遺言状を作る人が増えている!その現状とは?




日本でも遺言状を作る人が増えているようです。遺言状を作ることのメリット、作る際に気をつけることは何でしょうか? また遺言状を作るとお金はかかるのでしょうか? 弁護士法人アディーレ法律事務所の篠田恵理香弁護士にお話を伺いました。





■遺言状を作る人は増えている!



――日本でも遺言状を作る人が増えていると聞いていますが事実でしょうか?



篠田弁護士 増えていると思いますね。データで言いますと、公正証書遺言の作成件数が平成14年度では64,007件だったのが、平成22年度には81,984件になっています(28%増加)。また、家庭裁判所での遺言状検認件数も、平成14年度には10,503件だったのが、平成22年度には14,559件(約39%増加)に増えています。



――公証証書遺言というのは何ですか?



篠田弁護士 法的に有効な遺言状には大きく分けて2つあります。(1)自筆証書遺言と(2)公正証書遺言です。自筆証書遺言というのは遺言を自筆で書いて、署名、押印したものです。公正証書遺言というのは公証役場に行って、立会人(2人)の元に作成する遺言です。



――家庭裁判所での検認件数というはどういう意味でしょうか?



篠田弁護士 検認というのは「遺言状がありました!」と認めることです。その遺言状が法的に有効だとされるには、家庭裁判所で「検認」されないといけません。つまり、遺言書が存在する場合には、まず家庭裁判所に持って行かないといけないんです。



――先ほどの2つ、自筆証書遺言でも公認証書遺言でも家庭裁判所で検認しないといけないんですか?



篠田弁護士 自筆証書遺言の場合は、検認を受けないといけません。検認を受けないで執行してしまうと5万円以下の過料に処せられる可能性があります。公認証書遺言の場合は検認は不要です。



■遺言状を作る人が増えている理由は?



――遺言状を作る人が増えている理由は何でしょうか?



篠田弁護士 はっきりとしたことは言えませんが、自己の意思の発現という側面と、残された者たちへの配慮という側面があると思われます。具体的には、自分の財産は自分で誰にあげるか決めたいという願いと、後の遺産分割でもめてほしくないということですね。



――もめることは多いのでしょうか?



篠田弁護士 遺産分割に関するもめ事は増えていると思います。老後に自分の面倒をよく見てもらった家族に対して財産を多く残したいとか、子供のいる家庭に多く財産を残したいとか思うことは、財産を残す人の意思としてはよくあることです。しかし、不況のあおりか時代が変わったからなのか、権利を権利として主張して、このような「人情」からくる相続分配に納得しない相続人が増えているのではないでしょうか。ほかに考えられるのは、自分が相続でもめたからこそ、自分の相続人たちにはもめてほしくないという経験があるのかもしれませんね。



■遺言状の注意事項 ワープロ文書に印鑑は無効!



――遺言状を作成する際に注意することは何でしょうか?



篠田弁護士 法律の規定をご存じないまま、自分で遺言状を作成する人に多いのですが、ワープロ文書を作ってそれに印鑑を押して完成という場合、これは無効なんですよ。



――ダメなんですか?



篠田弁護士 ダメなんです。また個人が生前に残したビデオ映像、これも遺言として無効です。



――ビデオもダメなんですね。



篠田弁護士 先ほどのワープロの例もそうなんですが、ダメな理由は「改ざんできるから」とされています。また、ほとんどの人が知らないと思いますが、人が亡くなって遺言状が出てきても勝手に開けてはいけません。



――えっ? 開けちゃいけなんですか?



篠田弁護士 まず家庭裁判所に持って行って、そこで開けないといけないんです(前述の検認作業)。遺言状が無効になるとまでは言えないですが、ペナルティー規定があり、開封した人は先ほどと同じく5万円以下の過料の支払いを命じられる可能性があります。



――人情としては見つけたらすぐに中身を確認したいと思うんですが……。



篠田弁護士 私もそう思いますが(笑)、法的にはダメなんですね。あと、遺言状が見つかっても「法的に有効」とならない残念な場合もあります。



――具体的にどういうことでしょうか?



篠田弁護士 日付が入ってないことがたまにあります。これは無効です。また同様にうっかり署名が入ってない。これも無効です。誰が書いたかわからないとされます。



――署名ですが、筆跡が本人のものでも日付がないとダメなんですか?



篠田弁護士 ダメですね。



■遺言状の作成にかかるコストとは?



――正式に遺言状を作る場合にかかるコストを教えてください。



篠田弁護士  自筆証書遺言の場合には、自筆で書いて、署名、押印して金庫に入れるだけなので無料ですね。公正証書も財産目録が少ない等、がんばれば自分で作ることができる場合もあります。



――自分で作るとタダで済むんですね。ただ、死んだ後きちんと遺言が実行されるかは心配ですね。



篠田弁護士 その場合には遺言の執行者を立てた方がいいですね。執行人には弁護士が選任される場合が多いですけれども、そのコストは20万〜30万円ぐらいでしょう。



――公正証書遺言の場合はいくらかかるでしょうか?



篠田弁護士 公正証書役場に行って作成するということになると、やはり専門家に頼んだ方がいいと思います。その場合には弁護士を立てることになると思うんですが、弁護士費用が10万〜20万円ぐらい。あと財産によって収入印紙代がかかりますので、その費用は加算されます。さらに執行人に弁護士を選任する場合には先ほどのお値段がかかりますね。



■財産による公正証書遺言の印紙代金一覧



100万円まで:5,000円

200万円まで:7,000円

500万円まで:11,000円

1000万円まで:17,000円

3000万円まで:23,000円

5000万円まで:29,000円

1億円まで43,000円



1億円を超える部分については、

1億円を超え3億円まで:5,000万円ごとに13,000円

3億円を超え10億円まで:5,000万円ごとに11,000円

10億円を超える部分:5,000万円ごとに8,000円

がそれぞれ加算されます。



■遺言状は作った方がいい!



――遺言状は作った方がいいと思われますか?



篠田弁護士 絶対に作った方がいいと思います。不動産を複数持っている方や、財産が多い方は特にです。不要なもめ事が防げますし、自分の意思をうまく反映した遺産分割が行えますから。イヤな言い方かもしれませんが、遺産分割したくない人を除いたりすることもできますよ。つまり、通常の相続手続きを行っていたのとはまったく異なる遺産分配を実現できます。一部遺留分等による制約はありますが、基本的には遺言者の遺志がもっとも尊重されますので。



さっぱり財産がない筆者などは関係のない話かもしれませんが(笑)、財産を持って、これから老境に向かう団塊の世代の方々は遺言状を作成するべきかもしれません。あなたは遺言状を作りますか?





(高橋モータース@dcp)





弁護士法人アディーレ法律事務所のサイト

http://www.adire.jp/





今回質問に答えてくださった篠田恵里香弁護士の本が出ています。





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