ロンドンもニューヨークも超一流の役者さんであるのは間違いない、歌も演技も素晴らしい、しかし何かが違う−。

はかなげなキムを演じるには海外の役者さんの体格はいささか立派過ぎました。

海外の大御所の演技に威厳は感じてもその重厚感ゆえに、客引きのエンジニアの浮薄さと上昇志向への信念との微妙なバランスが滲み出てこないのです。

人種差別だとお叱りを受けそうですが、そもそもアジア人を欧米の方が演じるには無理があるのではなかろうか―。

貧しさの中で生まれるしたたかさや、アジア人が持つ繊細さやしなやかさの中にある強さのようなものがどうも物足りない。

私の中での国際比較の結論は、キムは本田さん、エンジニアは市村さんということになりました。

相変わらず”危機本”と呼ばれる類が書籍売り場を賑わし、メディアも日本経済に対して悲観論一色のようです。

中には「日本が沈没する」あるいは「日本経済が破綻する」などと言って、資産防衛のために日本を捨てて海外移住を吹聴する声もあります。

国を捨てる、捨てざるを得ない状況であるということはいったいどういうことなのか。

「ミス・サイゴン」では命懸けであることを訴えていますが、本来はそうした覚悟が必要となることです。

資産家の方も日本に経済基盤があったからこそ、今の資産があるはず。

仮に日本の先行きに心配があるのなら、自分の資産を守るために国を捨てる発想をするよりも、よりよい方向に進むにはどうすべきか、それ考えるのが先と思われます。

その方が海外移住などより、よっぽど効率的でもあるはずです。

治安も良く、国民も温和、豊かな自然がありつつ、経済力でも技術力でも世界有数を誇る、例をあげればきりがありませんが、海外から見れば憧れの国日本を捨てて、いったいどこにいくつもりなのか。

その一方で、矛盾すると思われるかもしれませんが、若い方はどんどん海外に行って見聞を広めてもらいたいと思います。

いつでも帰れる素晴らしい母国があるのですから、さもしい理由ではなく大いなる活躍の場を求めて出かけていって欲しいものです。

それが将来にもつながる日本の国際交流の礎となるはずです。

ところで、新しいキムと20年経ったエンジニアの演技を観に行こうと予約状況を調べてみて唖然。

1席1万円近くもするチケットが、場所によっては更に値段の張るS席から順に満席となっているのですから、やはり日本はお金持ちと言えるのではないでしょうか。