気鋭の経営コンサルタントが今のビジネス・シーンで必須とされる「科目別・勉強本」を徹底ガイドする。この機会に「知識の棚卸し」をしてはいかがだろうか。

■会計

専門家ではなく、普通のビジネスマンが「会計」を学ぶのに一番のお勧めは『稲盛和夫の実学』です。著者が実際に会社を立ち上げ、手探りで経営に取り組むなかでつくり上げた会計の原則が示されています。会計の基本的な仕組みをまとめた本としては、『図解 会計のしくみ』がわかりやすい。財務諸表を読むことに特化するなら、私の『「1秒!」で財務諸表を読む方法』がよいと思います。スループット会計をベースにした『ザ・ゴール』は、ボトルネックの発見と解消の方法を小説仕立てで提示したベストセラーで、やはり一読の価値があります。

本格的に会計を勉強するための本なら、『財務会計講義』がベストです。分厚く、内容も簡単ではないですが、基礎的な会計の知識があれば読めるでしょう。

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『稲盛和夫の実学』
稲盛和夫著、日経ビジネス人文庫、2000
キャッシュフロー経営を知るのに非常にいい本。現日航会長が苦心の末に考え出した会計の真髄がわかる。

『図解 会計のしくみ』
波光史成著、東洋経済新報社、第2版、2004
多くの図を用いてわかりやすく解説されており、会計の初心者も取り組みやすい。

『「1秒!」で財務諸表を読む方法』
小宮一慶著、東洋経済新報社、2008
会計が専門ではない、普通のビジネスマンが財務諸表を理解するのに適している。

『ザ・ゴール』
エリヤフ・ゴールドラット著、ダイヤモンド社、2001
全世界で300万部近く売り上げた。会計分野ではないが、2作目も面白い。

『財務会計講義』
桜井久勝著、中央経済社、第9版、2008
少し難解だが、会計の専門家が会計のことで困ったときに読むほどの定番本。

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■人事・組織

「人事・組織」に関する多くの本の欠点は、人間を十把一絡げにしている点にあります。「こうすればうまくいく」と書いている内容を真に受けて実行してみても、まずうまくいきません。人を動かすためには、人間はそれぞれ異なる価値観を持った存在であるという人間観をベースに、個別に対応していくことが大原則。そのために役に立つのが人間を9つのタイプに分け、どんなときに力を発揮するかを書いた『9つの性格』です。

やはり松下幸之助さんも人を理解することの重要性を常々おっしゃっていました。『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』を読むと、その一端に触れることができます。実践的な内容を求めるなら、荒れた公立中学校の陸上部を日本有数の存在に育成した原田隆史氏の『カリスマ体育教師の常勝教育』が面白いでしょう。どうやって普通の子供をトップアスリートに育て上げたのか。それは人を動かすことに通じます。

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『9つの性格』
鈴木秀子著、PHP文庫、2004
エニアグラムについて解説している本。人を9つのタイプに分類しているが、仕事上でも非常に役立つ。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』
松下幸之助述、松下政経塾編、PHP研究所、2009
著者は人間観を非常に重視した経営者であった。松下政経塾での講演から、あるべきリーダーの姿がわかる。

『カリスマ体育教師の常勝教育』
原田隆史著、日経BP社、2003
荒れきった中学校からなぜ常勝陸上部が立ち上がったのか。目標設定と心の教育を重視した指導法を解説。

『坂の上の雲』
司馬遼太郎著、文春文庫、新装版、1999
日本海海戦で艦橋に立った東郷平八郎の姿からリーダーとしての気概を学びたい。

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■生き方・処世術

私は若い頃から年寄り臭い本を読んできました。30歳の頃に米国留学から帰国し、子供が生まれ、仕事も順調。でも子供ができて生物としての役割を一つ終え、会社は自分がいなくても回っていく。では自分は何のために生きているのか。そう悩むようになり、「生き方・処世術」分野の本を読み漁り始めたのです。

私自身の座右の書になっているのは『道をひらく』で、自宅の勉強机にもう20年以上置いてあります。どういう生き方をすればいいのかと迷ったとき、手を伸ばすのです。若い頃は『菜根譚』や『論語の活学』をよく読みました。人間は信念を持たなければ経営などできませんが、自分勝手な信念では周囲が迷惑するだけです。では何が正しい信念か。何千年も読み継がれてきた書物には、何らかの真理があるはずです。こうした古典を読み、自分のバックボーンにしていくことは非常に大切な営みだと思います。

師範学校の生徒にどう生きるべきかを説いた『修身教授録』も、心に沁みる素晴らしい本です。世界中でベストセラーになったデール・カーネギーの『道は開ける』も生き方の本質を突いており、お勧めできます。

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『道をひらく』
松下幸之助著、PHP文庫、1968
小宮氏の座右の書。ビジネスマン以前に人間としてどう生きるかのヒントが。

『菜根譚』
洪自誠著、ディスカヴァー21、2007
中国・明代に書かれた処世訓。日常をどう生きるべきかの示唆が示されている。

『論語の活学』
安岡正篤著、プレジデント社、1987
東洋哲学の大家が書いた、論語に学ぶ人間の普遍的なバックボーンについての本。

『修身教授録』
森信三著、致知出版社、復刻再編集版、2001
大阪・天王寺師範学校の教師であった著者が、生徒たちに生き方を教えた本。

『道は開ける』
デール・カーネギー著、創元社、新装版、1999
人間の本質を捉えた名著。同じ著者の『人を動かす』とセットで読みたい。

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(小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 構成=宮内 健)