自分が手がけた商品で暮らしを楽しむ提案を

ビジネスパーソン研究FILE Vol.186

株式会社ニトリ 丸山奈穂さん

商品企画に携わり、常に新鮮さのある商品構成や売り場づくりを手がけるバイヤーの丸山さん


■南町田店に配属され、カーテン商品の売り場づくりを担当。その後、新店のオープニングメンバーに

学生時代、ロンドンにホームステイした経験を持つ丸山さん。ホストファミリーがソファカバーを洗濯する際、カーテンからラグまで、部屋のすべてのインテリアを一新する様子にカルチャーショックを受けたという。
「日本では考えられないことだと感じました。この会社に入社したのは、『もっと暮らしを豊かにするために、自分でインテリアのコーディネートを打ち出してみたい』と思ったからなんです」

入社後は、南町田店に配属され、寝具・雑貨類のホームファッション分野にて、カーテン、ラグ、ファブリックの部門を担当することに。まずは店頭での接客や商品の陳列などから手がけていったという。
「最初は売り場の内容も把握できず、お客さまから質問や相談を受けてもすぐに答えられないことも多かったです。しかし、お客さまにとっては、新人もベテランも同じ『ニトリの人』。ベテランの人と同等の知識や迅速な案内を要求されるので、パートスタッフや社員に教えてもらいながら必死で覚えていきました」

丸山さんは、配属から1カ月もたたないうちに、カーテン商品の売り場づくりや、売り上げ予測を立てたうえでの発注も任されていくようになる。
「前週や月間の売り上げ数字を見て、翌週の予測を立てて商品を発注しますが、どれくらいの数が必要かわからないまま、大量に発注をしてしまったことがありまして。数表をしっかり見ていれば予測できたことなのに、『売れるから』という理由だけでドンドン発注した結果、山のように商品が届き、途方に暮れました。学生時代、接客のアルバイトをしたことがありましたが、仕入れた商品が販売を経て売り上げに結びつくことを意識したことはなく、数字による予測など考えたこともなかった。商品が売れたり売れなかったりすることには何らかの理由があるものだと知り、それを検証して予測していくことがいかに大事かを学びました」

一方、売り場づくりにおいても検証と予測が大事だと実感。当初は本部の指示通りに動いていたが、カーテンをまとめるために使う「総掛け(ふさがけ)」が、「カーテンレール」よりも売れていないことに気づき、検証を重ねた後に商品の展開場所を変えることを提案したという。
「セットで買うことも多い商品なのに、総掛けだけが売れていなかったので、カーテンレール売り場の横に大量の商品を置くように提案しました。すると、数週間後には売り上げが2倍にも伸びた! 自分の提案の効果が数字ではっきりわかるので、やりがいと手応えを感じるようになっていきました」

丸山さんは半年の経験を重ねた後、「もっと売り場づくりを手がけてみたい」と自ら手を挙げ、カーテン部門全体の売り場づくりを任されていくことになる。
「経験が浅くてもトライさせてくれる会社なので、チャンスをもらえてうれしかったです! 数表を見て予測を立て、季節の移り変わりなども考えたうえで、『どうすれば売り上げが上がるか』を検証し、どんなディスプレーや商品配置にするかを決めていきました。ディスプレーに使う什器(じゅうき)・POPの発注なども自分で行うので、一から作品をつくるような面白さも感じましたね」

入社3年目の時、丸山さんは岐阜県各務原(かがみはら)店のオープニングメンバーとして異動することに。ベテランスタッフに囲まれていた南町田店とは違い、今度は自分が新人スタッフに教えていく立場となった。
「商品を配置する棚割り(商品棚にどの商品をどれだけ陳列するかの配置計画)から、品出し、接客まで、すべてを教えてサポートしていくことになりました。スムーズにいかないことも多かったけれど、パートスタッフの皆さんの困りごとはすべて引き受け、全力でサポート。各務原店は南町田店よりも店舗の規模が小さく、社員数も少なかったため、担当部門だけでなく、売り場全体を見なくてはならなくて。それまでの3倍以上の商品の発注や管理もすることになり、目の回る忙しさでした」

丸山さんは、自分1人ですべてを管理することは無理だと気づき、スタッフをしっかり教育し、仕事をドンドン任せていこうと考えた。
「社員はいずれ異動してしまうので、最終的に店舗を支えるのはパートスタッフの皆さんです。現場をしっかり回していくためにも、一人ひとりに成長してもらわねばならないと考え、売り場づくりの提案から発注までドンドン任せていきました。みんないい人ばかりで、一緒に売り場をつくり上げ、チームで売り上げに貢献していく達成感も得ることができましたね。自分1人が頑張ればいいのではなく、多くの人の力を借りながら売り場全体をいかにスムーズに運営していくかが重要。チームとして、組織としての動き・大切さを学んだ時期でした」


■念願の商品コーディネート担当に。提案する面白さに目覚めた後、バイヤーとして商品企画に携わる

丸山さんが大きな岐路を迎えたのは入社4年目の時。営業企画室内に新設されたプレゼンテーション部門に配属され、商品のコーディネートに携わることになったのだ。
「まだしばらくは現場を経験すると思っていたので、青天の霹靂(へきれき)でビックリしました。今までとはまったく違う仕事内容でしたが、入社前から憧れていたコーディネートに携われると感じ、素直にうれしかったですね!」

丸山さんのチームに任された仕事は、シリーズ家具とともに食器やラグ、雑貨などを配置して、モデルルーム形式の新しいディスプレーをつくるというもの。商品単体ではなく、ひとつの部屋として使い方をイメージしてもらい、コーディネートの楽しさを提案していった。
それまではシリーズ家具のみを並べた展示場のようなディスプレーのみだったので、会社としての実験的な取り組みでもありました。雑貨や小物などの商品を使い、どんな暮らしをイメージしてもらうかを考える中、店舗で商品を扱った経験が生きましたね! より生活感を出そうと考え、『商品以外にも、食品の缶詰や水やワインのボトルなどを配置してみては?』という提案をしてみたら、チームのみんなから『それ、いいね!』と言ってもらえた。最終的には商品以外はNGということになりましたが、自分の意見が受け入れられてカタチになっていく喜びを感じましたね! お客さまがディスプレールームに飾った小物を手に取り、『これ、欲しい』と話している姿を見た時、『この仕事、やって良かったなあ』と心から思いました」

次第に自ら考案することの面白さに目覚めていった丸山さんは、売り場ごとにバラバラだったコーナーディスプレーのテーマを統一したり、フロア全体のディスプレーの色調を季節に合わせて統一するなどの仕事を手がけていく。
「この部署で最後に手がけた仕事が、『全店のディスプレールームの大きさを統一する』ということでした。壁や柱などの位置が店舗ごとに違うこともあり、各店のディスプレールームの大きさ、形などがバラバラだったんです。それに、家具って、広い売り場では小さく見えてしまうもの。せっかくそろえても、お客さまの部屋に合わなかったらガッカリすることになるので、より部屋に近いイメージができるようなディスプレールームづくりをすることが必要だと考えました」

全店の改装費がかかる大きな提案だったが、チームみんなで『お客さま満足度をアップするために必要なことなのだ』という信念を持って進めたという。
「いろいろな店舗に何度も足を運び、現場のスタッフの話を聞き、自ら家具を並べて実験していく中で、『机上ではなく、実際に現場で試行錯誤する大切さ』を再確認できました。2年近くかけて実現した時には、大きな仕事をやり遂げた達成感でいっぱいでしたね」

この後、丸山さんは商品開発をサポートするための情報収集を行うマテリアル部門に異動。商品を安定的に生産するため、原料をどの国から確保するべきか、どの国に開発生産を担ってもらうべきかなどの情報を集めていった。
「世界全体の原料市場動向や、開発候補となる国の賃金や通貨レートなどまで調べていきました。商品開発に直結する情報ではなかったし、自分の仕事がどう役立つのか、すぐには結果が見えない仕事ではありましたが、原材料の価格によって商品の価格構成まで変わってしまうというシビアな背景があると知ることができました。当時は綿花の高騰などの世界情勢もあり、社会の動きも含め、すべてが連動し、商品開発につながっているのだという大きな視点を持てるようになりました」

2011年、丸山さんは現部署であるバイヤー部門に異動し、既製カーテンのアシスタントバイヤーを担当することになる。
「価格も含め、ニトリとして提供していくべきものを考え、商品構成から新商品の企画、売り場の陳列ディスプレーや販促物の提案、各店の在庫調査や在庫対策の考案まで、すべてに携わっています。自社の店舗や他社の売り場を回って、どんなものが流行しているか、品ぞろえが不足しているのはどのあたりか、価格や仕様はどんなものか、販促物にはどんなものを使っているかなどを日々調査し、足りないものや新しい提案を常に考えています」

実際に商品をつくる商品開発部門や、販促物をつくる広告部門とのやりとり、メーカーとの商談なども手がけ、常に飽きさせず新鮮さのある商品構成や売り場づくりを考えている。
「自分が手がけた商品が売り場に並び、お客さまが手に取る姿を見ると、今でも感動してしまいますね。とはいえ、企画した商品がすべて売れるかといえば、まったく売れないことも。その原因を突き詰めることは非常に難しいですが、常に検証と研究を重ね、いろんな立場の人の意見を聞くように心がけ、求められる商品づくりを目指しています。目標は、マーチャンダイザーになり、自分の手で一から商品をつくっていくこと! インテリアの楽しさをもっと広めていくために、今後もいろんな商品についての勉強を続けていこうと思います」