「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (18) バンガード本社を訪問してきました--米金融業の懐の深さと日本との違い実感

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今回は、最近のトピックスから、話題を進めさせてください。

つい先日、米国フィラデルフィアにあるバンガード本社を訪問してきましたので、その時に私が見聞して来た事象と改めて感じた印象をアップデートいたしましょう。

米国バンガード本社は東海岸フィラデルフィアの郊外の、緑豊かな田園風景と共に、エレクトロニクスメーカーやIT企業の研究開発拠点が点在する地域に、実に広大な敷地を構えています。

その外観はさながら米国の大学といった佇まいで、実際バンガードの人たちは彼らのオフィスをキャンパスと呼んでいます。

米国の金融業界と言えばニューヨークのウォール街のイメージですが、バンガード本社はそれとはかけ離れた、のどかでアカデミックな環境を整えています。

そしてジョン・ボーグル氏が1975年に創業以来、ずっとこの地で世界最大級の資産運用会社へと同社を育ててきたわけです。

欧米のブティック系運用会社は郊外にオフィスを構えるケースは決して珍しくはありませんが、これほどの壮大なスケールの本社は他に例を見ないでしょう。

彼らの国内拠点はほとんどこの場所に集約されています。

同社の事業ポートフォリオは圧倒的にリテール、つまり個人向けビジネスをベースとしており、それを直販で展開することにこだわってきました。

彼ら自身が自らのことをヴァーチャルビジネスと呼ぶ通り、無店舗販売方式によって全米に顧客を創造してきています。

従って今や運用資産残高は2兆ドル(約160兆円)に及ぶ巨大運用会社の業務は基本的にここで完結され、13千人もの従業員がこの広大な施設の中で働いています。

そこで驚くべきは、数年おきに転職することが当たり前の米国金融業界にあって、彼らの平均勤続年数は日本のそれに近く、学校を卒業して就職して以来ずっとバンガード、という社員が実に多いことです。

コールセンターなどのインフラ部門に働くスタッフも同様で、しかも報酬体系はインセンティブを前提としない固定給方式。

この辺りも日本企業のカルチャーに酷似しています。

ウォール街の投資銀行などと隔絶された片田舎の環境が、こうしたバンガード独自の企業文化を醸成させるのでしょうか。

やはり彼らが最も自慢としていることのひとつが低コストの実現です。

今では200以上のポートフォリオを持つ同社ですが、その平均コスト(エクスペンスレシオと呼びすべての費用を含みます)は0.2%と米国業界平均1.12%を遥かに凌駕する圧倒的水準で、最早他社の追随を全く許しません。

彼らは今でもあらゆるコスト削減に向けた努力を続けており、顧客取引のオンライン化とサービスインフラのIT化にも日々精力的に取り組んでいることが良くわかりました。

しかし何と言ってもこうした驚異的コスト水準を達成出来るカギは、同社が必要コスト以上のマージンを顧客に転嫁しない、収益至上主義の金融業界に対するアンチテーゼを貫き続けていることと、外部販売会社に一切のフィーを支払わぬという企業理念にあることは間違いありません。

その裏打ちされたものが、ファンドが株主になっている独特の企業統治構造であり、それゆえクライアントファースト(顧客最優先)のキャッチフレーズが単なるお題目ではなく、まさに実行されている、そしてやはりバンガード従業員(彼らはクルーと呼びます)にとっての最大のプライドになっているのです。

ちなみにこれ程のスケールの企業になってさえも、創業以来の直販スタイルを貫く同社では、今でも運用資産全体の半分近くが直販経由で成り立っていて、それ以外は401K(確定拠出年金)が約3割、そして残りがIFAと呼ばれる独立系ファイナンシャルアドバイザー経由で資金が集められています。