「阿倍野に日本一のビルを建てろ!」との山口昌紀会長の号令のもと、近畿日本鉄道が威信をかけて建設を進める『あべのハルカス』。8月30日には300メートルの高さに到達し、超高層ビルでは横浜のランドマークタワー(296.33メートル)を抜いて日本一の高さになったわけだが、早くも先行きが不安視されているという。
 「竣工予定は2014年。地上60階の堂々たる威容は、まさに“平成の通天閣”と地元ではもっぱら。しかし、ここにきて、オフィス・フロアのメーンテナントに予定されていた『シャープ』が本社機構の移転を断念し、一気に暗雲が立ち込めたのです」(地元紙記者)

 ハルカスの計画が立ち上がった頃のシャープは、液晶パネルが絶好調で、堺に新工場を作るなどイケイケ状態だったが、今や空前の赤字で崖っぷち。台湾の鴻海グループとの業務提携を巡り、最後の詰めの真っ最中で、「こんな状態では高額家賃のハルカスに引っ越せるわけがない」(シャープOB)というのも頷ける。

 問題は、大口テナントに逃げられた近鉄だ。
 「『WTC』にしても『りんくうゲートタワー』にしても、ここ最近の大阪の超高層ビルは経営破綻が続き、お荷物状態になっています。近鉄はそれらの失敗を踏まえて、関西経済の底力を見せるべく万全の計画を進めていただけに、ショックは大きいと思いますよ」(経済誌記者)

 ただ、そもそもシャープ本社の移転計画は正式には発表されていない。それだけに、この問題に関してはシャープも近鉄もノーコメント。ある近鉄関係者はこう語る。
 「確かにシャープの本社が入るという話は正式には発表してません。正式に発表しない間に話が消えたんやから、“話が無かった”のと同じでしょ」

 一方のシャープ側も、「社内に『移転準備室』を設置するという話はあった」(前出・OB)というから、計画があったことは間違いないようだ。

 大阪の新たなシンボルの行方やいかに。