モエリー専務
押尾友紀子
静岡市内のクラブ勤務を経て、下着ショップを経営。その後、モエリーに入社。

写真拡大

店頭でにこやかに接客することだけが販売ではない。黙って画面と向かい合う販売もある。

「ネットショップはお客様を待つ受け身の立場。でも、ショップページにきたお客様を逃さず、再来店してもらう方法があるんです」

こう語るのは、「モエリー」のドレス通信販売部門を統括する押尾友紀子さん。モエリーは、雑誌「小悪魔ageha」の元看板モデルで元キャバ嬢の桃華絵里(通称・モモエリ)さんが3年前に起業した若い会社。業績はうなぎ上りで、ドレス通販部門は当初の月商50万円から2000万円と40倍に。ドレス通販業界トップの業績を誇る。(※雑誌掲載当時)

押尾さんは起業して間もなく姉妹で入社した。しかし初めから順調だったわけではなかったという。

「私も姉も下着ショップを経営した経験があり、姉は下着の通販経験もありました。だからこそ、初めてモエリーのネットショップのページを見たときは、あまりのヒドさに驚きましたね。でも逆に『これでも売れてるの?』という嬉しい驚きもあったんです」

そこに可能性を感じ、まずはショップページを整えた。ドレスをかわいく見せるだけでなく、着る人が本当に知りたいことを追求。背中のデザインはどうか、体形はカバーできるのかなど、ネットならではの顧客の不安・不満解消に努めた。結果、今の業績がある。

「顔が見えないせいで、クレーム処理の大変さは店頭の比じゃありません。ちょっとしたミスでも、お客様は鬼の首をとったように怒ります。『100回謝れ』なんて、電話口で怒鳴られたことも」

そんなときは、戦略的に落ち込んだフリしてみせるのだという。

「この年になると敬語も使い慣れてきますが、それが機械的に聞こえて、逆に怒らせてしまうこともある。そんなときは、あえてオーバーに取り乱してみせたほうがいいですね。メールでクレームが届いても、メールで返さず電話します。そこで、大げさにおばさんぽい口調で謝るんです。そうすると、お客様も相手が人間だということを思い出し、冷静になってくださる。こちらも電話のほうが状況を把握しやすいんですよ」

実は押尾さんも、モモエリさん同様、水商売の経験がある。現役時代は店のナンバーワンで、静岡では有名な売れっ子クラブ嬢だった。そのため、人はどんなシーンで腹を立て、喜ぶかも心得ている。水商売の経験も、下着ショップで培った販売経験と同じように役立っているという。たとえば、モエリーのドレスは他のショップと比べて決して安くはない。むしろ高めの値段設定だ。それでもここまで売れるのには、やはり理由がある。

「モエリーのお客様の多くは水商売。『ほかの子より少しでもかわいく見せたい』という思いで誕生日などに奮発して注文する。モエリーで買うこと自体をステータスだと感じてくださっているんです」

その気持ちに応えるため、モエリーの商品はすべて花柄のかわいらしい梱包で届ける。明細書も雑に扱わず1枚でもクリアファイルに入れる。小さなことだが、これが顧客の求める特別感を満足させ、また買ってしまう。

誰よりもトークが得意な押尾さんは、今日も黙って画面の向こう側の顧客と向き合っている。

----------

「決めトーク」は
たまにアンテナショップの店頭に立つときは「おねえ言葉・おばさん・方言」を取り混ぜて接客。年上の立場で、自分をネタにして、ベタな褒め殺しをするのだ。方言をまじえれば親近感も倍増。

自己啓発の仕方
「現場が大好きで、何でも自分でやりたい」というのが押尾さんの本音。でも、そろそろ後輩を育てる立場になり、最近では人材育成に関する本を読むようになった。

優先順位のつけ方
お客様に関することを何より優先。それ以外は、期日を聞いて順に片づけていくだけで精一杯。

服装、化粧の仕方
対面販売ではないので動きやすさ重視。男性が多い職場なので、露出しすぎないよう気を付けている。化粧は、目指せマイナス3歳。

記憶に残る失敗談
出荷ミスで、お客様の店のオープン日に目玉商品のドレスの納品が間に合わなかったことがある。悪夢のような記憶。

----------

※すべて雑誌掲載当時

(大高志帆=文 名取和久=撮影)