「読書とはディベート」。直接文字を書き込むことを躊躇せず、疑問点、湧いたアイデアをどんどんメモする(写真は小宮さんの蔵書)

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書くことで「思考のタネ」がつくられる! 畑村創造工学研究所代表の畑村洋太郎さん、経営コンサルタントの小宮一慶さんが明かす目標具現化への必須テクニックとは――。

手近な資料である新聞記事の整理にも、両氏の個性が垣間見える。

小宮さんの場合、気になる記事は切り抜いてスクラップしているが、クリアファイルで分類したり、同じテーマのもの(日経新聞の「経済教室」など)をマグネットつきのクリップで束ねるだけのこともある。移動中に興味ある記事を見つけたときは、新聞紙の上部を少しだけ破いておく。あとでそれを目印に記事を切り抜けば、探す手間が省けるからだ。

15社の顧問先を抱え、年間200本以上の講演をこなす小宮さんの毎日は超多忙。地方への出張も多い。こうしたちょっとした工夫で時間と手間を節約し、効率よく仕事をこなしているのだ。

一方、工学博士である畑村さんのスクラップ法はあくまで緻密である。失敗に関する記事の気になる個所に赤線を引き、50年にわたって愛用する東大のレポート用紙、通称「電気レポート」に貼ってファイリング。自身が統括する「失敗知識データベース整備事業」(科学技術振興機構)の一環として、コメントつきでデータベース化している。

ちなみにこの「電気レポート」は、電気工学科のレポート用紙としてつくられたもの。縦横に罫が引いてあり、文字も図表も記入しやすい。

先の「見学記」はもちろん、畑村さんは、ちょっとしたメモにもこの紙を使っているが、いかなる用途でも、右上に日付を打つのがお約束。畑村研究所では、すべての資料が時系列で管理されているからだ。

対して小宮さんは、テーマ別にメモや資料を整理しているといえるだろう。

そんな両氏に共通するのが、読書メモの方法である。専用のノートをつくるのではなく、本に赤線を引き、感じたこと、考えたことを直接書き込んでいく。

「『読みながら線を引く』といいますが、それはちがう。読んで大事だと思うから線を引く。つまり線を引いた個所は2回読んでいるということ。一旦読み終わったあと、赤線の部分だけを追いかければ、その本のエッセンスが短時間で頭に入ります」と畑村さんは話す。

また、本に自分の考えを書き込むのは「著者と議論をする」ようなもの。読書とは一種のディベートだというのが、畑村さんの考え方なのだ。

しかも、その“仮想ディベートの相手”と、後日、実際に会うこともある。『吉野家の経済学』の著者、吉野家の安部修仁社長と知り合いになった際は、畑村さんの書き込みに、安部社長本人が興味を示した。頼まれて本を貸し出したところ、「今後、自分が何をやるべきか、先生の視点から学ばせてもらった」と、感謝されたという。

(ノンフィクション作家 梶山寿子=文 澁谷高晴=撮影)