「日本を支える使命感」新たな保険制度を創造

ビジネスパーソン研究FILE Vol.185

東京海上日動火災保険株式会社 山根健太郎さん

お客さまからのヒアリングを重ね、新たな切り口の商品をつくりあげた営業担当の山根さん


■代理店の販売・経営支援を担当。小集団『パワフル会』を結成し、500日の連続新規成約を達成!

「自分の努力が“世のため人のため”につながるような仕事がしたい。そしてこれをグローバルなフィールドで成し遂げたい」。山根さんはそう考えて東京海上日動を選んだという。2カ月の研修を受けた後、愛知県の三河支店に配属され、支店最大の代理店をはじめとする60の代理店を担当することになった。
「同期は約100名いましたが、“自分が一番活躍する”という闘志を胸に秘め、胸を躍らせて初任地へと向かいましたね。最初に指導担当の先輩から“新人で社内放送番組の好取り組み事例のコーナーで取材されるくらい活躍してみろ”と言われ、同期の中で一番に取材されることを目標にしようと決意しました」

山根さんの仕事は、自分自身が直接お客さまに商品を販売するのではなく、代理店の経営戦略を立案し、これを実現させること。そのためには、代理店の経営者と同じレベルの話ができることが大前提のため、まずは信頼を得る努力を重ねていった。
「一日に7〜8社を訪問し、約一週間で60社すべてを回り切る努力を続けていきました。相手は自分より知識も経験もある目上の方ばかり。担当として誠心誠意、貢献していきたいという思いをストレートに伝えました。当社に何を望んでいるのかということだけでなく、代理店担当者本人がどんな人生を歩みたいと思っているのか、どんな活躍をしたいと思っているのかまで知りたいと話し、そこに近づくためのサポートをしていきたいという想いも伝えていきましたね」

業績だけでなく、その人の人生も支援していきたいという想いが伝わり、山根さんは新規案件の相談やプライベートの悩み相談を受けるなど、次第に信頼を得ていく。そんな中、山根さんは、集団の力でモチベーションを上げ、大きな成果を出すことに挑戦しようと考えた。
「それぞれの代理店と一対一で話をするだけでは、成果の幅も小さいもの。一緒にスキルアップしながらひとつの目標に向かう小集団をつくれば、相乗効果でモチベーションも上がり、最大限の結果が出せるのではと考えたんです。当時、新しいニーズに応えるために導入されたばかりの商品があったので、この分野なら新人の自分でも戦って成果を出せると思いました。そこで、新しい商品に敏感な代理店経営者9名を集め、『パワフル会』という小集団を結成したんです」

“明るく・楽しく・結果を残す集団”を合言葉に、先述の商品で毎日新規契約を成約していくことを目標としたパワフル会。山根さんは、毎週のようにオリジナルの勉強会を開催し、より深い商品知識の習得や、全員のモチベーションアップを目指したという。
「既存のツールだけでは、本当に学びたい情報は得られないと考え、毎回テーマを決めてもらい、それに沿った学習ツールを自らつくり、ロールプレイングなども実施。対応している病気や治療方法、他社商品と比較して何が違うのかまでを含め、この保険商品をお客さまにどう活用していただけるかを徹底的に学んでもらいました。また、それぞれの夢を短冊に書いてもらい、“その夢に向かって、われわれは人の役に立てるこの仕事をしていく!”という、人生の目標や想いも共有していったんです」

パワフル会は、最終的に500日間の連続新規成約を達成! 山根さんは100日間達成の時点で社内の表彰を受け、社内放送の番組にも新人の中で唯一取り上げられることに。入社当初の目標も見事に達成した。
「番組に取り上げられたことよりも、パワフル会というチームとして一つのことを成し遂げた喜びの方が大きかったですね! 忘れられない思い出は、メンバーみんなで表彰のお祝いをした食事会で、ボールペンをプレゼントしてもらったこと。“山根さん、いつもありがとう。感謝のボールペンだよ”という言葉をもらって、本当にうれしかった! 若くして目標通りの活躍ができたのは、周囲の皆さんが支えてくださったから。今でもスーツの内ポケットに常に差している『感謝のボールペン』は、いつも私を支えてくれ、“いつまでも成長を続けていこう”という想いの原点となっています」


■専門職業人団体の担当として全国展開の新制度を創設。現在はインフラ産業を担当し世界を視野に

山根さんは入社4年目で広域法人部に異動し、社会保険労務士、行政書士、測量士等の専門職業人や大学生協、中小企業の共済団体などの全国団体を担当することに。
「社会保険労務士の賠償責任保険を取り扱う団体などの全国組織を担当し、それぞれの業界やマーケット、さらにはそれを取り巻く環境の変化も含めたうえで、新たな仕組みの構築や提案をしていくことが私の仕事でした。限定されたエリアでの活動とは異なり、フィールドは日本全国にまで広がった。自分の努力が、保険本来の役割である“社会に安心、安全を提供していくこと”につながり、世の中により良い影響を与えていく大きなやりがいを感じました」

その業界で起こりうる出来事を想定し、全国にヒアリングしてリスクをまとめ、カバーできるような新しい制度や商品を考える。それを社内の商品部と連携し、時代にフィットした仕組みを提供していくことにつなげていくのだ。
「一から手がけたものとして思い出深いのは、鍼灸(しんきゅう)業界に向けた賠償責任保険制度を新設した時のことですね。鍼灸の業界団体を対象にしたマーケットは他社が押さえていたので、社内的には“参入しない”という判断がされていました。が、徹底的にマーケットを調査、勉強するうち、他社が押さえていた鍼灸の業界団体以外にも、専門学校や学会、治療院など、鍼灸にかかわる保険を必要とする人々がたくさんいることがわかったんです」

山根さんは全国の専門学校に直接訪問のうえ、ヒアリングした後、鍼灸専門学校を窓口としたビジネスモデルを考案。社内関係者を説得し、新たな切り口の商品を生み出すことができたという。
「その業界に精通したある代理店の方から“業界をより良くしたい”という熱い想いを聞き、一緒に制度を実現させようと決意しました。夜を徹して企画書をつくった後、再び全国の専門学校を回って制度導入の提案を繰り返し、最終的に制度の立ち上げにたどり着いたのはマーケット調査から約1年後。初年度は全国14校で制度が導入されました。専門学校を回る直前、一緒に頑張ってくださった代理店の方が“全国の学校を回るには、ビシッとしたワイシャツぐらい着ていかなきゃ、学校の校長に頼りないと思われるぞ”と言って、百貨店のワイシャツ仕立券と自分がつけていたネクタイピンをくださったんです。その心遣いが本当にうれしくて、忘れられない思い出になりました」

現在は、鍼灸業界で2000名以上の加入者に安心を提供しているが、一緒にこの制度をつくりあげた代理店の方は、残念なことに1年ほど前にお亡くなりになられたのだという。
「あの人の信念とつくり上げた制度は、今も世の中に残っている。私たちの仕事とは、自らの信念と情熱のもとに使命感を持ち、世の中に必要な制度、喜ばれる制度を形にしていくことなのかもしれないと思っています」

2010年7月、山根さんは現部署である本店営業第三部公法人室に配属される。鉄道事業、地下鉄事業を担当し、時代にフィットした制度や仕組みの提案・構築を手がける中、東日本大震災を経験した。
「私の担当する企業も、震災で大きなダメージを受けました。交通機関というインフラ産業を担当するセクションでは、自分のクライアントへの影響が、そのまま国民や日本全体への影響につながってしまいます。私たちは、その先にある地域住民の生活まで常に考え、起こりうるリスクをカバーする仕組みを提供していかなくてはならないのだと実感した出来事でした」

また、地震などの大規模災害については、海外の再保険(※1)会社とも契約してカバーしていくため、保険を含めて、その企業を存続させるための仕組みを世界規模で考えていかねばならないという。
「保有リスクが世界に分散され、クライアントにとって必要なキャパシティーを安定的に提供する方法を考えなければなりません。そのうえ、競争相手は、保険会社だけではありません。巨大リスクへの備えは、証券化や銀行などでも対応できるため、世界の金融機関もまた、私たちの競合なのです。日常的にグローバルマインドを持ち、その日常の活動には“未来を展望する覚悟や信念”が込められていなくてはならないと感じ、グローバルなビジネスモデルに対応できるだけの力を身につけるべく、日々努力を続けています」

(※1)保険会社が加入する保険。保険会社では、保険責任のリスクを分散するために、保険責任の一部を再保険会社へ移転する場合がある。

2012年にシンガポールで開催された研修に参加した山根さん。現地で活躍する先輩社員や他企業の駐在員を目の当たりし、世界で戦うことの躍動感を肌で感じた。
「研修中に『The world is flat』というアメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンの言葉を聞き、感銘を受けました。ITなどの発展により、情報がフラット化し、競争が激化する今、世界で勝つことは容易ではないと感じます。社員一人ひとりがしっかりとした考えを持ち、創造と発信を続け、組織として強くなっていく必要があると実感しましたが、同時に、まだまだ当社は強くなれるという未来への希望も感じることができました。大げさかもしれないけれど、人生をかけて成し遂げたい私の夢が、この会社にはあると思っています。今後は、現在担当している日本有数の企業に貢献しながら、世界中の人々の安心・安全を実現していけるようなグローバルに活躍できる人材を目指していきます」