「いまいち萌えない娘」という大胆なキャラクターを起用し、物議をかもした神戸新聞社の求人広告。今回、その求人広告を追随するように、埼玉新聞社が萌え娘を使った求人広告「ヲタ就活」を発表しました。

 登場したキャラ「さいたま子」は、ミッキーマウスのような体型で、片目ウインクで舌をペロっと出してこちらを見ています。そんなキャラをみてどう思ったかが問われており、「1.フツーにかわいい」「2.どこかで見たことがある」「3.何だかイラッときた」の3択なのなかから選ぶことになっています。時代にマッチした? インパクトある広告として話題となるのではないでしょうか。


 2012年Creativity誌「世界の最も影響のある50人」の1人にも選ばれ、その活躍ぶりから「広告業界のイチロー」と呼ばれるレイ・イナモト氏は、書籍『ベロシティ思考』のなかで、広告について、「広告の未来は広告でない」と予想しています。そして、そのために必要なことの一つとして、『「ブランドの物語」ではなく「ブランドの行動」』が大切だと言います。

 「ブランドの物語」がいかに大切か、これはマーケティングやブランド・コミュニケーションに関わった人なら耳にタコができる程、聞いたことのある言葉ではないでしょうか。しかし今、この考え方が崩れ始めようとしているのです。一つの例としてスウェーデンの観光局の活動が紹介されています。

 同観光局には、「スウェーデンのキュレーター」という活動があり、レイ・イナモト氏いわく、この活動は大失敗しているのですが、いまもなお続いています。

 「スウェーデンのキュレーター」は、スウェーデンという国の魅力を世界中の人に紹介する仕事、これまでなら著名人を起用するのが常識でしたが、同観光局では一般人、つまり素人を起用しているのです。それも饒舌な1人を選ぶのではなく、毎週1人を選び、彼ら彼女らが、スウェーデン国の公式Twitterのアカウントから好きにつぶやくのです。なかなか懐の深い企画です。

 そしてその結果、あまりにつぶやきの内容が妥当でなく過激なものだったので、世界中から非難が殺到したのです。しかし、この骨太な企画は、ここで担当者を変更することはせず、当初の予定通り、1週間つぶやいてもらい、次の週にまた別の担当者に引き継がれたのです。

 「確かにこれは失敗した事例ではある。ただ分かってもらいたいのは、いかにこのスウェーデンという『ブランドの行動』が物を語っているかということだ。素人を選び、失敗してもそのまま続ける。これはいかにも民主的な思考、自由主義そして開放的な立場をとるスウェーデンという『ブランド』を何よりも効果的に象徴している。『物語』をコミュニケーションするのではなく『行動』がブランディングになっているのだ。

 インターネット、ソーシャルメディアのおかげでブランドは『広告』の陰に隠れることはいまやできない。いくらマスメディアを使って物を語っても、それが嘘だったり偽物だったりすると、あっという間に暴き立てられてしまう。『物語』だけでは足りないわけで、実際に『行動』に繋がっていかないと今後は効果がない」(レイ・イナモト氏)


 埼玉新聞社の求人広告に登場したキャラ「さいたま子」。実は、仕事内容が「アニメとスマートフォンを活用した観光誘客事業」で、「編集」と「SE」を募集しています。そして、特記事項として、「震災等緊急雇用対応事業」と記載されています。

 「採用条件:東日本大震災等の影響による失業者で災害救助適用法地域に所在する事業所を離職した失業者又は災害救助適用法地域に居住していた求職者。もしくは平成23年3月11日以降に離職した失業者に限る。」

 つまり、東日本大震災以降に失業した人を対象に募集しているということです。つい、インパクトあるイラストに目が行きがちですが、「震災等緊急雇用対応事業」として動くことは、『ブランドの行動』の一つと言えるのかもしれません。



『ベロシティ思考-最高の成果を上げるためのクリエイティブ術-』
 著者:アジャズ・アーメッド,ステファン・オランダー,レイ・イナモト(日本版特別寄稿)
 出版社:パイインターナショナル
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