ゆとり社員の取扱説明書




ゆとり教育を受けた世代が社会人デビューを迎えています。彼らには「とにかくがんばれ」といった感情論は通用しないといわれており、どのように指導すればいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、社員教育や人材育成などを手掛けるインソースグループ、ミテモの執行役員・澤田哲也さんに、「ゆとり社員」との上手な付き合い方についてうかがいました。



■指示されたことしかやらない理由



――いわゆる「ゆとり社員」の特徴について教えてください。



「よくいわれているのが、『指示されたことしかやらない』ということです。これはどこの会社にも共通してみられる傾向ですね」(澤田さん)



――どうして指示されたことしかやらないのでしょうか。



「指示以外のことをして失敗すれば、怒られる可能性があるからです。彼らはあまり怒られた経験がないので、怒られるようなことはしたくない。また、怒られても、どうしていいかわからない。そのため、失敗する=怒られるリスクを避けて、その場をやりすごす傾向がみられます。



これは、決してやる気がないからではありません。彼らが育ってきた時代背景が影響しているのです。生まれたときにはすでにバブルが崩壊しており、それからずっと不景気しか経験しておらず、希望を持ちにくい社会で育ってきました。そのため、常に不安を抱えているので、失敗をおそれるのです」



自分たちと考え方が違うと、どうしても問題児のようにとらえがちですが、育ってきた環境が違えば考え方や価値観が異なるのは当然のこと。指導する側はこの点をしっかり把握しておかないといけませんね。



■「怒る」のではなく「叱る」



――指示されたこと以外もできるようになってもらうためには、どうすればいいでしょうか。



「まずは、なぜこの仕事をやらなくてはいけないのか、その意味を教えることからはじまります。そして、この仕事はどのような役割を担うのかといった、全体像を教えてください。たとえば、いまやっている仕事はA,B,C,Dという4つのパートで構成されていて、そのなかで自分はBという仕事をやっているということを理解してもらいましょう。こうすることによって、仕事の考え方の枠組みが構築されます。



また、注意しなくてはならないことも丁寧に教えてあげてください。そして、どういう状態が『できた』といえるのか、成果水準も明確に示してあげましょう。作業がスタートしたら、手順や成果水準といったチェックポイントを確認してください。最初はどのタイミングで報告をすればいいのかも教えてあげたほうがいいですね。



どんなに丁寧に教えてあげても、失敗することはあるでしょう。しかし、絶対に感情的に怒鳴りちらしてはいけません。萎縮してしまい、指示されたことしかやらないという状況から抜け出せなくなってしまいます。怒るのではなく、叱るのです。



彼らは怒られることをおそれますが、具体的な指導はよろこびます。この世代は勉強熱心ですし、素直な面も持っていますから、丁寧に教えてあげれば吸収してくれるはずです。あなたの成長を願っているから指摘しているんだという意志をきちんと伝えましょう。



もちろん、個人差はありますが、指導にはかなり時間がかかります。長い目でみるという覚悟を持って接してください」



ゆとり社員を指導するときには、叱るスキルも必要なのですね。



■仕事ができたという実体験が成長につながる



――ゆとり社員を教育するポイントを教えてください。



「彼らは努力が保障されない、信じられるものがないという環境で育ってきました。そのため、コツコツと努力を積み重ねていけば、将来はやりたいことができるよ、という指導は有効ではありません。



それよりも、『できる』ことを増やしてあげたほうがいいですね。ひとつでも増えた実感があれば、『がんばれば仕事ができるようになるんだ』と思えるようになりますから。その蓄積が成長につながります。



また、ほめてあげることも重要です。行動や手順に対し、どのような努力がよかったのかを示しながらほめましょう。『課長がほめていたよ』というように、事実を教えてあげることも大切です。彼らは誰かの役に立つことで喜びを覚えますし、それがやる気にもつながります」



多少時間はかかっても、丁寧に指導すれば成長してくれるとのこと。「できない」と決めつけるのではなく、どうすればできるようになるのかを考えながら指導することが求められます。



問題点ばかりが注目されがちなゆとり社員ですが、育ってきた環境や特徴を理解すれば、どのように接したらいいかがわかりますね。指導する側もいっしょに成長するつもりで育ててみてはいかがでしょうか。



取材協力



■インソース



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■ミテモ



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(OFFICE-SANGA 丸部りぃ)