インフラ整備の投資は完了し今後は“人”で収益基盤を強化

人事部長インタビュー Vol.31

佐川急便株式会社 井上浩一さん

通販業界の伸びとともに成長してきた同社の今後の戦略とは?


■モノの動きを入口から出口まで幅広くカバーし、新しい荷物を創出

通販業界が伸びていく中で、宅配事業もこれまで共に成長してきましたが、少子高齢化や人口の減少などを考えると、今後の宅配便の全体物量は減少していくことが予想されます。このような状況下で生き残っていくためには、新しい荷物の創出が必要となります。特に国内の宅配事業においては、今まで目が届いていなかったジャンル――例えば、介護業界で新たなサービスを提供するなどして、新しい荷物をつくり出していかなければなりません。

ひと口に“物流”といっても、荷物が動く過程は入口から出口まで実に幅広く、これまではその一部分を当社が“宅配便”として扱ってきたに過ぎません。実際には、商品という一つのモノの動きは、その商品をつくる材料の運送から始まります。材料の多くはアジアを中心に生まれていますが、海外からの材料の運送から当社が引き受け、国内で製造された商品の運送も担当する。さらにいえば、その商品が逆戻りしてくるケースもあります。リコールなどがそうですが、商品が返品されれば、そこにまたモノの動きが発生するわけです。入口から出口までのこうした幅広い部分を当社がカバーし、荷物を創出していくことが重要なのです。

同時に、グループ会社との相乗効果を狙った戦略も考えています。海外と日本国内の物流をワンセットにして荷物として受託するなどがその一例で、現在は、海外事業を行っている佐川グローバルロジスティクスと弊社間のインフラ整備に取り組んでいます。

2012年度は、2010年3月にスタートした中期経営計画「Second Stage Plan」の最終年度であり、拠点展開については、Second Stageでいったん終了する予定です。この3年間、拠点などのインフラ整備にかなりの投資を行ってきました。サービスセンターや営業店、東京本部の隣りに建設中の新社屋をはじめ、横浜地区や大阪地区などの中継ハブ的な大型施設も含めた拠点整備は、2013年3月でひと通り完了する見込みです。

もちろん、この終了は今後いっさい拠点展開を行わないという意味ではなく、これからも必要なところへの必要な投資は適宜行っていきます。居住区域は徐々に変化していきますから、サービスセンターの展開がもっと必要となるエリアも出てくるでしょうし、閉鎖すべきところも出てくるはず。ある場所に営業所を開設したとしても、ずっとその場所にある必要はないのです。人口の分布や社会の状況変化に即応し、お客さまのニーズに応えていくことが、生き残っていく道だと考えています。

Second Stageでは、経営戦略により注力するため、経営企画部という新たな部署も立ち上げました。この部署には金融業界などからも人材を集め、いろいろな業種・業態の視点を持って経営を考えていこうと動いています。2011年度の業績は減収減益となりましたが、今後は、投資回収の収益基盤を構築していくためにも、採用に一層力を入れていきます。


■新卒採用を強化し、女性従業員比率を拡大。環境整備にも注力

私がドライバーとして中途入社して約25年間がたちますが、一番の大きな変化は“人”だといえるでしょう。私が入社した当時は、20代の独身男性がほとんど。しかも99パーセントが中途採用でした。ところが、現在は3割が新卒採用、7割が中途採用です。新卒者の特徴は、会社への忠誠心が高く、定着率が良いこと。社会に出て真っ白の状態で研修に参加するだけに、佐川イズムの吸収力も大きいのでしょう。その後、営業店で数年間ドライバー職やサービスセンター職といった営業職を経験すると、見違えるほど成長しています。ですから、今後もさらに新卒採用に注力していきますし、将来的には春と秋の新卒採用を実施したいと考えています。

もう1つの大きな変化は、女性従業員比率の拡大です。過去10年間を比較しても、8パーセント程度だった女性比率が、今や20パーセントに近づきつつあります。営業職に女性が増えることで、サービスにきめ細やかな配慮や清潔さが加味されますし、営業職が女性であることは、荷受けする女性のお客さまの警戒心を緩和する一助になります。当社は、2016年3月までに女性従業員を1万人雇用し、女性比率を30パーセントにするべく(※)、会社の制度やハード面の改革に取り組んでいる最中です。
※女性労働者比率の是正のための、男女雇用機会均等法に基づくポジティブアクション。

女性従業員が増えても、受け入れる側の意識や体制が整っていなければ、安心して長く勤めることはできません。そこで、まず実施したのが、マネージメントに携わる役職者に対する教育でした。当社では、出産や育児の際の対応や利用可能な制度などを解説した「ワーキングウーマンガイド」という冊子を配布していますが、最初に作成したのは、実は女性向けではなく管理職用だったのです。

近年は、第一線で活躍できるドライバー職やサービスセンター職といった営業職を希望する女性応募者が増えています。私たちは、目標とする女性従業員比率30パーセントのうち、10パーセントを営業職にしたいと考えているので、女性の復職支援の整備にも力を入れています。運行管理規程により、ドライバー職の女性は妊娠が判明した時点でドライバー職をはずれますが、復職後は元の職種に戻れますし、希望次第で事務職に異動することも可能です。すでに短時間勤務期間を子どもが6歳になるまでに延長するなど、法定以上の制度も導入しました。こうした制度は整いつつありますが、個別の営業所での産休や育休中のドライバー補充をどうするかなど、現実的な体制づくりが目下の課題となっています。

すでに女性店長も1名誕生しました。こうした環境が広まっていくことは、男性の意識変化にとても効果的です。そこで、管理職に就く女性がさらに増えていくよう、女性管理職や育児経験者を集めた座談会や意見交換会を実施し、その様子を社内報で広報するなどして、女性のキャリア支援にも取り組んでいます。

当社で活躍しているのは、学生時代に接客が伴うアルバイトに携わるなど、多くの人とかかわってきた人、人と深く付き合ってきた人が多いですね。宅配業は、お客さまにかわいがっていただくことで成果が上がっていく仕事ですから、コミュニケーション力が非常に重要です。そして、ドライバーという仕事柄、力仕事が多いので、体力的に厳しい面もあります。体力は精神力と言い換えてもいいですが、土壇場で踏ん張れる強さを持っている人は、やはり頼もしいですね。