「もうあかん やめます!」の看板をぶら下げて数十年の大阪の靴屋さんの謎

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渋滞しやすい交差点として有名な大阪市北区西天満。

その交差点の傍には、センセーショナル過ぎる看板ゆえに、大阪市民なら知らない人はいない名物靴屋さんがある。

黄色い看板には赤字で「店じまい売りつくし」の文字が躍り、さらに、「もうあかん やめます!」と悲痛なメッセージをしたためた垂れ幕までデカデカと掲げている。

店の名は「靴のオットー」。

初めて店の前を通りかかる人は誰しも、「老舗の靴屋さんにも不況の波が!?」と心配しながら看板をマジマジと眺める。

しかし、数分後には違和感を覚えるのだ。

なんせ、看板はところどころススで汚れ、塗装もはげかけている。

いくら交通量が多い交差点に面しているといっても、この古び具合からはとても最近かけられた看板とは思えない…。

一体いつから売りつくしセールが始まったのかが気になる。

ここはひとつ、突撃調査に踏み切るか…。

意気込んでみたものの、店に入るやいきなり失礼な質問をぶつける勇気はなかなか出ないもの。

まずは、店の前を通りかかる人やタクシーの運転手さんをつかまえて疑問をぶつけてみた。

すると誰もが、「もう15年以上あの看板かかってるで」と笑う。

え? 15年前から、もうあかん? 店じまい? どういうこと? これはもう本人に聞くしかない。

「黄色い看板に『店じまい 売りつくし』と書いたのは54年ほど前だと聞いていますよ」と話してくれたのは、この店の2代目で、初代オーナーの息子にあたる竹部さん。

先代がお店をオープンさせて2年ほどたった頃、売れ行きが乏しくなってきてお店を閉めようと思い、この看板を出すに至ったのだったとか。

ところが、看板を見た地元の人から「がんばってほしい」と励まされ、結果、なんとか持ちこたえることができたのだそう。

しかし、19年ほど前、再び悲劇が「靴のオットー」を襲った。

バブル経済崩壊である。

オーナーは思った。

「今度こそは本当に店を閉めなければいけないかもしれないな」と。

そこで、看板にプラスして、「もうあかん やめます!」というメッセージ垂れ幕までかけることにしたのだそう。

ところが、ここで再び奇跡が起こる。

なんと、垂れ幕のキャッチコピーが話題を呼び、口コミでお客さんが急増したのだ。

そればかりか、テレビや雑誌にも度々取り上げられ、一躍人気の靴屋さんになってしまったのだ。

ここまでのエピソードを気さくに話してくださった竹部さんの笑顔のおかげで、こちらの緊張もほぐれてきた。

そこで、さすがにこの質問は失礼かしら? とビクビクしながらも、「ホンマに閉める気はあります??」とぶしつけなことを聞いてみた。

すると竹部さんは、「閉めちゃったら僕が路頭に迷っちゃいますからねぇ」と苦笑い。

困った顔にも人のよさがにじみでていて、倒産危機かと思いきや、逆に人気に火がついたという逸話にも納得させられてしまう。

そんなキュートな竹部さんは一時期、「あかん もうやめます!」の横に「いや やっぱりやります! どっちやねんセール」という垂れ幕をかけていたこともあるのだと話してくれた。

今ではこの看板と垂れ幕こそが「靴のオットー」の“顔”になっているそうだ。

インタビューのラストには、「これからもこの看板とともに営業を続けていきますよ」ととびきりの笑顔を見せてくれた。

店内には、ビジネスシューズからユニークなゴールドのカジュアルシューズまで、豊富なラインアップの靴が並ぶ。

中には、この店が日本で初めて販売した、非常に有名な靴もあるという。

さてその靴とは? ヒントは名物看板とともにかけられた、「格差社会を是正せよ。

身長格差は当店で」という垂れ幕にあった。