「情報面では世界一」と自負する眞鍋監督が言う通り、日本は完全分業制でデータを詳細に集めている。同じソフトを使っていてもデータの入力と解析は人間の仕事だ。専属アナリストの渡辺啓太氏は特にデータの映像化に力を入れ、蓄積した映像から必要なポイントだけを繰り返し見せることにより選手のデータ理解を深めている。データという数値よりもヴィジュアルの方が選手にアピールするためだ。このデータ分析チームはこの大会も大活躍で選手のためにモチベーションアップのための映像もつくるなどほぼ不眠不休の活躍で銅メダルに貢献した。

 IDは当然、自チームの選手にも冷徹とも思える分析をする。弱点を浮き彫りにし、何が出来て何が出来ないかを明確にしていく。それは一見非情なものではあるが、選手達がそれをしっかりと受け止められているのは、世界選手権でアメリカを破り、W杯でブラジルに勝つという実績の積み重ねがあるからだろう。日本の優位である、サーブ、レシーブ、そしてミスの少なさをストロングポイントとして自覚し、なおかつ情報戦で優位に立てれば身体能力の差をカバー出来るという彼女達の努力がこの五輪では実を結んだことになる。

 しかし一方で眞鍋監督はロンドンでの記者会見で「これから日本が勝つには大きな選手が必要だと思う。」とはっきりと口にしている。IDバレーだけで勝ち抜けるほど世界は甘くないと指揮官自身が認めているのだ。準決勝のブラジル戦、眞鍋監督は「ブロックにやられた」と答え、逆に今の日本のブロックでは長身選手には通用しないことを認めている。データを分析すればするほど高い打点のスパイクに対応できる大きい選手が入ればと指揮官は実感したに違いない。

 もちろん銅メダルメンバーに不満があったわけではない。たとえば現在のエース木村沙織はこの五輪でスパイクだけでなくサーブレシーブの安定感でもチームに大きく貢献した。また彼女は対応力も高くエースタイプとしては器用な選手だ。このような選手の集団に身長のある選手が加われば、金メダルが・・と眞鍋監督は言いたかったに違いない。

 引退が噂される竹下の後継者も大きな問題だ。彼女の存在は日本にとって余りにも大きく、有力な後継者はまだいない。それを考えるとリオまでの4年間が潤沢な時間というわけにはいかないようだ。28年ぶりのメダルを獲得した日本女子バレーの新たな挑戦はすでに始まっていると言っていい。(おわり 編集担当:田村和彦)