日本相撲協会は昨年4月、八百長に関わったとされる多くの力士を角界から追放した。しかし、未だに多くの八百長力士や親方が現役で居座っていることを、角界を追放された力士たちは知っている。

 去った力士が抱く、拭いきれない不公平感――。その“怨念”が、協会が公表したくてもできない「深刻なトラブル」を招いている。

 中堅親方がいう。

「八百長騒動で昨年4月に引退した元力士が、昨年末から今年春ごろにかけて、八百長に関わったと見られる現役の協会関係者や親方に“暴露記事を出す”といったメールを送りつけてきていたと聞いている」

 続いて協会中枢に近い関係者がいう。

「親方や力士たちに“金を貸してほしい。助けてくれ”と誰彼かまわず頼んできている。かなり追い詰められているというか、やけっぱちになっているようだ」

 そのような行動を取っている元力士として実名が挙がったのが、昨年の2月に端を発する八百長騒動で協会を辞した元春日錦(退職時は竹縄親方)だった。ある有力部屋の関係者はこう証言した。

「八百長力士として名前が挙がったにもかかわらず、処分を免れて協会に残った力士たちに、“事業を興す”という名目でカネを出させようとして連絡を取りまくっていた。“全員で数百万円を集めるんだ”といっていたらしい」

 ある協会関係者に対しては、具体的に「何時、何分に○○ホテルで会いたい」と指定して接触してきたという。

 なぜ元春日錦はこんな恫喝めいた行動に走ったのか。彼の言い分を、現役時代に交友のあった親方はこう代弁する。

「八百長に手を染めたことは反省しているが、なんでオレたちだけが犠牲になって角界から放り出されなければいけなかったのかとの思いが強い。同じように八百長に手を染めておきながら、のうのうと協会で生き延びているヤツがいることが許せない、という気持ちがあるのでしょう。

 引退させられた力士たちは、世間からも悪者にされ、就職口も限られてしまう。聞くところによれば、生活費にも事欠く状態の元力士も多く、高利貸しからカネを借りている者もいるようです」

 本誌に「なぜ自分たちだけが角界を去らなければならなかったのか」と苦しい胸の内を語った元山本山の証言とも重なる。

 元春日錦の恫喝は、中途半端にしか膿を出し切らなかった相撲協会が、自ら招くべくして招いたことともいえる。

※週刊ポスト2012年9月7日号