別府八湯永世名誉名人に聞く、地元民がわが家のように通う名湯・秘湯

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日本一の湧出量を誇る温泉都市、別府。

源泉数は約2,800にものぼり、日本の源泉の約1割にあたる。

まさに温泉の上に街が浮かんでいるようなスケールの大きさだ。

当然、観光客も行かない地元民御用達の温泉もあるはず。

早速調査に出掛けた。

別府は別府・鉄輪(かんなわ)・観海寺(かんかいじ)・明礬(みょうばん)・亀川(かめがわ)・柴石(しばせき)・堀田(ほりた)・浜脇(はまわき)の、「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれる温泉郷で構成されている。

別府には広く知られた名湯がたくさんあるが、市営温泉や地域の住民がお金を出し合って作った共同湯もある。

それらはどれも安い料金で利用できるのだ。

なかには歴史ある温泉や、温泉ツウもうなる良泉もあるという。

しかし、観光で街を巡る限りでは、地域の共同湯を見かけることは少ない。

それでもあると聞いたら、どうしても入りたくなるものだ。

地元民が愛する名湯はどうやって見つければいいのだろうか。

そもそも、一見の観光客が地域の共同湯に入ることはできるのだろうか。

そこで、別府の共同湯について、「別府八湯永世名誉名人」の土谷雄一さんに教えていただいた。

別府八湯名人とは、別府八湯の中から選ばれた88湯を制覇した者に与えられる称号。

土谷さんはなんと、名人位を34回も取り、現在は35巡り目の8段というつわものである。

その豊富な知識と温泉愛を持って、別府温泉の魅力を発信する温泉の伝道師なのだ。

「市内には100カ所とも200カ所ともいわれるほど、たくさんの共同湯があり、郵便ポストの数より多いとさえいう人もいます。

特に昭和の下町風情が残る浜脇、別府、亀川などに共同湯、組合湯が点在しています。

しかし、その多くが公民館の中にあったり、ひなびた民家のような建物だったりします。

路地裏や生活道路にひっそり佇(たたず)んでいるので、車で移動しながらでは見つけることは難しいでしょう。

共同湯散策は徒歩か自転車がおすすめです」。

なるほど、住宅地の中に紛れている上、目立たない外観が多いから気づかなかったのか。

「自宅に風呂がない家も多く、共同湯は暮らしに欠かせない存在です。

特に別府駅周辺の路地裏では、かなりラフな格好で風呂に通う人を見かけることも珍しくありません。

自宅から共同湯まで、わが家の廊下のような感覚なのでしょうね」。

まるで、隠れ湯のように点在する共同湯や組合湯。

ここには、観光客でも入れるのだろうか。

「どうぞご遠慮なく。

お湯を楽しみ、温泉を愛する地元の人たちと触れ合ってください。

ただし、共同湯は地元の人が大切に維持管理しています。

利用する際は、よその家のお風呂をお借りする気持ちで先客に挨拶して入り、マナーを守って利用してくださいね」とアドバイスをいただいた。

多くの共同湯は、洗い場と浴槽があるだけという簡素な造りだ。

あまりのシンプルさに最初は戸惑うかもしれないが、それもまた風情。

しかも、「場所によって泉質も雰囲気も違いますが、お湯はどこも極上ですよ」と土谷さん。

これはもう、入らずにはいられない。

しかし、あれもこれもは時間的に無理だし、第一のぼせてしまいそう。

そこで、数ある共同湯の中から別府の温泉文化が垣間見えるおすすめの共同湯を紹介してもらった。

まず一つ目が、錦栄温泉(きんえいおんせん)。

とろみはあるが、クセのないやわらかい肌触りの湯を楽しめるこちらの温泉は、完全かけ流しで湯量豊富。

番台のおばちゃんのもてなしもよく、初めての人でも笑顔で受け入れてくれる。

別府市民の暮らしに密着した温泉スタイルを感じることができるはずだ。

次に向かったのが、天満温泉(てんまんおんせん)。