります。

――ほかに教材の効果的な使い方はありますか。

おすすめは公式問題集を使いこなすことです。

解答を確認するだけでなく、出題の文章も書いてみましょう。

TOEICは使われるテーマがいつも似ているのでテーマも頭に入りますし、話の流れをつかむ力や語彙(ごい)力もつくなどさまざまな効果があります。

ポイントは、まず日本語で文の意味を理解しておき、それから文の構造を意識して書くこと。

これを何度も繰り返すことで、文章を自分のものにでき、語彙(ごい)力や文の構造を見抜く力がつきます。

そして音読です。

単語をまとまり(チャンク)でつかむことができ、文章を見たときにすぐに意味がわかるようになります。

初級者は単語を左から右へ一語一語追っていることが多いんですね。

だから時間がかかるし、疲れます。

上級者は意味のかたまりをチャンクで追っていくので、早いし、ラクなんです。

音読は、語彙(ごい)や文法を取り込め、「話す・聞く・書く・読む」の4技能も向上するという効果があります。

声に出した量に比例してリーディング力がつきます。

リスニングでは、似た音の識別、例えば「work」と「walk」の聞き取りでひっかかることがありますが、それも声に出すのが少ないからです。

自分で言うことができれば聞き取りは容易になります。

できれば音声テープと同じ速度で音読しましょう。

そのためには単語と単語のつながりを言えなければならないし、消える音は消さなければなりません。

英語を聞いていて速くてわからないという人は速くしゃべることもできないんです。

バッテイングセンターで、球速90キロで練習している人は120キロのボールを打てないでしょう。

逆に、120キロで練習している人は90キロのボールは止まってみえるかもしれません。

それと同じことです。

――教材の選び方にはポイントがありますか。

公式問題集とTOEICに特化した教材がいいでしょう。

目指すスコアにもよりますが、600点を目指すなら問題を総括している塚田幸光先生の教材がおすすめです。

各パートの攻略方法が書いてあり、問題の見方を教えてくれます。

公式問題集を解き、別の教材でポイントを知り、また公式問題集に向かうと、見えないところが見えてきて、勘が働くようになります。

TOEICに関係のない教材を使ってもあまり効果はありません。

英字新聞の時事的な記事も、800点を超えるような人には有意義ですが、TOEICはあまり時事に関係する問題は出題されないので、試験対策としては必要ないでしょう。

――TOEICの問題に傾向があるということでしょうか。

TOEICはテストである以上、ルールがあり、似た型・テーマが出るのがお約束なのです。

ですから公式問題集を繰り返すことで、質問と選択肢を見るとどのようなパターンかわかってくるんですね。

例えるなら、手品のタネ明かしと一緒です。

タネを知っていれば問題の手口が容易に見えてきます。

質問に「most likely」とあれば「恐らく」という意味なので「ズバッとは言いませんよ」というサインです。