■右鎖骨骨折で無念の離脱
 まだオフィシャルでの発表はありませんが、アルビレックス新潟戦で、鹿島アントラーズのルーキー山村和也が右鎖骨を骨折してしまいました。全治まで3ヶ月くらい掛かると言われており、今シーズンのリーグ戦の出場は難しくなりました。

 入団前は大きな期待を集めながら、レベルの高いプロの選手を相手にして、対人プレーの甘さ、ポジショニングの取り方の遅さが目立ってしまい、今シーズンは幾度となく批判にさらされてきました。真面目な選手ですので、自身の問題に対して真摯に向き合い、少しずつ弱点は改善されているものの、一流のCBになるためにはまだまだ越えなければならないハードルは沢山あります。

 しかし、年代別代表で大学時代からJリーガー達を引っ張ってきたとはいえ、山村は今シーズンJリーグにデビューしたばかりのルーキーです。課題があるのは当然です。いつの日か自身の課題を克服して、日本を代表するCBに成長してくれると私は信じております。最近、批判される事が多い山村でしたが、今回はそのストロングポイントについて論じたいと思います。


■山村のストロングポイント
 入団前から自身のストロングポイントは、『ポゼッション』と語っていた山村ですが、ビルドアップのスキルは、JリーグのCBの中でも既に一流のレベルにあると思います。ボランチとしても高い評価を受けていたので、それも当然といえば、当然ですが、トラップした時のボールを置く位置がとても良く、相手にプレスを掛けられても、ほとんど慌てる事がありません。参考ですが、トラップ時にどこにボールを置くかを見ると、その選手のスキルを判定する際に非常に参考になると思います。山村はパスを出しやすい位置にトラップしているので、すぐに、そして滑らかに次の動作に移れますし、余裕があるので、仮に味方の動きが悪くてパスコースが制限されていても、ターンしてボールを取られない位置にキープし直す事が出来ます。ちなみに、更に上を行くのが柴崎です。柴崎はルックアップして、周りの状況を把握した上で、次のプレーに移りやすい位置にボールをコントロールします。本当に末恐ろしい選手です。

 話が少し逸れましたが、山村の話に戻ります。山村はトラップの上手さ、ポゼッション能力の確かさに加えて、視野も広く、鋭いクサビのボールを後方から供給する事が出来ますし、ロングパスの精度も高いです。さらに最終ラインで展開する横パスも、近い相手だけでなく、一つ先の相手に速いグラウンダーのパスを供給する事が出来ます。このビルドアップはパッと見ただけでは目立ちませんが、現代サッカーにおいては、相手守備網を攻略するために欠かせない要素です。例えば、逆転勝利を収めた磐田戦では、岩政と青木のCBは、中盤のフリーの味方選手にパスを通す事が出来ず、目立たない所で、得点のチャンスを潰していました。二人の組み立てが心許なかったので、柴崎が最終ラインまで降りてきてビルドアップに参加していましたが、新潟戦を観ても、あれだけの攻撃センスを誇る柴崎には、中盤の底で攻撃を司って欲しいですよね。山村がディフェンスラインに入ると、柴崎が中盤の底にポジションを取る機会が増えるので、山村−柴崎−レナト−大迫と強固な一本のラインが縦に通り、ポゼッション面で相手に対して優位に立てます。鋭いくさびのボールがどんどんと前線の選手に供給されるので、落としを受けた味方選手は、前を向いてプレーをする事が出来ますし、攻撃のスイッチが入るポイントが増えるので、利点は沢山あります。

 そして最後に、長身から繰り出される高さというのも山村の武器になります。入団当初は、動きが重い印象でしたが、大学時代に負った怪我が癒えてからは、ヘディングの競り合い時に、観衆が唸るような圧倒的な高さをたびたび披露しております。コンビを組む岩政からもヘディング時のポジショニングについて色々教えてもらっておりますし、高さを活かしたヘディングが今後のプロサッカー生活の大きな武器となるのではないでしょうか。

 以上が山村のストロングポイントになります。クラシカルなCB的な要素では、まだまだ学ばなくてはならないところが多いですし、岩政とのコンビも熟成させる必要があるのは確かです。一方で、既に『強み』も持っているので、今後、長きに渡って昌子や植田君と共に、鹿島アントラーズを後方から支えてくれるでしょう。ACLを賭けた天皇杯での大事な試合に復帰して、タイトル獲得に貢献してくれると信じています!


 最後まで読んでいただいてありがとうございます。次回のやべっちFCでは、イラク代表監督のジーコへの独占インタビューが行われるようです。鹿島アントラーズサポーターの方は必見ですね!