【ミリタリーへの招待】護衛艦を「守って」いるのは?

こんにちは、咲村珠樹です。ミリタリー初心者に向けて、軽いミリタリー知識をご提供する「ミリタリーへの招待」。今回は海上自衛隊の艦艇にある、とある重要な「装備」についてのお話です。

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日本に対する脅威を海から守ってくれるのが、海上自衛隊です。任務としてはシーレーン(海上交通路)を含む、海上からの脅威を水際で阻止すること。その他にも各地に残された機雷の除去や、近年ではソマリア沖などの海賊対処も行っています。脅威に対して対処手段を持たない側からすると、海上自衛隊に守られていると非常に安心できますね。……では、海上自衛隊の艦艇は、誰が守ってくれているのでしょうか。

それに対するある種の答えが、艦内にあります。

これは横須賀の第2護衛隊に所属する護衛艦「はるさめ(DD-102)」。1997年に就役した、むらさめ型護衛艦の2番艦で、2006年のTVアニメ「タクティカルロア」の取材協力艦となったり、航空自衛隊の航空救難隊を描いた2008年公開の映画「空へ−救いの翼 RESCUE WINGS-」にもゲスト出演しています。

護衛艦はるさめ(DD-102)
【写真:護衛艦はるさめ(DD-102)】

その艦内に、ある重要な「装備」があります。それがこちら。

はるさめ艦内にある神棚
【写真:はるさめ艦内にある神棚】

なんと神棚。まつられているのは大分県にある宇佐神宮のお札です。宇佐神宮はいわゆる「八幡様」の総本社として知られています。これだけでなく、就役当時の宮司さんの揮毫による「はるさめ」の艦名板までありました。

宇佐神宮宮司・到津公齊氏(当時)揮毫の艦名板
【写真:宇佐神宮宮司・到津公齊氏(当時)揮毫の艦名板】

日本の船の多くに、航海の安全を祈願して神棚が設けられているように、海上自衛隊の艦艇にも、同じく神棚が設けられ、安全を祈願しているんですね。けして攻撃の命中とかを神頼みしている訳ではありません。

乗組員の皆さんは毎日神棚に拝礼し、お札も毎年古いものを納め、新しいものを授けてもらっているそうです。

ちなみに、この神棚にまつられる神社ですが、全てが宇佐神宮という訳ではなく、艦艇ごとに縁のある神社がまつられています。これは艦名にちなんでいたり、関係者が崇敬していた神社だったりと様々。この他の例もいくつかご紹介しましょう。

海上自衛隊最大の艦艇であるヘリコプター搭載護衛艦、ひゅうが型のネームシップである「ひゅうが(DDH-181)」。こちらは艦名のひゅうが(宮崎県の旧国名、日向にちなむ)から、宮崎県日南市にある鵜戸神宮がまつられています。

ひゅうが(DDH-181)には鵜戸神宮がまつられている
【写真:ひゅうが(DDH-181)には鵜戸神宮がまつられている】

地元では「鵜戸さん」と呼ばれ、親しまれている神社です。昔は新婦の乗った馬(シャンシャン馬)を新郎が引いて参拝する「鵜戸参り」という風習もありました。こちらの祭神は、神武天皇の父(海幸彦の子)であるウガヤフキアエズノミコト。祭神の母であるトヨタマヒメや、妃となったタマヨリヒメ(トヨタマヒメの妹)は、海神であるワタツミノカミの娘なので、ある意味海上の安全を祈願するには最適の神社と言えるでしょう。地元(すぐ隣に鵜戸漁港がある)でも海上安全の神様として信仰されています。

ひゅうがのロゴ・シンボルマークはフェニックスですが、これも宮崎県の県木であるフェニックス(カナリーヤシ)にちなんだものです。

南極観測に使用されている砕氷艦「しらせ(AGB-5003)」。こちらの神棚にあるのは、富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)のお札。

砕氷艦しらせには、伝統を引き継ぎ浅間大社が
【写真:砕氷艦しらせには、伝統を引き継ぎ浅間大社が】

富士山本宮浅間大社は富士山をご神体とする、いわゆる「富士信仰」の総本社。南極に行くのに何故富士山……? これは、南極観測隊を輸送する任務が、海上保安庁から海上自衛隊に移管された時、最初に建造された砕氷艦「ふじ(AGB-5001)」からの伝統です。ふじは富士山にちなんだ命名だったので、富士山をご神体とする富士山本宮浅間大社のお札を神棚にまつることになり、それを後継艦のしらせ(先代・AGB-5002)以降も引き継いだ、ということなのです。富士山本宮浅間大社の境内には「ふじ」から奉納された南極の石があるので、参拝の折りには探してみてください。

様々な由来で、海上自衛隊の艦艇にまつられる神様。今日も航海・任務の安全を守っています。もし護衛艦などの見学に行った際は、乗組員の方に「ここの神棚には、どこの神様がまつられていますか?」と聞いてみるのもいいかもしれません。ひょっとしたら、身近な神社の名前を耳にするかもしれませんよ。

(文・写真:咲村珠樹)