血液検査だけで、ダウン症などの胎児の染色体異常がほぼ確実にわかる!新しい出生前診断が9月以降、日本でも導入されることになった。導入の方針を打ち出した国立成育医療研究センター(東京)の広報担当者はこう話す。

「従来の羊水検査による出生前診断は、実はかなりリスクが高い検査で、実際に生まれてから初めてわが子がダウン症だったと判明することも多かったのです。ところが新しい出生前診断は、妊娠10週程度の早い時期に血液検査だけで精度99%の判別ができる。これは、医療の大きな進歩なのです」

多くの医療者が、「出生前に胎児の診断ができれば、妊婦と事前にカウンセリングができるため医療の幅が広がる」と期待を寄せる。だがその一方で、新たな懸念も広がっている。新しい出生前診断は、妊婦の血液を採るだけという簡単さで、しかも安全に検査ができる。そのため、異常が発見されたときの人工妊娠中絶が大幅に増えるのではないかというのだ。

昨年秋からこの検査を先行実施していたアメリカの検査会社『シーケノム』の関係者は、現地メディアにこう漏らしていたという。「この血液検査による出生前検査を導入した全米の病院では、胎児がダウン症と知った約98%の妊婦が中絶に踏み切っているそうです。最近の調査によってわかりました」

現在、熊本市議会議員を務める元マラソンランナー・松野明美さん(44)も、ダウン症の二男をもつ。松野さんは‘08年、二男のダウン症を公表した。彼女は新しい出生前検査に対しこう警鐘を鳴らす。

「ダウン症は染色体の数が1本多いというだけです。それを胎児のときに判別し、生まれてこないようにしようなんて差別としか思えません。高額な医療費を請求したいという医者がお金もうけをしたいだけなのではないでしょうか」

いくら検査が簡便になったとしても、最後の決断は、妊婦に託される。新検査は、ママたちの新たな迷いも生みそうだ。