繊維編

業界トレンドNEWS Vol.143

繊維編

高付加価値商品である炭素繊維は、日本の3社で世界シェアの約7割!この理由は?


■炭素繊維を筆頭とする高付加価値製品と、樹脂・環境・医療などの非繊維事業が業績の鍵を握る

繊維は、植物や動物を原料とする天然繊維(綿、絹、羊毛など)と、石油やセルロースなどの原料に化学的処理を施し、人工的に生成する化学繊維(ポリエステル、ナイロンなど)に大別される。世界の繊維生産は、新興国の経済発展に伴う需要拡大によって増加傾向。日本化学繊維協会によると、2011年における世界の主要繊維生産は7671万トン。02年(5073万トン)に比べ、5割以上増えた。一方、国内の繊維市場は横ばい、もしくは微減傾向が続いている。11年における国内の化学繊維生産量は102万トン。リーマン・ショック後の大幅な落ち込みからは回復したものの、01年(156万トン)に比べると3分の2程度の規模だ。また、天然繊維はさらに厳しい状況。11年の綿糸および毛糸の生産量は5.3万トンで、01年(16.9万トン)の約3分の1にまで落ち込んでいる。

日本の近代化をけん引する産業の一つだった繊維業界が規模縮小した背景には、国内人口の減少による需要の落ち込みに加え、安価な労働力を求めた国内メーカーが生産拠点の海外シフトを進めたことが挙げられる。また、中国をはじめとした新興国メーカーの低価格製品も、大量に流入。そこで繊維各社は、衣料向け汎用繊維を中心としたビジネスモデルの転換を迫られている。

各社が打ち出している方向性は、大きく分けて2つある。1つ目は、炭素繊維(カーボンファイバー)に代表される高付加価値繊維への生産シフトだ。軽く、強度と弾力性に優れる炭素繊維は、金属材料の代わりとしてさまざまな分野での活用が広がっている。航空機の分野では、エアバスA380、ボーイング787といった新型機が炭素繊維の本格採用に踏み切っており、今後大きな需要が見込めそうだ。また、自動車業界でも高級車を中心に炭素繊維の利用が拡大。低コスト化・量産技術の確立・リサイクル性などの課題がクリアされれば、低燃費車や電気自動車を中心とした量産車にも一気に広がる可能性があるだろう。ほかにも、テニス・ゴルフなどのスポーツ用品、風力発電の風車ブレード、燃料電池の部品、建築資材、医療機器や電子機器など、幅広い分野で注目されている。

炭素繊維を生み出すには、多額の研究開発費と設備投資が必要。そのため、この分野は大企業による寡占市場となっている。現在のところ、東レ、帝人(東邦テナックス)、三菱レイヨンの3社で世界シェアの7割を占めており、日本の独壇場といえる状況だ。しかし、欧米、台湾のメーカーが生産能力の増強を進めており、さらに、中国、インド、トルコなどの新興国メーカーも参入しているため、競争は激化すると予想される。国内メーカーには、さらなる品質向上とコスト削減、技術開発が求められるだろう。

もう1つの方向性は、非繊維事業の強化だ。例えば、東レは樹脂・フィルム・電子情報材料などのハイテク向け高機能材料を戦略的拡大事業と位置づけている。また、水処理・環境事業や医療・医薬事業を新たな収益の柱として重点的に育成・拡大する方針。他社でも、樹脂やフィルムなどの高機能材料、医療・医薬関連製品などに注力する傾向が強まりそうだ。