大相撲秋場所は期待通り、綱取りを目指す日馬富士が勝ちっぱなし、一差で白鵬が追いかけ、盛り上がりを見せている。

しかし場所中に雷(いかずち)理事(元幕内春日富士)が突如退職するという事件があった。情けないスキャンダルである。

雷は今年2月までは春日山親方だった。1月の理事選挙に立候補して当選。2月に部屋付きの濱錦の引退に伴って名跡と部屋を譲り、雷となった。そして相撲協会の専務理事として、部屋ではなく協会に出勤していた。

『週刊新潮』9月27日号によれば、協会事務所に出勤していた雷は、元広報担当の四十代半ばの女性職員と不倫関係になった。どちらも既婚者だ。その上、二人で遊びに行った金やラブホテルで支払った費用も協会の経費に付けていたという。

雷は「ラブホテルには仕事で行って一人で泊まった。経理が大丈夫というから領収書を回した」とコメントしている。交際相手の女性職員はそのラブホテルに「打合せ」のために行ったのだという。
むちゃくちゃである。

この事件が発覚した後、雷は、理事職を辞めようとした。役職を返上することで、親方の身分は維持しようと思ったのだ。しかし協会はそれを認めなかったために、雷は退職届を出した。

女性職員は12日に退職している。

二人の行動は、『週刊新潮』の報道が、何から何まで本当だったことを物語っている。相撲協会は、雷は「自主的に辞めた」として、退職金を支払っている。

そもそも雷は、昨年、弟子の春日王が大相撲の八百長問題に関与した責任を取らされて、委員から主任に降格されている。その人間が、翌年には2階級上がって理事になっているのだ。そしてそれから半年余りで、協会事務員と深い仲になり、協会経費を使い込んでいるのだ。まるで犯罪者のような男を協会幹部にしていたのだ。

相撲協会が、今どきのまともな組織だと言うならば、調査委員会を設けて、雷の身辺を徹底的に洗うべきだ。不倫問題はモラルの問題だが、協会経費の不正使用は犯罪行為だ。こんな泥棒のような男が、協会の事務所で他の不正を働いていなかったと考える方が不自然だ。

相撲協会は、雷を懲戒免職にしたうえで、こうした不正を徹底的に調べ上げ、警察に告発すべきだ。

かつて相撲界は、博徒や無頼者、世間のはみ出し者の受け入れ先ではあった。
しかし、今の相撲協会は文部科学省管轄の特殊民法法人である。入ってくる金は、自分たちで好きにしてよい金ではない。公金である。緩い身内意識で仲間に分け与えてよいものではない。

10年ほど前、私は大相撲の懸賞金をとどけるため、大阪場所の事務所に何度か通ったことがある。事務員が金を受け取ったが、奥の部屋では場所担当の理事をはじめ、親方、関係者が真昼間から麻雀卓を囲んでいた。そういうことが許されていたのだ。
しかし、今は、それはできない。もう昔のふざけた協会運営はできなくなっている。世間がそれを許さない。しかし、相撲協会は本当の意味でこれを理解していない。

雷の処分を見てもわかるのは、「相撲協会は腐ったままだ」ということだ。金銭感覚もモラルも何も改善されていない。

そして最も腐臭が強いのは「親方衆」だ。

2010年、相撲界に不祥事の連鎖が起こってから、横綱朝青龍をはじめ多くの力士は協会を追われたが、親方衆は、譴責や降格人事がほとんどで、八百長問題などで解雇された親方は大嶽(元貴闘力)、谷川(元海鵬)だけだ。

力士の不祥事の監督責任があるはずの親方衆は、弟子の首を切って生き延びているのだ。

年寄株の改革も、親方衆の反対で骨抜きにされた。


雷の犯罪は、普通ならば世間様に顔向けできない恥ずかしい行為だ。それを庇って、自主退職とし、退職金を支払う協会ともども、どこか大事な感覚が欠如しているとしか思えない。この処分を見て、親方衆は「外部にばれないようにしよう」とは思うだろうが、居住まいを正すことはないだろう。

腐った肉は、どんな料理をしても腐ったままだ。日本相撲協会は「親方衆」という腐敗した部分を切除し、ごみ箱に捨てなければ、再び世間の指弾を受けることになるだろう。

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