わが国の参加が正式に決まった第3回WBC(World Baseball Classic)で、代表チームの監督選考が急務になっている。
 6日付のサンケイスポーツ紙によると、加藤良三コミッショナーは、代表監督選考の大役を、第1回大会で日本を世界一に導いた王貞治コミッショナー特別顧問に委ねたもようだ。

 代表監督の候補には6日現在、落合博満中日ドラゴンズ監督、秋山幸二福岡ソフトバンクホークス監督、原辰徳読売ジャイアンツ監督、2008年の北京五輪でヘッドコーチを務めた山本浩二広島東洋カープ監督らの名が挙がっている。
 いずれも実績豊富な人材だが、これだけ候補が挙がるというのは、決め手に欠くということだろう。

 誤解を恐れずに言えば、今のわが国には、絶対的なカリスマ性を持った監督がいない及第点の監督ばかりだ。

 プロ野球の監督の歴代勝利ランキングを紐解くと、1位は鶴岡一人で通算1,773勝。以下、1,687勝三原脩1,657勝藤本定義1,586勝水原茂1,565勝野村克也1,384勝西本幸雄1,322勝上田利治1,315勝の王、1,237勝別当薫1,066勝川上哲治と続く。
 いずれもカリスマ性に満ちた監督ばかりだが、みな故人か、すでにユニフォームを脱いでいる。

 現役の監督では星野仙一東北楽天ゴールデンイーグルス監督が先月31日、監督として通算1,035勝を記録。1,034勝長嶋茂雄を抜いたが、それでもまだ11位。ベスト10入りを果たしていない。

 なぜ先人たちはこうも勝ち星を伸ばせたのか。それは、球団から長期政権を任されていたからだ。
 歴代1位の鶴岡は南海ホークス一筋23年。2位の三原は27年間に渡り、ジャイアンツ、西鉄ライオンズ大洋ホエールズ(現在の横浜DeNAベイスターズ)、近鉄バファローズヤクルトアトムズ(東京ヤクルトスワローズ)で指揮を執り、3位の藤本にいたっては監督生活は29年間にも及ぶ。

 もちろん、彼らの監督生活が常に順風満帆だったわけではない。最多勝の鶴岡でも、勝率は.609。10試合に4試合は負けている。三原もライオンズの黄金時代を築いたのは、就任4年目のシーズンだ。

 それでも球団は監督を信じ続けた。その結果、ウィスキーやワインが熟成されるように、名監督が誕生したのだ。

 現在の球界を見回すと、就任から5シーズン以上が経過しているのは、2006年に就任した原ジャイアンツ監督だけ。ここ数年間、少しでもチームが低迷すれば、監督はすぐに首を切られている。
 身内の恥をさらすようだが、ライオンズでも今季前半、チームが最下位に沈むと、外野スタンドでは渡辺久信監督の後任が話題の中心だった。

 これでは、先人のような、カリスマ性を帯びた名監督が生まれるはずがない。代表監督の選考に悩むのも当然だ。
 わが国では国際大会のたびに監督選考が難航しているが、これは、それまでに監督を軽視していたツケと言えるだろう。