銀行トリビア (15) 「前島密」が作った郵便貯金、『ゆうちょ銀行』になって何が変わった?

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郵政民営化で誕生した「ゆうちょ銀行」ですが、もともと郵便貯金ってどういうものだったのでしょうか。

「前島密(まえじま ひそか)」という名前、聞いたころがありますよね。

明治のはじめ、英国の近代的な郵便制度にならって日本で郵便事業をおこした人です。

郵便貯金も彼が作りました。

当時の日本の人々には「貯蓄」という考え方はなく、前島密はそれが貧困の原因になっていると考えました。

英国で郵便局が貯金も扱っているのを見て、日本でもそれを取り入れて、人々の生活の安定と福祉の向上を図ろうとしたのです。

1875(明治8)年、東京と横浜の郵便局で貯金の取扱いが始まり、だんだんに全国の郵便局に広がっていきました。

このように、郵便貯金は最初から「貯金」のためのものだったわけです。

一方、銀行は、個人や企業が預けた「預金」で企業に貸出しを行い、その利ざやを収入源としています。

貯金と預金を合わせたものが「預貯金」です。

では、なぜ民営化されたのでしょうか。

郵便貯金は全国津々浦々にある郵便局が扱っていることから、身近な金融機関として根強い人気がありました。

国が元本保証していることや銀行預金に比べて利率や手数料が有利だったことなどもあって多くの貯金を集め、その資金量は膨大になっていました。

郵政民営化を提唱していた小泉純一郎氏の政権が誕生したのが2001年。

このとき郵便貯金が保有する資金量は約260兆円にも達していました。

当時、世界最大規模の銀行だったみずほフィナンシャルグループが163兆円でしたから、郵便貯金は「肥大化している」「民間の事業を圧迫している」と批判されたのです。

郵便貯金が集めた資金は旧・大蔵省を通して道路公団などの特殊法人へ貸し出されましたが、採算管理が甘くて多額の焦げ付きを出したり、特殊法人が官僚の天下り先になっていたりするなど、経営が非効率的で不透明だったことも問題視されました。

こうしたことから民営化を求める声が高まり、まず2003年に公社化されました。

日本郵政公社が郵政三事業(郵便、郵便貯金、簡易保険)を行うことになったのです。

そして2007年10月、日本郵政株式会社が発足して民営化され、そのグループ会社として「株式会社ゆうちょ銀行」が誕生しました。

ということで現在、ゆうちょ銀行は民間の銀行です。

民営化前に預け入れられた定額郵便貯金などには政府による保証がありますが、それ以後のものは、一般の銀行預金と同じように預金保険の対象となります。

一方、それまでの商品の中には民営化後に一部廃止されたものがあるものの、通常貯金、定期貯金、定額貯金などメインの商品には変わりはありません。

1人当たり1000万円の預入限度額も残っています。

ゆうちょ銀行も、他の銀行と同じように投資信託や変額年金保険を扱っています。

今、それに加えて新規事業として住宅ローンと中小企業向け融資を始めようとしていますが、これには、民間の金融機関が強く反対しています。

ゆうちょ銀行の株式は日本郵政株式会社を通して政府が保有しているため、”暗黙の政府保証”があって優位性が高く、民間金融機関の業務が圧迫されるから、というのがその理由です。

ゆうちょ銀行は”民間の銀行”になりましたが、まだ、”普通の銀行”ではありません。

普通の銀行になるのは、ゆうちょ銀行が上場して株が政府の手から離れるときです。