グロテスクな部分を磨くことによって武器にする!


 本に学び、助けられた思春期を過ごしたというAimerさん。オススメの本や、音楽活動と本の関わりについて聞いてみました。
 
 最近読んだ中で印象的だった本は、三浦しをんさんの『きみはポラリス』ですね。様々な事が障壁となって叶わない恋や、見返りがなくても相手を想う姿を描いた短編集です。もしも自分が同じ境遇だとしたらと、深く考えてさせられる作品ですね。見返りがないのに相手を想うその姿に心惹かれました。(Aimerさん)

 本はどのように選びますか?

 タイトルが重要ですね。江國香織さんの『落下する夕方』や、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』など、タイトルから連想される情景が気になって手に取ることが多いです。タイトルにこだわって本や映画を選ぶので、自分の楽曲もタイトルでひっかかって手に取ってもらえるような曲名をつけられたらなと思います。

 本は音楽活動に影響を与えましたか?

 吉本ばななさんの、情景の描写に人の心情を投影するところが好きで、言葉の一つひとつにとても共感します。私も歌詞を書くときに、そうできたらいいなと思っているので、とても憧れますね。

 最後にAimerさんが読んでほしいオススメの本を教えてください。

 桐野夏生さんの『グロテスク』をお勧めします。
一口に言ってしまえば、女性たちの戦い、自分との戦いを描いている一冊です。根底には、夏目漱石の「こゝろ」と同じように寂しさとか孤独感が渦巻いているんですけど、それぞれが「グロテスク」な部分を磨いて生きる武器にすることで、それをかき消して生き延びてやる! っていう、生に対する執着心みたいなものがすごく伝わってきます。


 主人公の「私」は、妹の「百合子」にコンプレックスを抱いているんです。でも語り手である「私」は、自分もそこそこの容姿があるけど、百合子の方が上だから注目されるだけだ、という風に語っているのに、他の人に視点が変わると「百合子」は「綺麗」だけど、「私」は「不細工」とある。そもそも「私」という語り手が嘘をついているのか真実なのか、どれを信用していいのか分からないままに読み進めていくところがおもしろいです。


 「グロテスク」っていう、一般的に「いやらしい」とか「汚い」と思われる部分を、むしろ磨くことで「生きる」ということを肯定するパワーを感じました。だから、自分の中にグロテスクな部分がもしあったとしてもダメな部分として片づけてしまっていいのか、というところを考えてもらえる作品だと思います。

 コンプレックスや隠したいと思っているマイナス面をあえて磨くことによって、プラスの力に昇華する方法を学べそうな一冊ですね。

《プロフィール》
Aimer(エメ)
幼いころから音楽に身近な環境で育ち、小学校でピアノを、中学からはギターでの音楽活動を開始。時に大人びた"乾き"を、時に子供のような"甘さ"を見せる"DRY & SWEET"なその歌声が秘かに話題を呼び、様々な企画へのゲストボーカル参加を実現。映画監督やアーティストなど、様々なクリエーターからその歌声が絶賛された。2011年、DefSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。




『2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する』
 著者:英『エコノミスト』編集部,船橋 洋一
 出版社:文藝春秋
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