やりたくない仕事を理想の仕事に変える技術

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■捨てるべき仕事を見極める

時間を効率的に使うためには、不要な仕事に見切りをつけて、やるべき仕事に集中して時間を投下していくことが大切です。

ただ、やるべき仕事か、それとも捨てていい仕事かの見極めは容易ではありません。

仕事の取捨について考えると、私はいつも、建設コンサルタント会社に新卒で入社してきた若いコンサルタントのことを思い出します。会社から彼に与えられた仕事は、図面の色塗りでした。図面には、建設予定の道路が描かれています。そのままではプレゼンで説明するときにわかりにくいので、図面にひたすら色を塗っていくのです。

半年ほど経った頃、彼は単調な仕事に耐えかねて、「もっと技術者らしい仕事をやらせてほしい」と訴えてきました。どうやら彼の目には、色塗りの仕事が無理やりやらされているだけの「捨てるべき仕事」として映っていたようです。

私は図面を指さして、矢継ぎ早にいくつか質問をしました。

「この図面の縮尺は?」「この道路のカーブは半径何メートル?」

彼は即答することができず、図面に記入されていた数字を読み上げようとしました。

じつは図面をパッと見ただけで縮尺や道路の半径を把握する技術は、一流の建設コンサルタントになるために欠かせないスキルです。色塗りの仕事は、その技術を学ぶ絶好の機会。質問に即答できなかったのは、図面を一目で把握する技術をまだ身につけていない証拠です。そのことを指摘すると、彼は次の半年間、一生懸命に色を塗っていました。目の前の仕事の意味を改めて考えた結果、仕事に取り組む姿勢も変化したのです。

ここで重要なのは、仕事の重要度が最初から決まっているわけではないという点です。

仕事の重要度は、その人の力量や置かれた状況によって変わります。「この仕事はやめるべき」、「あの仕事はムダ」と一概に決めつけられないところに、仕事の取捨の難しさがあります。

■迷惑仕事も理想の仕事に変えられる

目の前の仕事をやるべきか、捨てるべきか。その判断をするときは、「誰を満足させるためか」を意識する必要があるでしょう。自分のためか、あるいは他人のためかによって、その仕事に費やす時間の価値も変わるからです。

自分を満足させるための仕事(自分満足)は、「やりたいか、やりたくないか」で判断できます。一方、他人を満足させるための仕事(他人満足)は「まわりから必要とされているか、されていないか」という視点で判断できます。この2つの切り口を軸にして整理すると、仕事は9つのカテゴリに分類できます。

自分満足と他人満足の両方が低い仕事は「勘違い」です。自分もやりたくないし、他人も求めていない仕事なので、やるべき理由はありません。ところが会社には、よくわからないけど慣例として昔から続いている仕事も少なくない。そうした仕事は、ばっさり捨ててかまいません。

一方、自分も他人も満足できる仕事は「理想」です。このカテゴリに入るのは、まさしくやるべき仕事。自分も積極的だし、他人からも求められるので、とくに意識しなくても自然に仕事に取りかかっています。

判断が難しいのは、どちらかの満足度が低い仕事でしょう。「ストレス」と「迷惑」のカテゴリに入る仕事が、それです。ストレスを感じる仕事も、人の迷惑になる仕事も、それに費やす時間の価値は高くありません。その意味で、この2つのカテゴリに入る仕事は捨てるべきだという見方をする人もいるでしょう。

しかし、これらのカテゴリに入る仕事も、うまく視点を切り替えることで「理想」の仕事へと導くことが可能です。

たとえば、自分が集中して作業しているときに部下から相談事を持ちかけられると「ストレス」になることがあります。これは視点が他人中心になっていて、相手だけが得をしていると感じるからです。

そこで相談を受けるという仕事を自分視点でとらえ直します。その結果、「いまは部下と話したほうが自分にとっても効率がいい」と気づいたら、時間を奪われた感覚が軽減されて自分満足も高まります。このように視点を他人から自分へと移せば、「ストレス」を感じる仕事も「理想」の仕事へと変わるのです。

『ビジネススキル・イノベーション』第1章 1.4倍で時間を見積もる(プレジデント社刊)より

(横田尚哉)