「LCC」とは何なのか - 海外の先行事例から学ぶ

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この秋、国内で相次いでLCC(Low Cost Career=格安航空)専用ターミナルが開設される。

10月18日には那覇空港で貨物ターミナルの一部を改修したLCCターミナルが供用開始され、10月28日には関西国際空港がLCCターミナルを新設オープンする。

搭乗ブリッジがなく徒歩で飛行機に乗り込むことや、既存ターミナルとの行き来の手間(シャトルバスで移動)をぼやく声も散見されるが、格安運賃を支えるためには「設備は極力簡素化する」「空港の端の不便な場所に立地する」などの工夫が必要なので、LCCターミナルとはそういうものなのだと思ってほしい。

新幹線に対する夜行バスのようなものである。

アジアでの先行モデルであるマレーシアのクアラルンプール国際空港のLCCターミナルは、フル・サービス航空会社用のターミナルから有料シャトルバスで20分ほど走った空港端にある倉庫のような建物で、飛行機にも徒歩で乗り込む。

ハブ空港として有名なシンガポールのチャンギ国際空港のLCCターミナルも空港端に立地しており、他のターミナルとはシャトルバスで行き来し、飛行機には徒歩で乗り込む。

チャンギ国際空港は今年9月にLCCターミナルを閉鎖し、フル・サービス航空会社用のターミナルとしてリニューアルするが、この「ターミナル4」も搭乗ブリッジは設けず、LCCターミナル同様の低コスト利用を可能にする方針だ。

パリのシャルル・ド・ゴール国際空港のターミナル3は、チャーター便やLCCの発着ターミナルとなっている。

フル・サービス航空会社用の2つのターミナルを直結する無人レールを途中下車し、さびれた中間駅から吹きさらしの道路を通り、薄暗い高速道路高架下のトンネルを抜けた先に立地しており、飛行機との行き来はマイクロバスで行われている。

格納庫に使われる予定だった建物を転用したので、外観も内装も実に殺風景。

近未来的な建築デザインが特徴のド・ゴール空港内では異彩を放っている。

もっとも欧米では都市周辺に複数の空港が立地しており、大手航空会社が中心に発着する大型国際空港の他に、諸コストの安い小型空港(2次空港と呼ばれる)が豊富に存在するので、LCCターミナルの必要性は低い。

LCC自体、2次空港の利用を前提に誕生したビジネスモデルである。

ロンドンには国際空港が10空港あり、その1つ、ルートン空港も2次空港の一例。

ビジネスジェット(社用ジェット)専用国際ターミナル群に囲まれて定期便ターミナルが立地しているが、大手LCCのeasyJetの本拠地であり、LCCが数多く就航しているため、ビジネスジェットとLCCの専用空港のような趣を見せている。

どちらのターミナルも搭乗ブリッジはなく、ビジネスジェットであれば徒歩または専用の送迎車で、定期便であれば徒歩で飛行機に乗り込む。

コスト(ビジネスジェットは時間の浪費、LCCはお金の消費)を徹底的に嫌う2つの交通輸送システムが占有している、ある意味で象徴的な空港といえる。

日本の航空は、JAL・ANAのような大手航空会社の定期便が大半を占めるという非常に狭い世界に限定されてきたためか、諸外国に比べて市民との距離感が大きいといえよう。

「飛行機での空の旅」が”晴れ着”のようなイメージで捉えられてきた結果の1つが、需要規模に比べて不釣合いに立派な造りの赤字空港の数々である。

「いかに飛行機を使いこなすか」よりも「いかに立派な玄関口を造るか」という見栄が先行し、過剰で不必要な巨額の設備投資が繰り返されてきた。

しかし飛行機を日常の足として使っている国々では、空港には「自分たちが、いかに手軽に飛行機を使えるか」という機能性を求めている。

欧米ではLCCターミナルの必要性が低いというのも、空港の大半は最初から簡素な造りになっているからだ。

21世紀はこれまで以上に活発に飛行機を使いこなし、世界各地と交流を深めることが求められる。

今回のLCCブームが、市民と飛行機の距離感を見つめなおす機会になることを期待したい。