自分の手がけた商品をお客さまが手に取る感動

ビジネスパーソン研究FILE Vol.184

株式会社オンワード樫山 斉藤慶さん

商品企画担当として毎月100型の雑貨を手がける斉藤さん


■入社直後から商品企画の担当に。2年目にはスーツ商品のネームタグ一新を任される

もともと洋服が大好きで、学生時代もアパレルのショップスタッフのアルバイトをしていた斉藤さん。「自分の考えを反映させた洋服を、世の中に出して受け入れられたら」と考え、商品企画の仕事を目指したという。研修の後、配属されたのは“エニィファム”ブランドの商品課で、入社直後からMD(マーチャンダイザー ※1)として商品企画に携わることになる。
(※1)商品開発・商品構成・価格計画などの商品計画業務に携わり、売上予算や利益予算に責任を持つ担当者。

「営業で現場経験を積んでからだと思っていたので、『まさか!』とうれしい驚きでいっぱいでした。“エニィファム”は、30歳を中心としたママとキッズに向けたブランドでしたが、学生時代のアルバイトでは女性向けの商品も扱っていたので、抵抗はまったくなかったです」

配属当初は、商品の品番や価格をひたすらシステムに入力し、登録していく作業や店舗への商品配分作業、資料作成、商品の棚卸しなどを担当。アパレルの華やかなイメージとはまた違い、地道な作業をひたすらこなす日々だったが、「やりたいことをやるために必要な知識を吸収しているんだ」と自分に言い聞かせたという。
「とにかく、次から次へとこなさなくてはならない雑務が発生するので、作業効率を上げるためにPCソフトの知識を学んだり、仕事の優先順位をつけるなどでペースをつかんでいきました。また、毎週定例で開く売り上げ報告会議にも参加しましたが、最初のうちは出席するだけで緊張で(笑)。MDやデザイナー、ディストリビューター(※2)、パタンナー(※3)が集合し、どの商品が何百枚、何千枚売れたか、それを受けて今後どういった展開をしていくかなどを話し合う様子を見て、『アルバイトしていたころは、店頭でどの商品を何点売ったかまで気にしていなかった。モノをつくるだけでなく、実際に売れた数字で結果を出していく。これが仕事なんだ』と実感しましたね」
(※2)商品の店舗への配分や在庫管理を行う担当者。
(※3)デザイナーの描いたデザイン画を基に型紙を作成する担当者。

また、サンプルを見ながら商品化について話し合う検討会では、専門用語がまったくわからない状態で、生地の名前や糸の種類なども覚えていかねばならないと痛感。斉藤さんは専門書で学ぶだけでなく、検討会のたびに生地に直接触って生地の質感など自分流に印象を積み重ねて吸収していった。入社1年目の後半になると、自分の意見もどんどん言えるようになった斉藤さん。その陰には、休日を利用して自ら“エニィファム”のショップを回り、販売スタッフと話をして現場の生の声を収集する努力があったという。
「現場でお客さまと接しているスタッフの声には、根拠が必ずある。例えば、『これは売れていないけど、お客さまが試着した時に何か意見はありましたか?』と聞くと、『ママにとっては胸元の開きが大きくて嫌がられる』など、直接の反応を教えてもらえるんですよ。自分の感覚ではわからないことも多いと気づき、現場スタッフの声を生かした提案をするように。それからは意見に説得力が出て、取り入れてもらえることも増えました」

入社2年目には、自らの提案で、春物スーツ商品に付けるブランドのネームタグ(衣服の裏地につけられたブランド名をプリントした布地)の一新を任されることに。
「入卒園式に向けたスーツのラインナップです。カジュアルな商品とは一線を画すキレイ目なラインでしたが、それまではほかの商品と同じく、白地に茶色の刺繍をほどこしたカジュアルな印象のネームタグを使っていたんです。そこで、『もっと高級感を出せたら』と言ってみたら『じゃあ、新しいものに変えてみて』と。今までは先輩の補佐をしていたので、自分に任された初仕事だと張り切りました! 自社だけでなく、他社のショップも回り、いろいろなブランドのスーツに付いているネームタグをチェックし続け、休日にも何軒もの店を回って。2週間もの時間をかけて検討を重ねた後、『黒地にシルバーのステッチを入れたら、高級なイメージに変わるはずだ!』と考えたんです。また、より高級な質感を出すために、上着をつるすために襟裏につけるチェーン状の“衿吊(えりつり)”をあしらうことに決めました」

イメージを固めたところで、サンプルづくりを開始。デザイナーと打ち合わせながら生地や糸、チェーンに使う素材を決め、サンプルを作成するメーカーに向けて指示書を作成。数回の試作とチーフのチェックを経て、ようやく完成できたという。
「モノは小さいけれど、ネームタグはブランドの顔とも言える部分。慎重に素材やデザインを検討した結果、納得のいくものがつくれました。完成後、ショップに並んでいる様子を見た時は、本当にうれしかったですね! ショップの人に『これ、私がつくったんです!』と言いたくなる気持ちをぐっとこらえました(笑)。自分で意志を持って提案すれば、いろいろなことにチャレンジできるんだと感じ、この会社ならではのMDの仕事の幅広さと面白さを実感。今でも春物スーツにはこのネームタグが使われていますが、私にとって忘れられない、大切な作品のように感じますね」


■3年目でニットとカットソーの担当に。初めて手がけた商品がヒット! 現在は雑貨担当として活躍

斉藤さんが大きく成長したのは入社3年目のこと。部内で商品カテゴリーごとに担当者を分ける新体制をつくることになり、斉藤さんはニットとカットソーの担当を任されたのだ。
「それまでは先輩の補佐のみだったので『ついにこの時が来た! やるぞ!!』と燃えましたね。とはいえ、これまでの仕事と並行して商品企画をしなくてはならないし、取引先との打ち合わせも増えるため、どう時間を使っていくかが大事だと感じました。アイデアを出すためには、今まで以上に敏感に、常にアンテナを張っていなくてはならない。そこで、常日ごろ、街を歩く時も、電車の中でも、プライベートで買い物する時にも、とにかくずっと洋服を観察することにして、新たなヒントを得ようと考えました。また、サンプルをつくるメーカーや素材を扱う商社など、取引先との情報交換も密に行うよう心がけましたね。世の中でどんな商品が売れているのか、新しい素材のネタはあるか、他社の商品の売れ筋はどんなものかなど、打ち合わせや商談のたびに情報を収集していきました」

初めて1人で商品を手がけたのは、秋物展開の立ち上げの時期。商品企画の仕事では、ブランド全体のシーズンのテーマに合わせ、カテゴリーのテーマを決め、どんなアイテムを何型出すかという商品構成と、どういった時期にどれだけの数をつくるかという投入計画まで考える。そこからテーマや方針をデザイナーに伝え、戻ってきたデザイン絵型を見ながら話し合い、各商品の方向性を固めた後にサンプル作成へ。数度のサンプル作成と細かなデザイン変更の打ち合わせを経た後、部内で商品化の検討会を行う。そして、最後に全国支店の営業担当者に向けた商品プレゼンを乗り越え、ようやく商品化できるのだという。
「主力の定番商品をどうするか考えた結果、べーシックなインナーが年々売れなくなっていることに気づき、価格で勝負している他社との差別化が必要だと感じました。ちょうどその時、取引先から保湿効果とUVカット効果のある新しい加工方法があると知り、『紫外線を防げて、肌がすべすべになるインナー。これは女性にとってうれしいはず!』と思いついたんです。営業に向けたプレゼンでは、厳しい視線を感じて緊張しましたが、反応は上々。商品化が決定した後は、店頭POPや下げ札の文面やデザインの色合いなどまで自分で考え、機能性をアピールする方法にもこだわりましたね」

 

斉藤さんの企画したこのインナー商品、価格は2800円と少々高めの設定ではあったが、見事にその狙いが当たってヒット! 現在も継続して販売されているという。
「自分のアイデアが形になり、お客さまが店頭で手に取っている姿を見る瞬間は、感無量です! 店頭のスタッフや営業からも『これ、売れたからもっとちょうだい』『もっといろんなバリエーションをつくって』という言葉をもらうことができ、反響をもらう大きなやりがいを実感しました! その後、毎月、カットソーで15〜20型、ニットで10型程度の商品を企画しましたが、『売れる商品を適切な数量だけつくる難しさ』も痛感。投入する商品の数が多過ぎれば在庫を抱えることになるし、少なければ足りなくなるので、前年度の見込みから分析をして投入計画を立て、それに合わせて追加生産分も見込んだ上で適切な量の糸や生地を発注することが重要です。アイデア勝負だけでなく、数字をもとに全体の計画を考え、利益につなげていく。それが商品企画の仕事なんです」

現在は、アクセサリーやバッグ、靴などの雑貨を担当している斉藤さん。毎月100型もの商品を手がけ、1カ月サイクルで企画から生産までを行っている。
「バッグひとつにしても、いろいろなパーツがありますし、アクセサリーにもいろいろな種類がありますから、まずその知識を吸収することが大変でしたね。また、雑貨は洋服よりも単価が低く、品数も多いのですが、洋服以上に数量は売れません。ヒット品番を創ると同時に、消化率を落とさないために不振商品をいかに減らすかという難しさも感じています」

しかし、その一方で、自分の意見をどんどん反映できる手応えを感じているという。
「洋服担当の時には私を含めて2名のMDのほかに、たくさんのデザイナーやパタンナーがいる大所帯チームだったので、商品化されるまでに多くの人の手がかかっていました。今の雑貨担当は、3〜4人の小さなチーム。デザイナーとの打ち合わせの中、自分の意見がダイレクトに反映され、商品化されていく醍醐味を味わっています。サンプルが上がってきた時、『これは売れそうだな!』と思うと、早く店頭に並ぶ姿を見たくてワクワクしてしまいますね。もちろん、そのぶん責任は大きいけれど、自分が一からかかわった商品が店頭に並び、お客さまに自分の感性を認めてもらい、喜んでもらえる楽しさは本当に大きい! 今まで以上に新素材やトレンドなどのネタを集める努力を続けています」

将来の目標は、「自分がメインのMDとなり、新たなブランドを担当すること」だという。
「今現在もまだまだ勉強中ですが、失敗を繰り返してなんぼだと考え、想いを込めて企画しています。自分の手がけた商品のすべてが売れるわけではないけれど、商品の投入数などの計画も含め、いかに精度を上げていくかに注力しています。まずは、現在担当している“エニィファム”の認知度を上げ、各地のショッピングセンターで一番のブランドにしていきたいと思います!」