【松岡賢治のマネーtab】この夏、金融市場に見逃せない重大ニュースが続々

 いつもはお金に関する実用的な情報を紹介しているが、時期もお盆ということで、通常パターンとは違って、金融市場の動向についてコメントしておきたい。というのも、7月末から8月の第1週にかけて、金融市場のターニングポイントになりそうな重要な事実がいくつも発覚しているからだ。

 まずは、米国の不動産市場について。7月31日に発表された5月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数において、主要20都市圏の指数が前月比で0.9%上昇した。この上昇は、4か月連続で住宅市場の回復に弾みがついていることが示されている。この「S&P/ケース・シラー住宅価格指数」というのは、米国の不動産価格の推移を反映しているとされ、住宅関連指標の中でも最も注目されている。5月の前年比の数字は、−0.7%と20か月連続の下落となったものの、下落幅は5か月連続で縮小しており、もう少しで前年比プラスと水面上に顔を出すところまできている。

 また、連邦住宅金融局(FHFA)が発表している5月の月例住宅価格指数も、前月比+0.8%と事前の市場予想(0.5%)を上回り、3か月連続で高い伸び率を記録している。こちらは、前年比で+3.7%と、4か月連続で上昇しており、プラス幅はリーマン・ショック前の06年9月以来、約5年半ぶりの大きさとなっている。さらに、米商務省発表の6月の住宅着工件数は、前月比6.9%増の年率76万戸と、08年10月以来約3年ぶりの高水準に達した。つまり、米国の不動産市場は底打ちから回復に転じようとしている最中なのだ。

 ではなぜ、これがエポックメイキングなのか? そもそも「サブプライム・ショック」「リーマン・ショック」は、米国の不動産市場の下落に端を発したもの。不動産価格の下落が止まらないことが、これまで米国経済および世界経済がなかなか立ち直らない要因となっているのだ。その問題の核心部分が大きく改善しつつある今、米国経済は大きな転換期に差し掛かっているといえる。

 こうした兆候を捉え、すでに米国の投資家たちは動き出している。米国の大手機関投資家やヘッジファンドの動向に詳しい、ホリコキャピタルマネジメントの堀古英司氏によると、ウォーレン・バフェット氏をはじめとする著名投資家たちは、すでに不動産市場に大規模な資金を振り向けているという(@「モーニングサテライト」)。

 すでに、今年の年頭に、大手ヘッジファンドが米国のREITを買っている、という情報が伝えられていた。REITとは、不動産に投資をする投資信託(ファンド)のことで、カクストン・アソシエーツ、SACキャピタル・アドバイザーズ、ブラックストーン・グループといった大手どころが、不動産投資を行なっている。また、ゴールドマン・サックスも、年初に強気のレポートを出し、「今年の住宅価格は3%下落した後、上昇を始める可能性がある」と予想していたのだが、このシナリオが現状、かなりいい線を行っている。

 ここ数年、米不動産市場は、回復期待が浮上しては消えていたのだが、今回は本物になる可能性が強いように思う。統計指標が改善し、それを見た投資家の資金がマーケットに流入、それがさらなる指標の改善につながるという好循環が始まっているからだ。

■「銀行の出資規制緩和」で日本の金融行政も転換期に

 翻って、日本。こちらにも、注目すべきニュースが飛び出している。8月2日の日本経済新聞の1面トップに掲載された「銀行の出資規制緩和」という記事だ。従来の銀行の事業会社への出資比率上限は5%だったのだが、これを10〜20%に引き上げようという金融庁の案である。

 まだ、観測記事の域を出ず、2014年度までの実施を目指すという内容なだけに、大きくは注目されていないが、記事の印象からおそらく信憑性、そして実現する確度はかなり高いと思われる。これが実現されれば、株式市場を含め日本の金融・資本市場は、大きく変わることになるはずだ。そうなるとこれは事実上、日本の金融行政の大転換を意味するだろう。

 為替市場や株式市場および債券市場は、いまだ日米欧の金融当局による金融緩和の動向を最大の注目材料とし、一喜一憂している。しかし、水面下では、金融市場を取り巻く状況は変わりつつある。金融緩和の有無やスタンスは、もはや、マイナーな問題に転じつつあるといってよい。おそらく、米国の『QE3』(量的金融緩和第3弾)はないだろう。
 今後、日米の金融市場には、静かだが確実な変化が訪れると見ている。当面は、米国の不動産市場に注目してほしい。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。

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