9月8、9日に開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に向け、北方領土問題の行方に注目が集まっている。1945年、旧ソ連時代から実効支配し続けているロシアに対し、日本はどのように外交交渉をしていけばいいのだろうか。

現在の負の連鎖が始まったのは、今年7月のロシア・メドベージェフ首相の国後島訪問に対し、野田政権の弱腰な対応がきっかけであるとの見方が一般的だ。

北方領土問題の解決に向けて長年にわたり活動を続けてきた、「新党大地」代表の鈴木宗男氏は「もし私が総理大臣ならば、私自身が先に国後島まで行き、堂々とメドベージェフ首相を出迎えましたよ。“わが国固有の領土、国後島にようこそ!”とね。ビザなし交流の制度もありますから、もちろん可能です」と憤る。

「今回、メドベージェフ首相が訪問した目的は、ロシアが国後島につけた予算の執行状況を確認するためでした。つまり、すでにロシアにとっては内政の問題に移行してしまっているのです」

問題の発端は、2010年に当時大統領だったメドベージェフが初めて国後島を訪問したときにさかのぼるという。

「その直後に横浜で行なわれたAPECで、菅直人総理(当時)はメドベージェフに対しニコニコと接しておきながら、約3ヵ月後になって“許しがたい暴挙だ”と非難した。まさに負け犬の遠吠えですよ。今週末、ロシアのウラジオストクでAPECが開催されます。そこで首脳会談をし、堂々と北方領土問題について話し合わなければなりません!」(鈴木氏)

外務省官僚である、S氏の証言も興味深い。

「今年の3月1日、大統領選を直前に控えたロシアのプーチン氏が領土問題の交渉に関して“私が大統領になった日から『ハジメ』です”との発言をしました。大統領選に勝利したのは3月4日でした。そして、6月中旬にメキシコで行なわれたG20で野田総理とプーチン大統領は会談したのですが、野田さんは“これから領土問題が始まることを確認しましょう”と発言した。これには省内で失笑が起こりましたね」

それはどういう意味なのか?

「ロシア側は北方領土を実効支配している立場です。熱心に交渉すべきは日本側。なのにプーチンのほうから、3月4日から交渉のチャンネルをオープンにしますよとのメッセージが発信された。つまり、6月のG20までに、日本は具体的な要求を固めておくべきでした。そうすればロシア側も、経済的な共同開発など具体的な条件交渉へと進展できた」(S氏)

だが実際には、3ヵ月も時間があったのにもかかわらず、日本からはなんの提案もしなかったのである。

「これでロシアは、日本は真剣ではないなと判断したはずです。その証拠に、メドベージェフ首相が国後島を再訪問しようとした際、プーチン大統領は止めませんでした」(S氏)

では、APECの日露首脳会談で、日本はどうすべきなのか?

「今回の会談はかなり重要です。日本が北方領土問題に本腰であるとの印象をロシアに与えられれば、まだ間に合うと思います。ですが野田総理は、G20のときは消費税増税法案のことで頭がいっぱいだった。今回は解散政局の中で民主党の代表選を控えている。期待は薄いですね」(S氏)

北方領土問題の進展は、どうやら今回も厳しそうだ。

(取材・文/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ38号「領土政策に圧力をかける売国議員たちの闇実態!!」より