「自己啓発書ガイド」の登場 -2-

[前回のあらすじ]「極端な事例」として自己啓発書を見ることで、今の世の中を読み解くことができる。これがこの連載のコンセプトだ。今週は初回のテーマ「自己啓発書ガイド」の現状と系譜を追う。

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■TOPIC-2 「自己啓発書ガイド」のガイド

なぜ「自己啓発書ガイド」(以下「ガイド」)が初回なのか、とお思いの方も少なくないでしょう。今の売れ筋はもっと他にあるじゃないか、と。実際そうです。しかしこの「ガイド」は、自己啓発という営みが成り立っている社会的文脈を理解するにあたって、まずとりあげるべき動向だと私は考えています。

具体的に「ガイド」の主なものをとりあげてみましょう。この原稿を書いている2012年6月現在、書店のビジネス書新刊棚には、『土井英司の「超」ビジネス書講義』(ディスカヴァートゥエンティワン、2012)という本がしばしば平積みで並んでいます。ごく簡単に紹介をしておくと、出版マーケティングコンサルタントである土井さんは年間1000冊(!)のビジネス書を読むというその「目利き」を活かして、メールマガジン『ビジネスブックマラソン』の配信や出版プロデュース等を行っている方です。この土井さんが、これまでとこれからのビジネス書のトレンド(「時代の潮目」)を解説してくれるとともに、今日必要とされるビジネススキルを高めるためのおすすめ本をこれでもかと紹介してくれるのが同書です。

土井さんは既に2005年に『成功読書術』(ゴマブックス)で、自己啓発書の「名著」の紹介を手がけていましたが、近年、このような「ガイド」が、土井さんだけでなく幾人かの手によって手がけられるようになっています。代表的な人物としては、作家の水野俊哉さんを挙げることができるでしょう。自らの事業が失敗したのち彼は、自己啓発書を素材にそのガイドブック・評論書を出す著述業に転身し、『成功本50冊「勝ち抜け」案内』(光文社、2008)、『成功本51冊もっと「勝ち抜け」案内』(光文社、2008)、『「ビジネス書」のトリセツ』(徳間書店、2009)といった自己啓発書ガイド、そしてビジネス書作家とその著作の批評・採点を行った『ビジネス本作家の値打ち』(扶桑社、2010)といった著作を次々と手がけています。

『土井英司の「超」ビジネス書講義』
土井英司著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2012年

『成功読書術』
土井英司著/ゴマブックス/2005年

『成功本50冊「勝ち抜け」案内』
水野俊哉著/光文社/2008年

『成功本51冊もっと「勝ち抜け」案内』
水野俊哉著/光文社/2008年

『「ビジネス書」のトリセツ』
水野俊哉著/徳間書店/2009年

『ビジネス本作家の値打ち』
水野俊哉著/扶桑社/2010年

こういった系列の本としては他にも、グローバルタスクフォース『あらすじで読む 世界のビジネス名著』(総合法令出版、2004)、藤井孝一『成功するためのビジネス書100冊』(明日香出版社、2004)、 T・バトラー=ボードン『世界の自己啓発50の名著 エッセンスを読む』(ディスカヴァートゥエンティワン、2005)、神足裕司『超売れ筋ビジネス書101冊 5分で身につく!』(朝日新聞社、2007)、中野明『必須ビジネス書101冊 今日から即使える 知らないと恥をかく』(朝日新聞出版、2011)、三輪裕範『自己啓発の名著30』(ちくま新書、2011)などをざっと挙げることができます。マンガ仕立てで解説する、山田玲子『世界一わかりやすい 4コマビジネス書ガイド』(ディスカヴァートゥエンティワン、2010)というパターンもあります。

また、2010年には「日本初のビジネス書アワード」として、専門委員と一般からの投票にもとづく「ビジネス書大賞」が設けられ、今のところ第3回まで継続されています(ビジネス書大賞実行委員会『このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011』ディスカヴァートゥエンティワン、2011など)。

『あらすじで読む世界のビジネス名著』
グローバルタスクフォース/総合法令出版/2004年

『成功するためのビジネス書100冊』
藤井孝一著/明日香出版社/2004年

『世界の自己啓発50の名著 エッセンスを読む』
トム・バトラー=ボードン著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2005年

『超売れ筋ビジネス書101冊-5分で身につく!』
神足裕司著/朝日新聞社/2007年

『必須ビジネス書101冊-今日から即使える 知らないと恥をかく』
中野 明著/朝日新聞出版/2011年

『自己啓発の名著30』
三輪裕範著/ちくま新書/2011年

『世界一わかりやすい 4コマビジネス書ガイド』
山田玲子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2010年

『このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011』
ビジネス書大賞2011実行委員会/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2011年

■「大人物」と「ベストセラー」のガイド

自己啓発書をガイドしようという動向は、今述べてきたような包括的なガイドのみにとどまりません。一人の書き手に焦点を絞ったガイドや、さらにその中でも有名な著作を解説しようとする本も近年刊行が続いています。たとえば皆さんご存じのピーター・ドラッカーについては、その思想の全容を解説する本、各著作のダイジェストを掲載する本、そして岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社、2009)のような、一つの著作をより平易に活用しようという本がそれぞれ数多刊行されています。

他にも、書き手についてのガイドにはフィリップ・コトラーのマーケティング論の解説本等、著作のガイドには「現代の古典」ともいわれるスティーブン・コヴィー『7つの習慣 成功には原則があった!』(キングベアー出版、1996)の解説本等、色々例を挙げていくことができます。連載元のプレジデント社でも、大前研一『企業参謀』の解説本が出ました。

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
岩崎夏海著/ダイヤモンド社/2009年

『7つの習慣 成功には原則があった!』
スティーブン・R. コヴィー著/キングベアー出版/2011年

このように、「古典」の解説本から、あらゆる自己啓発書を対象にしたブックガイドまで、さまざまなタイプの「ガイド」が、近年散見されるようになってきているのです。では、このような動向から、何を読み解くことができるでしょうか。

次週は《TOPIC-3 「自己啓発書を正しくたくさん読む私」の登場》です。

(牧野 智和=文)