知らなきゃ損する!アイデアを産み出すインプロゲーム「マジックボックス」




新商品を考えるためにパソコンの前へ。やらずに逃げ続け、気づけば発表は明日。頭のどこを探したって真っ白で、気分を変えて外に出たものの、暑いしもうイヤだー! なんて経験はありませんか?



その気持ち、痛いほどわかります。僕は普段、芸人として活動しているのですが、芸人はアイデア勝負の世界。認められるまでは常に新ネタを作らなければなりません。考えに考えすぎて、頭の中がグルグルして電信柱をみるだけで笑っているみたいな精神状態なんてしょっちゅうです。

そんな問題を解決できる方法がもしあるとしたら? しかもそれに一切お金がかからないとしたら? もうやるしかないですよね!





■頭のなかの検閲官を消そう!



今回は、アイデアを産み出すインプロゲーム「魔法の箱」について、現在プロのフォトグラファーとして活躍している大崎絵里耶さんに解説していただきます。ちなみに僕と大崎さんは、東京学芸大学で、一緒にインプロを学んでいました。



前回の記事でも紹介させていただいたのですが、インプロとは設定も脚本も何も決まっていない即興演劇のことです。実はインプロは演劇の訓練として利用されることはもちろんのこと、最近では企業研修としても利用されているのです。



「この魔法の箱というゲームは、まず二人一組になり、一人はマイムで箱を準備します。もう一人はそれをあけて中身を取り出します。



箱をもっている人は取り出してもらったときにそれは何ですか?と聞き、取り出した人はそれにできるだけすばやく答えていきます。この一連の流れを数回繰り返すだけのゲームです。



もちろん即興なので、箱の中に入っているのは何かわかりません。食べ物や生き物、または形のない概念のようなものかもしれません」(大崎さん)







フォトグラファー・大崎絵里耶さん



シンプルすぎて、ルールといったルールもないゲームですが、一つだけ大事なことがあります。それは、「最初に思いついたことを言う」ということです。



「そんなの簡単でしょ?」と思いますよね? しかしこれが難しいんです! なぜなら、人間の頭にはアイデアの検閲をする検閲官がいるからです。そいつが検閲するものは三つあります。



■1:卑猥なもの、いわゆる下ネタに分類されるもの



■2:頭がおかしいと思われること



■3:普通なこと、誰もが思いつきそうなこと



フッと思いついたアイデアが一番おもしろいのに、この検閲のせいで、いったんそのアイデアを消してしまうのです。そしてそれを消した瞬間、一気にアイデアを出すのがつらくなってしまいます。



僕の師匠である東京学芸大学の高尾隆准教授は著書『インプロする組織』の中でこう語ります。



「考えれば考えるほど、この三つの検閲は強く作動します。ところが、みなさんご存じのように、歴史上のすばらしい芸術作品はこの三つを満たしていることが多いでしょう」



たしかに、芸術作品はパッと見だといやらしいものが多いですものね!



■ビジネスから芸術まで、幅広く効果を発揮する



ゲームについては、おわかりいただけましたか?



論より証拠、論より実践!



というわけで、インプロ芸人の僕と、論文執筆に悩む学生Mさんとでこのゲームをやってみました。







メガネが僕で、ブルーのシャツがMさんです。



終わったあとにMさんはこんな感想をくれました。



「最初は、いきなり何かをポン! と答えるのがなかなか難しかったです。そこで野村さんに指摘されて気づいたのですが、無意識にアイデアを消している自分がいることに驚きました。言われてみたら、論文のアイデアを出すときも、結局最初のものに落ち着く場合が多いですよね」



前出の大崎さんもこのゲームを通して、実際にすばらしい躍進を遂げています。



「写真作品はアイデアが命といっても過言ではありません。出発点がおもしろくなかったら、いくら技術があったとしてもつまらない作品になります。私も発想が弱いことがコンプレックスでまったく作品がつくれない時期がありました。



そんなとき、インプロのこのゲームと出会いました。検閲を繰り返し続けて自分で自分自身を追いつめていることに気づいたのです。そこから私の作品は変わりました。アイデアが湧く、というか、自分がなんだか身軽になった気がしたのです。



そうして作品撮りを続けていくなかで第96回二科展写真部学生二科賞をいただいたときは、飛び上がるぐらいうれしかったです」



ビジネスにはもちろん、演劇以外の芸術にも広がりを見せるインプロの魅力、少しは伝わったでしょうか? 広まっていないいまだからこそ、あなたが一歩先行くアイデアマンになる大チャンスです。ぜひ、お友達を誘ってこのゲームをお試しあれ!



参考文献:「インプロする組織」予定調和を超え、日常をゆさぶる 著者:高尾隆・中原淳(三省堂)



大崎絵里耶



東京学芸大学表現コミュニケーション専攻にて、芸術表現と社会活動を結び付けた実践活動について学びながら、東京写真学園で写真の基礎を学ぶ。学芸大学での卒業論文執筆を機に、本格的に写真作品の制作に取り組みはじめ、同年、命と食べ物をテーマにした作品で第96回二科展写真部学生二科賞を受賞。卒業後も自身の作品制作を継続しながら、雑誌やWEBで料理撮影をメインに活躍中。



ホームページ http://eriyaosaki.com



Twitter http://twitter.com/osakieriya



(OFFICE-SANGA 野村真之介)