千葉県鴨川市郷土資料館で大漁祝いの祝い着「万祝」展開催中!

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千葉県鴨川市郷土資料館では、収蔵資料展「万祝(まいわい)〜海の男の晴れ着〜」を開催中。

期間は9月9日(日)まで。

鴨川市郷土資料館で展示中の「万祝」は、江戸時代の房総半島の漁村が発祥と言われる漁師の晴れ着で、和服の一種。

大漁の祝いに網主や船主が網子や船子たちに反物を配り、それをおそろいの着物に仕立てて着て、神社仏閣にお参りに行ったのが始まりとされている。

そもそも大漁時の祝宴を「まんいわい」と言い、次第に祝着そのものを「まいわい」と呼ぶようになったと言われている。

この房総半島の風習が、青森県から静岡県にかけての太平洋沿岸地域に広がった。

その呼び名は「まいわい」が一般的だが、東北地方の一部では「長バンテン」、「大漁バンテン」、「カンバン」とも呼ばれていた。

また、「万祝」の大漁祝いは、普通の大漁とけた外れの大漁をさす。

普通の大漁の場合は手ぬぐいを出し、けた外れの大漁の時だけに作ったのが「万祝」だ。

「万祝」の絵柄は、背型と腰型に分けられ、背型には多くの場合鶴を背景にして、注文した家や船印、船名が描かれる。

すそ模様に当たる腰型には、松竹梅・鶴亀・七福神などの縁起物や、浦島太郎・桃太郎などの昔話を題材にしたもの、マグロ・カツオ・クジラなど漁獲物をあらわすものなど、バラエティーに富んでいるのが特徴だ。

その鮮やかさは「漁民民芸の結晶」と呼ぶ人もいるほどで、生地は、通常は木綿が使われるが、まれに絹が使われた事例もみられる。

この染色技法は、現在でも各地に継承されて、民芸品などに活かされている。

「万祝」の注文が1回に20〜100反くらいあったというほどの大ブームもあった。

房総地方では、一般的に紺屋は生活着からあつらえ品の「万祝」まであらゆる品の製造販売を行う「万(よろず)染物店」が普通だったが、「万祝」の需要が高まったころは、「万祝」中心の生産体制をとる店が現れたほど。

しかし、その後、需要がなくなり、多くが「万染物店」に戻るか、廃業・商売替えをするようになり、現在では鴨川市内にわずか2軒を残すだけとなっている。

和服の常として、古くなったものはほどいて仕立て直したり、ぼろとして消費されたため、古い「万祝」はほとんど現存していない。

今回の展示では、郷土資料館に収蔵されている「万祝」9点、「型紙」8セット、万祝を着た当時の写真5点が紹介されている。

海の男の粋な晴れ姿を鑑賞できる貴重なチャンスだ。