賃貸住宅の壁にひびが! 家主への対処法を間違えるととんでもないことに?

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「快適で安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザーで宅地建物取引主任者である穂積啓子氏に、賃貸住宅の壁のひび割れを発見した、もしくは地震などの自然災害によりできてしまった場合について、どのように対処すればよいのか事例を挙げて説明してもらいました。

■<事例1> 普通に暮らしていただけで壁にひびが……入居後、3ヵ月ほどして、普通に住んでいるだけなのに、壁にひび割れを発見! すぐに家主に伝えるつもりが、「日ごろから家主の管理の仕方に疑問を持っていた」、「仕事が忙しくて平日の昼間に家主に連絡できない」などの理由で、退去時の2年後に伝えたところ、家主から「壁のひび割れの修理代」を請求されました。

穂積さん:壁のひび割れは、借り主が「普通に住んでいるだけ」では、起こりえない現象ですので、通常は、建物自体に原因があるか、近隣で解体工事やビルの新築工事など建築現場がある、地震や台風など天災があった、老朽化が進んでいるということが考えられます。

家主が請求したということは、「借り主が故意に損傷を与えた」とみなしたことになるわけですが、上記の理由によって通常はありえないことで、家主の請求は認められず、ひび割れの原因を追及されるまでもなく、この家主の請求は無効であり、悪質な請求であるとみなされます。

それ以前に、ひび割れの発生となると家主にとっては大変なことであり、すぐに建物を施工した業者や専門家を呼んで対処法を判断するものです。

このケースの場合、借り主は弁護士に相談し、弁護士から家主への申し出によって請求は引き下げられたのですが、借り主の心理的負担に対する慰謝料請求について、借り主は「壁の損傷を見つけた時点ですぐに家主に届けをするべきだった」という点は反省されており、弁護士費用の請求にとどめられました■<事例2> 賃料の減額は求められるのか?地震発生と同時に、部屋の一室に壁の端から斜めにひび割れができてしまい、精神的にもうその部屋を使用するのが難しい状態なのですが、すぐに家主に掛け合い、賃料の減額を求めたところ、「自然災害でできた損傷は負担できない」と言われました。

穂積さん:「建物の一部の機能、効用が失われた状態」(建物の一部減失)であれば、通常の生活で使用できないため、賃料の減額を請求することができます。

減額の金額は、減失した割合によって算出しますが、それには、借り主と家主のお互いの合意が必要となりますし、どれほどの減失かどうかは、専門家の意見を聞き、ひび割れの状況を確認してもらう必要があります。

管理会社の担当者か家主と話し合うことになりますが、事前に、市区町村にある相談コーナーや消費生活センターに連絡をして「このような場合、一般的にどう対処しているか」という情報を集めておくと話が進めやすいのですが、合意に至らない場合は、「弁護士に依頼する」あるいは「自分自身で民事調停を起こす」、そこでも合意できなければ「訴訟または弁護士会の調停を利用する」などの方法があります。

これらの話し合いが面倒という理由で、借り主は泣き寝入り、移転せざるをえないということが多いのですが、家主が敷金から修理代を差し引いて来たり、修理代を借り主に請求して来た場合は支払う必要はありません。

平成16年に国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にはいろいろな事例が明記されています(これはウェブサイトで誰もが閲覧できますので、参考にしてください)。

壁のひび割れだけではなく、ドアの傷から水回りの劣化など、住まいに異変があった場合はすぐに管理会社か家主に報告をし、さらに日付入りの写真を撮って渡しておくとよいでしょう。

数ヶ月や数年経ってからであったり退去時の報告になると、「借り主が故意に起こした損傷」と受け取られ、敷金返金の際のトラブルに発展することもあります。

管理会社や家主に報告することは、けっこう面倒ですよね……。

「おたくが壊したのでは?」と疑われそうで、億劫になりますが、「建物を借りている以上、報告をして修繕に協力するのも借り主の一つの義務ですよ」と穂積さん。

監修:穂積啓子氏「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。

宅地建物取引主任者。

その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た! 〜部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍 1,155円)に描かれました。

同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。

(藤井空/ユンブル)

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