ビール愛好家がソーシャルで新しいビールをつくる「百人ビール・ラボ」

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ネットでユーザーを大勢囲い込み、その声を集めて商品を作れば、顧客の要求・期待を取り込んだマーケティングが可能だし、プロモーションも効率的、効果的になる――。ソーシャルメディアを使った経験のある人なら、誰でも思いつきそうなアイデアだ。

しかし、実際に進めるとなると、そう簡単ではない。ユーザーを大勢集めるには、それが可能になる商品やテーマが重要なポイントだし、ユーザーをコミュニティに積極的に参加させるためのインセンティブ設計も必要だ。

そんなフェイスブックの利用について、サッポロビールが正面から挑もうとしている。2012年3月から始めたファン参加型の商品企画プロジェクト「百人ビール・ラボ」がそれだ。ファン数は1万5000近くまで伸び、投稿には2000を超える「いいね!」がついている。

ネーミングやパッケージのアイデアも募集

「百人ビール・ラボ」とは、サッポロビールの新商品開発を軸に、フェイスブック上で会議を行うグループだ。出されたアイデアを基に、サッポロビールが実際に商品を作り、会議にもっとも積極的に参加した上位100人を「百人ビール・マイスター」と認定する。

アイデアは味の好みだけでなく、ネーミングやパッケージ、プロモーションにも及ぶ。「マイスター」となった100人には、試飲会や完成披露への招待を予定しているという。

この9月からは、毎週金曜日の夜8時から、フェイスブックのコメント上で「LIVE会議」を開催することが予定されている。全5回で、7日の初回は企画の説明、2回目以降は「みんなが飲みたいビール」の声を集めて「製造するビールの企画」に落としこんでいく。

技術面などの制約もあるだろうから、ゼロベースからの商品開発と言えるかどうかわからないが、ここまで「民主的」な試みは例を見ない。

サッポロビールがこのように大胆な取り組みに踏みきれたのも、同社が4月から始めた「北海道Likers」というフェイスブックページの運営経験があったからと考えられる。サッポロビールゆかりの北海道を、物産や観光地で紹介するフェイスブックページで、良質な北海道の情報をまめに投稿している。こちらのファンは、すでに14万人を超えている。

1記事で数万単位の読者を確保していることが予想され、ECサイトへの誘導も図られていることを考えると、実際の売り上げにもかなりつながっていることが予想される。コメント欄にも「おいしそう!」「食べた〜い」「買ってみました」などの反応も見られる。

約2800字の「コミュニティ・ガイドライン」を設定

これだけ大規模なコミュニティを運営するには、やはりしっかりしたルールが必要であり、「百人ビールラボ」も約2800字の「コミュニティ・ガイドライン」を設けている。「対応時間」や「返信指針」などの情報発信の方針のほか「免責事項」や、

「必要以上に感情的だと判断される内容」

といった「削除基準」、なりすましなどの「禁止事項」を設けている。

とはいえ、企業側にはこのような使い方に不安を抱くところが多いだろう。参加者は実名原則とはいえ、どんな書き込みをされるかわからないし、運営方法への批判が高まるかもしれない。リスクを負ってそこまでしなくてもいい、と考える人がいても仕方がない。

しかし、あまりに安全策を取れば、コミュニティの盛り上がりを抑制することになりかねない。もしも今回の商品開発が成功しなくても、コミュニティ運営のノウハウを得ること自体、今後の大きな強みになると考えられる。

そもそも「金曜日の夜にファンは集まるのか?」という懸念もある。ビール好きのファンであれば、この時間帯は外でビールを楽しんでおり、フェイスブックどころではないのではないか。

サッポロビールは、この時間を選んだ理由を「ファンの仕事の影響を受けにくいタイミング」としており、飲食店からモバイルでの参加も呼びかけている。「盛り上がり」と「議論の深化」をどう両立させられるのか、注目したい。(岡 徳之)