日本語は、悲しくても、うれしくても感情を抑えるので、抑揚が少ないですよね。

一方、英語は、怒りも喜びも悲しみも、感情表現がとにかく豊かで、ジェスチャーもつけて体全体で感情を表現します。

それから、教科書では、「How are you?」と聞かれたら「I’m fine!」とか「I’m good!」と決まったアンサーを教えられていますけど、そもそもネイティブは「I’m fine!」なんて言いません。

実際には、「I’m OK.」とか「I’m sad.」とか、「I’m tired.」とか、そのときの気持ちに応じたいろんな言葉が返ってきます。

そういうのが段々分かるようになって、今では、感情をそのまま表現にすればいいんだなと気づきました。

以前、英語を勉強していた日本の友人が、外国人と実際に話した時に、全く通じなかったと言っていました。

その話を聞いて、定型文を覚えるのではなく、シチュエーションと言葉をリンクさせて覚えることが大事だと思いました。

だから、外国人と話す機会があれば積極的に話した方がいいですし、ない場合は、洋画を見たり、海外ドラマを見たり、生きた英語に触れることが大切なのではないかと思います。

■「L」と「R」の発音の区別が日本人には難しい。

――英語が話せるようになるために苦労したことはありますか?「L」と「R」の発音の区別が難しかったですね。

以前、行きつけのカフェに「Marble loaf」っていうパウンドケーキがあったんですが、注文時に「L」も「R」で発音してしまっていて、一緒にいた友達に「犬の鳴き声みたい」って笑われたんです。

犬の鳴き声の「bowwow」の音に似ていたらしいんです(笑)。

でも、同時に「直したほうが美姫のためだから」って言ってくれて、それからは、「じゃあ、“Clean my room”って言ってみて」、など「L」と「R」の発音を区別するためにいろんな課題を出してくれて、生きた英語が学べましたね。

■将来の夢は、コーチになって日本の選手を海外に連れて行くこと――英語を学ぶことで、競技に影響はありましたか?英語が話せるようになったこともそうですが、モロゾフコーチに出会ったこと、海外で競技生活を送ったことで表現の幅が広がったと思います。

フィギュアスケートが表現を重んじるスポーツであり、アートとして成り立つスポーツであるということを強く感じることができました。

プラグラムもガラッと変えてシニアとしてのイメージづくりをしたのもアメリカでのことです。

また、表現を磨くうえで、英語が理解できたことはプラスになったと思います。

コミュニケーションがスムーズになりましたし、プログラムで使う曲のストーリー性を理解するのにも役立ちましたから。

――将来の目標を教えてください。

コーチになるのがスケートを始めたときから、私の夢なんです。

門奈裕子先生という、とても尊敬するコーチがいて、憧れてスケートを本格的に始めたので、門奈先生みたいになりたいという思いはあります。

それから、自分自身が海外での経験を通して、すごく刺激を受け、成長できたので、将来有望な日本選手を積極的に海外に連れて行けたらなと思っています。

■お話を伺った方安藤 美姫(あんどう みき)さん愛知県名古屋市出身。

トヨタ自動車所属。

9歳で本格的にスケートを始め、翌年の全日本ノービスBクラスで3位入賞を果たす。

世界の公認大会で4回転ジャンプ(サルコウ)を成功させた唯一の女子選手。

2011年世界選手権優勝、四大陸選手権優勝。

2010年全日本選手権優勝、2010年バンクーバーオリンピック 5位入賞。