カラリと揚げた鶏肉を甘酢ダレに漬け、タルタルソースをたっぷりかけて食す。

チキン南蛮は今や全国の食卓でもおなじみの料理だ。

その発祥の地がは宮崎県であることは知られているが、当然ながらある時を境に県下全域で一斉に食べられ始めたのではない。

そのふるさとを探っていく内に分かったのは、意外にも日本有数の企業城下町の生まれということだった。

チキン南蛮といえばココ! といわれるほど、よく知られているレストラン「おぐら」。

その本店が宮崎市にあるため、チキン南蛮のルーツはてっきり宮崎市だと思っていた。

ところが、「チキン南蛮発祥のまち」としてPR活動をしている街が他にあるという。

宮崎市から北に向かって車で走ること2時間余りのところに位置する、宮崎県北部の中心的な街・延岡市である。

早速まちおこしグループ「延岡発祥チキン南蛮党」を訪ねてみた。

このグループは2009年に発足。

「延岡を元気にしたい」とチキン南蛮を愛する市民が市や観光協会の支援のもと、チキン南蛮を出すお店のマップ作成やキャラクター作り、チキン南蛮食べ歩きとまち歩きをセットにした「チキなんウォーク」の開催などを行っているという。

また、「B-1グランプリ」を主催する愛Bリーグにも加盟するなど、活発に活動をしている。

話を聞いてみると、チキン南蛮は昭和30年代にこの街で人気を誇っていた「洋食屋ロンドン」のまかないが原型だと分かった。

さらに面白いことに、これをもとに甘酢ダレで食べるタイプと、おなじみのタルタルソースで食べるタイプとの2系統の味が生まれたという。

甘酢ダレは今も延岡市内で看板をあげる「お食事の店 直ちゃん」がルーツ。

先代の故・後藤直さんが試行錯誤の末に作り上げ、2代目がその味をかたくなに守っている。

かたやタルタルソースで食べるのは「おぐら」の創始者である故・甲斐義光さんによるアイデアだ。

マヨネーズ作りから始まるタルタルソースはオリジナルの味で、おぐらではサラダなどを盛り合わせた典型的な洋食スタイルで提供していた。

では、なぜチキン南蛮が全国区になったのか。

その鍵はおそらくおぐらが握っているようだ。

おぐらは昭和40年代の宮崎観光ブームもあって店をチェーン展開した。

支店が増えるとともに、タルタルソース味は宮崎県民に支持されて県下に浸透。

それがいつしか観光客の口コミにのって全国に広まったと考えられる。

2大ルーツの味とはどんなものか。

まずは直ちゃんを訪ねてみた。

店内に入ると、カウンターが目に飛び込んできた。

その前に並ぶ緑色の丸イスがレトロな雰囲気を醸している。

オーダーして待つことしばし。

出てきたチキン南蛮はお皿にデンとのり、かなりの迫力。

タルタルソースがかかっていない分、とてもシンプルな印象だ。

揚げものでありながらさっぱりした味わいで、ギトギトした油っぽさは感じられない。

お店の方によると、宮崎県産の鶏のムネ肉をサックリ揚げ、秘伝のタレにくぐらせているという。

かんきつ系の香り漂うタレが食欲をそそる。

あと口もさわやかなだけに酒の肴にもぴったりで、左党に好まれているそうだ。

一方、おぐらはどうだろうか。

昭和46年開店の大瀬店にうかがう。

こちらは明るい雰囲気のファミリーレストランといった造りだ。

こちらのチキン南蛮も洋食スタイルで提供。

キャベツに寄り添うようにチキンが盛りつけられ、その前面にタルタルソースが広がる。

背筋を伸ばしていただきたくなるような、洗練された装いだ。

ムネ肉は食べやすいように数ピースに分けて揚げてある。

彩りを添えるタルタルソースはやや甘めでまろやかな味。

ピクルスを使わないのが特徴で、子どもにも好評だという。

延岡発祥チキン南蛮党によると、市内ではこの2店を筆頭に50店ほどがチキン南蛮を提供しているとか。

どの店も高いレベルで味を競っており、南蛮にする際のタレとタルタルソースに店の個性が表れるという。

これは泊まりがけで店巡りをしてみる価値がありそうだ。

●informationお食事の店 直ちゃん住所:宮崎県延岡市栄町7-12交通:JR延岡駅前を左折、徒歩約3分営業時間:11:00〜14:00、17:00〜20:00定休日:火曜日(月曜日は昼のみ)席数:16席駐車場:2台