白取春彦(しらとり・はるひこ)  青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。  主な著書に『超訳 ニーチェの言葉』『超訳 ニーチェの言葉2』『頭がよくなる思考術』『生きるための哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『仏教「超」入門』(PHP文庫)ほか多数がある。

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多くの書店でベストセラーのランキング入りしている『媚びない人生』のジョン・キム氏。韓国に生まれて日本に国費留学、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等2大陸5カ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者が著したのは、ゼミの最終講義で卒業生に送ってきた言葉をベースにした人生論だった。今回は、『超訳 ニーチェの言葉』が110万部を突破、待望の第2弾が出たばかりの白取春彦氏との対談をお届けします。今、2人が読者に伝えたいメッセージとは。(取材・構成/上阪徹 撮影/小原孝博)

安定を求めるのは、一種の堕落だと気づけ

キム 『超訳 ニーチェの言葉』の2冊を拝読しました。もっと早く読んでおけばよかったと思いました(笑)。この本は、読み手によって、得られるものがまったく違ってくるかもしれないですね。また、同じ読み手でも、自分の成長によって解釈が変わってくる。本には余白がたくさんありますが、これは解釈の余白なのではないか、と感じました。

白取 そうですね。上っ面だけ速いスピードで読んでも、あまりわからないかもしれないですね。読者の体験がどこまであるかによっても違う。深く読めば読めるし、浅く読もうと思えば読める。人によって、受け取り方はまったく違うと思います。

キム 僕が『媚びない人生』で書いていることと、ほぼ同じことも書かれています(笑)。日々、生を自分で創造していくのだ、安定や安全を求めるのは危険だ、という内容は、特に共感します。

白取 人生というのは、いつも新しくならなくちゃいけないんですね。今のままがいい、昔に戻りたい、というわけにはいかないんです。経営やビジネスもそう。いつも時代に合わせて、新しくしていかないといけない。『媚びない人生』は、ニーチェよりもストレートに書かれていますけどね。

『媚びない人生』を拝読して、キムさんは、よくこれだけ強い調子で書いたな、と思いました。こんなに、あからさまに書いていいの、と(笑)。これはキムさんのスタイルもあるでしょうし、普段、大学生と付き合われていますから、若い人に何が必要か、よくわかっておられるんでしょう。ただ、ご自分の言葉で書かれてるのが、キムさんですね。僕は、わざわざ迂回して、ニーチェの言葉で書いている。

キム 大事にしなければいけないのは、人間の生と死に対する眺め方だと思うんです。人間には、いつ死ぬかわからないという、避けられない運命がある。生というのは、前にしか進んで行くことができないし、過去というものは変えることはできない。今、この瞬間に起きていることと、どう向き合うか、ということです。

白取 本当は変化しているんですよね、いろいろなものが。僕らはいつも、その変化をもっともっと感受性を豊かにして感じ取らなきゃいけないんです。なのに、安定や安全を求めようとする。それは、一種の堕落だと気づく必要がある。同じ道を通って会社に通い、似たようなご飯を食べて、同じ仲間と同じ酒を飲んで…。そんな暮らしをしていると、必ず別の問題が起きるんですよ。安定しているように見えて、すでに内部から崩れているんですから。

キム いつか死ぬのだ、という意識の薄さが、生に対する緊張感を削いでいる気がします。毎日毎日、同じルーチンを繰り返して永遠に生きていくことができれば、それはひとつの生き方かもしれませんが、少なくともいつかは死ぬという変化は避けられない。

 枠の中で生きたり、群れの中に入って生きれば、短期的には居心地はいいけれど、中長期的には、自分の人生は蝕まれていきますよね。実は多くの人が、なんとなくそのことには気づいていると思うんです。ところが、そこに真剣に向き合うことができない。

 特に『超訳 ニーチェの言葉II』で印象的だったのは、名誉や地位、お金など、そういうものから離れたときにこそ、純度の高い自分が見つけられるということでした。自分の人生を自分で切り開いていくには、自分の中で覚悟や決意がないといけない。人間はラクして人生の創造はできないですよね。自分で切り開くんだと決意して初めて、自分らしい人生は作り上げられていくものだと思うんです。

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