現代の子育ての現場を描き切った意欲作

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 子どもは毎日、さまざまなことを吸収しながら成長する。そして、一日一日成長するわが子を見て、その親は驚き、喜びを感じる。毎日いろいろなことが起こり、時には他の家族を巻き込みながら、自分たち親子の絆を強めていくのだろう。

 小説雑誌『紡』で連載されて話題を呼び、このほど単行本化された椰月美智子さんの『かっこうの親 もずの子ども』(実業之日本社/刊)は、そんな子育ての「今」をそのまま投影した“子育て小説”だ。
 作者の椰月さんは講談社児童文学新人賞でデビューして以来、家族や恋愛をテーマにした作品を中心に執筆してきた。本作はそんな椰月さんが、子育ての今を通して“家族の絆”や“命の意味”を描いた意欲作である。

 子育ての現場はいつでも戦場のように騒がしいものだ、そう小さな子を育てている親の話を聞いたり、子どもと触れたりするたびに思う。そして、この小説を読み切ったあとの印象もそれと全く同じであった。常に何かが起こり、そしていつの間にか子どもが成長をしている。少しずつ、子どもの顔が凛々しくなっていく。
 ただいま子育て真っ最中の親はもちろんのこと、将来子どもを欲しいと思っている人、そして子どもを生むことに不安を覚えている人にも本作を読んで欲しい。本作には子どもを育てることの大変さだけではなく、楽しさや喜びが爽やかに描かれている。

 最近は、“子育て疲れ”や家庭内暴力など、どこかにネガティブなイメージがつきまとう子育て。しかし、本来の子育ては、騒がしく、素晴らしい時間であるはずだ。親としての責任、家族とは、子どもとは、親とは。本作を通して“人間の根源”を探ってみて欲しい。
(新刊JP編集部)

■あらすじ
 子育て雑誌の編集者である統子は一児の息子を持つシングルマザー。4歳になる息子の智康は、保育園の年中組で、多少引っ込み思案なところはあるものの、親友たちと無邪気に遊ぶ姿は子どもそのものだ。

 前の夫である阿川とは、智康まだ赤ん坊の頃に離婚した。そして、阿川と別れた統子は、子どもを保育園に預け、ベビーシッターと協力し合いながら、仕事を続けていた。出来る限り智康に愛情を注ぐことも忘れずに。
しかし、それでも時には叱りつけ、手まで出してしまうことだってある。また、他にも孫を溺愛しようとする実の母親とのすれ違い、自分の体調のこと、ママ友たちとの関係など、子育てに関する不安と心労は尽きない。

 そんなある日、統子がある雑誌を読んでいると智康と瓜二つの双子を見つける。統子と阿川が離婚した理由と智康の出生の秘密、そして、雑誌に載っている瓜二つの双子――。統子と智康は、この双子たちがいる五島列島の中通島に向かおうとする。