【うちの本棚】第百三十回 大平原児/川崎のぼる

今回の「うちの本棚」は、川崎のぼるの西部劇作品『大平原児』をご紹介します。南北戦争当時のアメリカを舞台にしたガンアクションが見どころの作品です。

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本作は「少年ブック」に掲載された川崎のぼるの西部劇作品。初期の川崎は西部劇ものが多く、それはやがて『荒野の少年イサム』へとつながっていく。

ちなみに本書には「第一巻」の表記があるのだが、第二巻以降の刊行は確認できていない。また再刊行された気配もないので、単行本未収録部分もあるだろう。
「大平原児」というタイトルで、チャリーという同じ主人公が登場するシリーズ作品ではあるが、エピソード自体は独立した作品としても読める。設定は南北戦争当時のアメリカだ。

主人公のチャリーは、銃の腕は確かだが自ら「無法者」を自認していて、正義の見方というわけではない(もちろん世の中に為に…という行動も見せるので、正義感がないわけではないが)。このあたり、劇画家と呼ばれ、劇画作品を手がけてきた川崎らしい設定といえなくもない。また、2話目のエピソードでは無法者から宿無しに表現が変っているところを見ると、当時の雑誌に於ける主人公の設定の制限も感じられたりする。

ビジュアル的には『荒野の少年イサム』あるいは『巨人の星』と比べると描き込みが少ないように思え、部分的に貸本劇画的な描写と感じられるものもあったりして興味深い。特にアクションシーンでは、劇画チックと言ってもいい描写になっていると言えるだろう。
『巨人の星』という有名すぎる作品があるためにその他の作品に光があたりづらい川崎のぼるであるが、劇画とマンガの長所をうまく融合させていた作家だという印象が強い。今後再評価の機会があって然るべき作家のひとりだと思っている。

書 名/大平原児
著者名/川崎のぼる
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/秋田サンデーコミックス
初版発行日/昭和45年10月10日
収録作品/大平原児・無法者の道の巻
〃 ・死の街道の巻

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/