知らないと落ちこぼれる−「科目別・勉強本」ガイド【1】

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若い時期の読書としては、まず自分の仕事に関わる本をしっかり読むべきだと思います。なぜなら、目の前の仕事で頭角を現さない限り、次のステップへ進めないのですから。

出世していくにつれ経営や経済に関する知識が必要になってきますが、これらは一朝一夕に身につくものではありません。やはり若い頃から基本的なフレームワークを学び続ける努力が必要です。

そして偉い立場になればなるほど、“技”の部分は部下の人たちがやってくれるようになり、自分は重要な判断や意思決定を担うことになります。そのときに必要になるのが人間観や人生観ですが、これも一朝一夕では身につきません。結局、できるだけ早い時期から自分の仕事に関することはもちろん、経営や経済、人生に関する本を幅広く読む必要があります。このような考え方に基づいて、夏休みの読書にお勧めの本をご紹介していきましょう。

■経済

「経済」を勉強したいなら、まず経済学の基本的なフレームワークを身につけることが大切です。日々起こる経済現象を追いかけるだけでは何も理解できません。

私の知る限り、この分野でもっともわかりやすいのが『東大生が書いたやさしい経済の教科書』です。マクロ経済の基本的な枠組みが簡単に読めるようになっています。金融やお金の世界がどういうものかを知るには『バフェットの教訓』がお勧めです。本書は世界一の投資家であるウォーレン・バフェットの言葉がまとめられています。

数字の見方を身につけたいのなら、私の『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』が一番わかりやすいでしょう。数字を読むための7つの基本、5つの習慣、そして陥りがちな罠にわけて書いており、本当に役立つ本と自負しています。

難しい本を読みたいならシュンペーターとフィッシャーという両経済学者の考え方の違いを描き、吉野作造賞を受賞した『経済論戦は甦る』がいいと思います。同じ著者の近刊『中央銀行は闘う』も素晴らしい内容です。金融をじっくり勉強するなら、白川方明・日銀総裁が書いた『現代の金融政策』です。私は今でもこの本を机上に置いて、わからないことがあると読み返しています。

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『東大生が書いたやさしい経済の教科書』
東京大学赤門Economist著、インデックスコミュニケーションズ、2005
タイトルの通り、東大経済学部の学生12人が書いた。くだけた体裁で読みやすい。

『バフェットの教訓』
メアリー・バフェットほか著、徳間書店、2008
ウォーレン・バフェットを身近に見てきた人間が、その考え方の要諦をまとめた。

『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』
小宮一慶著、ディスカヴァー21、2008
豊富な事例とともに数字の見方を指南してくれる。

『経済論戦は甦る』
竹森俊平著、日経ビジネス人文庫、2007
現在の経済状況を考える示唆をも与えてくれる名著。

『現代の金融政策』
白川方明著、日本経済新聞出版社、2008
日銀を率いる白川総裁の考え方を知っておくことは金融政策を占ううえで重要。

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■マーケティング

「マーケティング」の内容は多岐にわたります。その中でも「お客様満足」は、実際に仕事をしていくうえで重要なポイントになります。

アメリカのカーディーラーのノウハウについて書かれた『一回のお客を一生の顧客にする法』は、顧客満足を得るための参考書としてベストセラーになった本です。一度商品を購入してくれたお客様に、いかにして一生のお客様になってもらうか。これをリレーションシップマーケティングといいますが、その根幹を教えてくれる良書です。全国のホンダディーラーの中で13年連続顧客満足度ナンバーワンに輝いた、ホンダカーズ中央神奈川のトップが自ら執筆した『サービスの底力!』も、お客様を大切にするとはどういうことかを教えてくれます。

マーケティングとは何かについて知りたいなら、『村田昭治のマーケティング・ハート』。夏期集中講座の講義録をまとめたもので、マーケティングの真髄が伝わってきます。

より根本的、体系的にマーケティングを学ぶには、斯界の権威であるコトラーの『マーケティング・マネジメント』がよいでしょう。私がビジネススクールで学んでいた26年前から現在に至るまで、マーケティングの教科書として使われ続けている定番です。

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『一回のお客を一生の顧客にする法』
カール・スウェル、ポール・B・ブラウン著、ダイヤモンド社、新装版、2004
当時のアメリカでは一回買ってくれた顧客は生涯で約3500万円買ってくれるといわれていた。

『サービスの底力!』
相澤賢二著、PHP研究所、2005
ある意味ヒューマンリソースの本でもある。この著者の会社では、従業員がみないきいきと働いているのだ。

『村田昭治のマーケティング・ハート』
村田昭治著、プレジデント社、1992
マーケティングの根本は何なのかを教えてくれる良書。

『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』
フィリップ・コトラーほか著、ピアソンエデュケーション、第12版、2008
30年近く前から読みつがれる教科書のなかの教科書。現在でも版を重ねている。

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■経営

次の「経営」です。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の販売部数が100万部を超え、一大ブームになっています。ドラッカーの核になる部分をわかりやすく解説したよい本ですが、読んで「面白かった!」で終わらせてしまっては何の役にも立ちません。こういう本を入り口に、さらに興味の対象を深めていくことが必要です。ドラッカーの考えを深く知るには『抄訳マネジメント』がお勧めです。腰を据え、じっくり10日くらい時間をかけて読むのなら『マネジメント(上・下)』もあります。

経営においてもっとも重要なのはビジョン・理念です。この原則を示した『ビジョナリーカンパニー』は読んでおくべき一冊です。スターリングラード攻防戦やマッカーサーの仁川上陸作戦など、戦争における戦略を扱った『戦略の本質』は、ビジネスにも通じる戦略の勘所を突いた面白さがあります。また、企業のすべての枠組みは会社法によって規定されていますが、きちんと押さえているビジネスマンは極めて少ない。『会社法入門』には、一度目を通しておくべきです。

たくさん経営者を見てきて思うのは、お金儲けだけを目的にやっている人は必ずどこかでつまずくということ。本物の経営者は経営に対するしっかりした考え方と、勘定を合わせる能力を持ち合わせています。渋沢栄一の『論語と算盤』は、本物の経営者が持つこのスタンスを学ぶのに役立つ本です。

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『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
岩崎夏海著、ダイヤモンド社、2009
ストーリーを通じて、ドラッカーの考え方のコアな部分に触れることができる。

『抄訳マネジメント』
ピーター・F・ドラッカー著、ダイヤモンド社、1975
あまり時間がかけられないなら、エッセンスが詰まったこちらを選ぶとよい。

『ビジョナリーカンパニー(1〜3)』
J・C・コリンズ著、日経BP社、1995/2001/2010
最新作3では、どういうときに会社が失敗するのかが描かれている。

『戦略の本質』
野中郁次郎ほか著、日経ビジネス人文庫、2008
直接に経営を扱った本ではないが、ビジネスの本質に通ずるものが驚くほどある。

『論語と算盤』
渋沢栄一著、ちくま新書、2010
500社近い会社をつくり、一橋大学を創設した大実業家による、「本物」の教え。

『マネジメント(上・下)』
ピーター・F・ドラッカー著、ダイヤモンド社、1993
ゆっくり時間をかけられるなら、「知の巨人」の代表的な著作に取り組みたい。

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(小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 構成=宮内 健)