非常に大きな流れとして、米国は1980年代に経常赤字国となりました。

つまり、海外からの借金に依存しなければ、国の経済が回っていかないという状況です。

効果のない為替介入であれば、これまでのドル買い介入は単なる米国のファイナンス、つまり日本がドルを買い、米国債を購入することで、米国が抱える借金の穴埋めをしただけということに結果的になってしまいます。

余談ではありますが、海外では為替介入に対して政府は非常に慎重であると言われております。

こうした為替差損は、国民の資産に損を発生させたということで、議会から厳しい追及を受けるためです。

さて、話は元に戻しまして、政府の借金という点についてですが、これまでの為替介入では財務省の公表データを見る限り米ドル買いが9割以上となっております。

政府は買った米ドルをそのまま外貨預金として金融機関に預けるか、米国債を購入するか、という選択肢があります。

つまり、外国為替資金証券の裏側にはドルという資産が存在していることになります。

そこで2つの考え方ができるかと思います。

1つはこの117兆円に関してはドル資産の裏付けがある以上、わざわざ政府の借金に組み込む必要はないという考え方です。

その一方で、1998年を最後にドル売り介入は実施されていないという事実を踏まえますと、保有する米国債を安易に売れないのではないか、という懸念もあります。

自分の資産を好きな時に使えないというのは何とも理不尽な話ですが、そうなるとこれは負債として計上した方が無難ということになります。

現在、政府の債務1000兆円にはこの累積された政府短期証券の数字を含んでいますので、この1000兆円という数字を債務として使うのであれば、ドル買い介入をして米国に渡した資金は日本に返ってこないお金として勘定しているということになります。

米国が財政的に困った時には日本が資金を出して助ける、ということであれば、ドル買い介入は日米同盟を維持していくためには必要ということになります。

何も為替介入だけではありません。

震災直後の被災地支援の遅れが取り沙汰される一方で、欧州債務危機に揺れる世界経済の安定化をはかるために、日本政府が欧州金融安定化基金(EFSF)に資金を拠出したという経緯もございます。

また、欧州市場の不安から韓国では資金調達難に見舞われそうになり、日本の財務省と日銀がスワップ協定を発動して資金を融通したということもございました。

全ては日本に戻ってくる資金ということを前提に拠出しているわけですが、国際協力の一環であるとすれば納得もできます。

ただし、ポイントは資金的な余裕がなければ他国や国際機関に資金提供や融通などはできないということです。

日本は財政破綻から遠いからこそ、こうした国際貢献も可能なのではないでしょうか。

一方、本当に財政危機が差し迫っているのであれば、為替介入などして政府の借金を増やしている場合ではありません。

他国に資金を融通している場合ではないと思われます。

国民負担を求める前に、これまで貯めた117兆円相当の外貨の一部を取り崩して、政府債務を減らすという方法もあります。

為替介入を筆頭に国際貢献の数々が、日本が財政破綻からはほど遠いことを示している、という結論に至るのでございます。

これまで民主党政権が為替介入を実施したのは8日間だけです。

国民に対しては財政再建を訴え増税を叫びながら、増税分の税収見込みを上回る金額をわずか8日間、実質24時間もかからないうちに海外へと大盤振る舞いをするのであれば、いくら財政再建を訴えようとも健全化するはずもありません。

24年3月末の政府短期証券の残高は117兆円となっているのに対し、見込では199兆円と82兆円も上増しとなって計算されています。

ほとんどが外国為替資金証券です。

80兆円余りも本年で為替介入を実施する予定なのだというつもりはありませんが、こうした上マシされた数字を、そして資産の裏付けのある債務を単純に政府の借金として取り上げるのは正確さに欠くのではないでしょうか。

政府短期証券の扱いをどうするのか、政府債務に計上するならば効果の限定的な為替介入を実施する意義はどこにあるのか、増税の前に考えるべき課題と思われます。