テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より

閉店間際のスーパーの店頭でスピードクジをやっていた。クジの横に立つ若いお兄さんが僕を手招きで呼んでいる。近づいていくと笑顔でクジの箱を差し出してきた。例えばスーパーで1000円以上の買い物をしているとか、抽選券が5枚以上必要だとか、そういう条件は一切必要なく、引きたければ引いて良いというクジらしい。もし商品が当たったら、友人知人に自慢してもらってその商品の良さを伝えてもらえればそれで充分です、と言っている。1等はハイビジョン液晶テレビで、当選人数は2名。あと1枠残っているという。

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「朝からずっとここに立ってるので、早く当ててもらって帰りたいんですよ」

とお兄さんが言った。

これは当たる。直感的にそう思った。

きっと、今日中に1等を2名出さないといけないノルマのような物があるのだろう。スーパーももう終わってしまうし、このまま1等の1枠を残したまま帰る訳にはいかないのだ。絶対に当たる状態で、僕にクジを引かせようとしているに違いない。

実は最近、もう1台テレビが欲しいと思っていた。オリンピック期間中に作業が深夜までおよび、北島選手の決勝をテレビで見ることが出来なかったのだ。仕方なくラジオで中継を聞いたが、今ひとつ盛り上がることが出来なかった。


僕はテレビが欲しい。
お兄さんは当ててもらって帰りたい。

ここで僕がクジを引けば、ウインウインの関係が成り立つのだ。

01-2

クジを引く前からハイビジョン液晶テレビの置き場所を考えたりしていたが、このクジには一点だけ気にかかることがあった。

それは2等の商品である。

02

なんと、ウォーターサーバーなのだ。

前回、事務所に導入したウォーターサーバーの水が余って困っていることについて書いた(水と戦う夏 2012)。

あれから約2週間、自分に課した水ノルマも既にこなせていない。そんな状態の中、もしここでウォーターサーバーが当たってしまったら大変なことになる。

念のため、お兄さんに2等について確認すると、

「こっちもあと1枠残ってますよ!」

と答えが返ってきた。

1等と2等、どちらも残り1枠だ。
引いて大丈夫なのか?

もし、2等が当たってしまったら、ウインウインの関係ではなくなる。
お兄さんはどっちを当てさせたいのか? 

もちろん、そんなことを聞けるはずもない。そもそも、確実に当たるクジ、と僕が勝手に思っているだけかもしれないのだ。本当はガチンコ勝負のスピードクジ、というバージョンも考えられる。

引くのをためらっていると、お兄さんがクジの箱をグイグイ僕の方に寄せてくる。

03

大丈夫だ。

この前も、カラオケボックスのスピードクジを引いて、1等の「ディズニーランドペアチケット」を当てている。今の僕にはクジ運があるのだ。

ハイビジョン液晶テレビが当たることをイメージしながら、クジを1枚引いてお兄さんに渡した。

さぁ、テレビか? テレビが来るのか?


お兄さんがクジを開く。

04

「わぁ!おめでとうございます!」

お兄さんが弾んだ声で僕に言った。クジには2等と書いてある。

ウォーターサーバーが当たってしまったのだ。


05

手品の世界にはマジシャンズセレクトという言葉があるという。自分で選択しているはずなのに、実はマジシャンに導かれて選ばされているというテクニック。

あのお兄さんがマジシャンだったのかどうかは分からない。

とにかく、来週我が家にウォーターサーバーが届きます。

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この記事の元ブログ: マジシャンズセレクト?