「面白い」という言葉は、「興味深い」とか「趣がある」など、さまざまな使い方をすることがありますが、今回紹介する映画は、おなかを抱えて笑うほど、本当に純粋に面白い作品です! まさに、“エンターテインメント・ムービー”という表現がピッタリ!

 「運命じゃない人」「アフタースクール」で、観客をあっと驚かせた内田けんじ監督の待望の最新作「鍵泥棒のメソッド」です。


 35歳の売れない役者・桜井武史(堺雅人)は、昔の劇団仲間に借金があり、おんぼろアパートの家賃も払えない状態。桜井は自室で首つり自殺を図ろうとしますが、ひもが切れて失敗。とりあえず、汗を流そうと銭湯へ行くことに。


 桜井が脱衣所で服を脱いでいると、分厚い財布を持った羽振りの良さそうな男(香川照之)が後からやって来ました。その男は、桜井が頭を洗っているときに浴室に入ってきましたが、足元のせっけんに滑って転倒し、気絶してしまいます。

 男が落としたロッカーの鍵を拾った桜井は、とっさに自分の鍵を倒れている男のそばに置き、出来心から男の荷物を盗みます。免許証から男の自宅を見つけ、家の中を探ってみた桜井は、男がコンドウと呼ばれる殺し屋らしいということを知ります。


 一方、病院に運ばれたコンドウは記憶を失っていました。桜井のロッカーにあった荷物を受け取り、桜井のアパートに帰ることにした彼は、自分が無職で身寄りのない、35歳の売れない役者なんだと思い込みます。そして、役者として成功するための地道な努力を始めます。

 その頃、桜井は成り行きから、なんと殺しの依頼を受けざるを得ないというピンチに陥っていました。

 ここまででも、十分面白いと思いませんか!? いかにも弱々しい男と、いかつい男の立場が入れ替わってしまう。でも、私のおすすめキャラクターは、もう1人の主人公と言うべき、雑誌社で働く編集長・水嶋香苗(広末涼子)です。

 編集会議で部員たちに真顔で、「結婚することにしました」と発表する香苗。でも実は、まだ相手はいないのです。仕事や勉強をこなすように、真面目に努力すれば結婚できると思っている彼女が、編集スケジュールが書き込まれた手帳に、出会ってもいない相手との結婚までの予定を淡々と書き込んでいるのが面白すぎます! だけど、彼女の気持ち、なんとなく分かります(笑)。

 そんな香苗は、桜井になり変わったコンドウと偶然出会い、真面目で努力家の彼に好意を持った揚げ句、即座にコンドウにプロポーズしてしまうのです。


 香苗にはどうしても早く結婚したい理由があるのですが、そこも本作の見どころの1つ。

 桜井が受けてしまった殺しの依頼、香苗の逆プロポーズ、そして突然戻るコンドウの記憶。果たして、3人はどうなってしまうのか!?

 予想もつかないようなエンディングが待っている「鍵泥棒のメソッド」。たくさん笑って、映画館を出るときには、きっとすごく良い気分になっているはず。清水イチオシの、とってもおすすめしたい日本映画です!

「内田けんじ監督の話題の作品」DVD紹介

「運命じゃない人」


 内田けんじ監督の劇場デビュー作。2005年、第58回カンヌ国際映画祭にてフランス作家協会賞を含む4冠に輝いたほか、数々の映画賞を受賞した。お人よしのサラリーマン・宮田武(中村靖日)は、恋人あゆみ(板谷由夏)との結婚を前にマンションを購入するが、突然あゆみは去ってしまう。その後、親友で私立探偵の神田(山中聡)に呼び出された宮田。神田は宮田のために真紀(霧島れいか)という女性に声をかけ、真紀は宮田の家に泊まることになるが、そこにあゆみが現れる。

2004年/日本/中村靖日、霧島れいか、山中聡
エイベックス/DVD4935円/発売中
「アフタースクール」


 内田けんじ監督の長編2作目。複雑な構成と仕掛けによる、想像を超えた展開が話題を呼び、大ヒットロングランを記録した。母校で働く中学教師・神野(大泉洋)のもとに、同級生だったという探偵(佐々木蔵之介)が訪ねてくる。探偵は同じく同級生の木村(堺雅人)を捜していた。木村と中学時代からの親友である神野は、産気づいた木村の妻(常盤貴子)を、昨夜からつかまらない木村の代わりに病院へ連れて行ったばかり。神野は探偵と一緒に木村捜しを始めるが……。

2008年/日本/大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人
発売元:クロックワークス、アミューズ/販売元:メディアファクトリー/Blu-ray3990円、DVD4935円/発売中