暑い日が続く8月中旬。扇風機やうちわなどで体温を下げるのもいいですが、たまには内側から涼んでみませんか? それには、小野不由美さんの新作が良さそうです。

 『ゴーストハント』全7巻の復刊を皮切りに、780万部超えの代表作『十二国記』の完全版を刊行スタートさせた作家の小野不由美さん。そんな彼女が新作を2冊同時に発表しました。百物語怪談本『鬼談百景』と長編怪談『残穢』の2作品です。どちらも私たちに恐怖することの楽しさを教えてくれる作品だといえます。

 特に『鬼談百景』は、一話完結の怪談集で、その短さのなかに恐怖が凝縮されています。同書を作り始めるきっかけは、1990年代にさかのぼります。小野さんは、とある「あとがき」で、読者からの恐怖体験を募集。そして、その後、日本初の怪談専門誌『幽』で、読者の恐怖体験をベースとした作品を発表するのです。京極夏彦、有栖川有栖、綾辻行人など豪華執筆陣のなかでも目立つ存在だった小野不由美作品。同書は、その連載『鬼談草紙』を単行本化したものです。


 学校に立つ男女の生徒を象った銅像。けれど、その指先は欠けている。人差指の先端が切り落とされているのだ。『未来へ』。

 中学校の美術室にある白いキャンバス。何ども処分しようとしたが、そのたびに行方不明となり、忘れたころにいつの間にか棚に戻っている。『白い画布』。

 Yさんは今住んでいる部屋があまり好きになれない。マンション自体、どことなく暗く、空気が澱んだ感じがする。夜中などに、妙な物音が耳につくことがある。それはさーっと何かが物を撫でる音だ。『残穢』(新潮社)ともリンクする『お気に入り』。


 どれも読み終えた後に、スッと寒気が襲うものばかり。涼しくなりたい時に一話ずつ読みすすめていくのも良いでしょう。くれぐれも、夜中に同書を開かないように......。



『鬼談百景 (幽BOOKS)』
 著者:小野不由美
 出版社:メディアファクトリー
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