「ジョブホッパー」は人材としての価値が低いのか?




終身雇用制度が崩壊し、キャリアアップのために転職をすすめる雑誌記事なども多く見かけますが、転職を多く繰り返すいわゆる「ジョブホッパー」は、転職市場ではどのように見られるのでしょうか。2万人以上の面接を行ってきた人事のプロフェッショナルであり、人材コンサルタントの田中和彦さんにお話をうかがいました。



■転職回数が多いのは不利か?



──人から転職したという話を聞いても、驚かない時代になりました。



「転職は珍しいことではなくなってきたというより、ほとんどの人が経験している、あるいはする時代になったといえるでしょうね」(田中さん)



──その一方、転職を重ねる人も増えてきました。転職した回数が多いと、やはり転職市場では不利なのでしょうか。



「この時代、倒産やリストラなどで転職を余儀なくされるケースも多いですから、転職の回数だけ見て不採用になるケースは少ないでしょう。



ただ、自分で決意した転職の場合、『なぜそのとき転職したのか』ということをきちんと説明できるようにしておくこと大事。



その転職が、その人の描くキャリアプランの中で意味があり、『納得できる転職』だったのであれば問題ないはずです」



■若い世代は腰が落ち着かない?



──最近の20〜30代の人たちは、「なりたい自分」が過大なのか、腰の落ち着かない人が多いと聞きます。



「常に『給料が安過ぎる』とか『会社のやり方が合わない』といった理由で転職を繰り返す人は、実は目標も何も持っていないことが多いので、結局どの会社も長続きしません。



また、目標を持っていても、それに直結する仕事でないとわかるとすぐに辞めてしまうような、最短距離にこだわりすぎる人も少なくないですね。



ただ、若い人であっても、それなりのキャリアプランを描けている人は、多少の困難にあっても、多少の疑問を抱いても、きちんと乗り越えています。そして、ふと、これ以上、今の会社にいても目標に近づけないんじゃないかと思ったとき、初めて転職を意識する。転職を考えつつ、その目標は間違っていないか、軌道修正する必要性はないかと自問自答を繰り返す。そうやって『納得できる転職』につなげていますよ」



──若い人も捨てたものではない、と。



「ええ。もう『一社にしがみついていれば一生安泰』という時代ではありませんからね。逆に若い人たちの方が自分の目標をしっかり持っているし、建設的で前向きな考えを持っている人が多いのではないでしょうか。



例えば、最近では英会話アプリがとても人気のようですし、資格取得のためのスクールなども繁盛している。若い世代の人たちの方が能力やスキルを高めようという意識が強いと思います」



■人生にムダな経験はない



──では、転職の回数はそんなに気にしなくて良いでしょうか。



「転職のみならず、人生にはさまざまな転機が訪れます。その転機において、どれだけ真剣に自分の本音や目標と向かい合ったかが大事なのです。



また、転職を繰り返したからといって、人材としての価値が低くなったわけではありません。転職という決断と経験をしたことにより、その数だけあなたは成長してきたはずですから。



人生にムダな経験はありません。



いろんなターニングポイントを経験しながら、自分が思い描く将来の自分像に一歩一歩近づいてください」



転職回数よりも、「その転機に何を得たか?」をきちんと語れるかが重要なのですね。将来を前向きに考えつつ、過去のことも前向きにとらえられる力こそ、転職にも人生全体にも必要といえるでしょう。



田中和彦。一橋大学社会学部卒業後、リクルート入社。転職情報誌「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」など4誌の編集長を歴任。ギャガ・コミュニケーションズ副社長、クリーク・アンド・リバー社執行役員、キネマ旬報社代表取締役などを経てプラネットファイブを設立。人材コンサルタントのほかに書籍、映画、雑誌などのプロデューサーとしても活動中。著書に「複職時代」「断らない人は、なぜか仕事がうまくいく」「40歳までに卒業する50のこと」など多数。



(OFFICE-SANGA 百田カンナ)