ワタミに富士通、ローソンストア100… “ブラック企業大賞”授賞式!

写真拡大


 パワハラ、セクハラ、退職強要、不当解雇、派遣切り、過労死……こうした違法企業は後を絶たない。そんな中、「ブラック企業大賞2012授賞式」が東京都港区内の田町交通ビルで開催された。主催はブラック企業大賞企画委員会。主催者によると、このような授賞式の試みは今回が初という。現地へ向かった。

 会場は30〜40代とみられる男女を中心に約80人が参加。「ニコニコ生放送」も来ている。主催者によると、全国で約3万人が授賞式の様子をニコ生で視聴しているという。また、最前列の席は、ノミネートされたブラック企業10社の招待席となっていたが、1人も来ていない。

 こうした中で受賞式は始まった。まず、主催者の一人で弁護士の佐々木亮氏がブラック企業の定義について「簡単にいえば法があっても法を守らない。法をわざと知らないふりをする。労働者の命、健康、生活を配慮しない。こういう企業をブラック企業と言います」と説明。

 その後、主催者側がノミネート企業10社を紹介した。まず居酒屋チェーン和民などを経営する「ワタミ」。2008年6月、同社の新入社員の森美菜氏(当時26)は、連日午前4〜6時まで調理業務に就き、休日も朝7時からの早朝研修会やボランティア活動、リポート執筆を課されるなどで、入社から1カ月で時間外労働は約140時間に上り、「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けて下さい。誰か助けて下さい」と手帳に書いた。それから1カ月後に自殺した。

 その後、遺族は「長時間の深夜勤務や、残業が続いたことが原因だった」などとして労災の認定を申請。しかし、09年に横須賀労働基準監督署は仕事が原因とは認めず、遺族が神奈川労働局に審査を求めた。

 神奈川労働局の審査官は、「残業が1カ月あたり100時間を超え、朝5時までの勤務が1週間続くなどしていた。休日や休憩時間も十分に取れる状況ではなかったうえ、不慣れな調理業務の担当となり、強い心理的負担を受けたことが主な原因となった」として12年2月14日にようやく労災認定がされた。

 その後、同社会長の渡邉美樹氏はツイッターで「労務管理ができていなかったとの認識はありません」「ワタミは天地神明に誓ってブラック企業ではありません」などといい、物議をかもしたのは記憶に新しい。


 次に天気予報の「ウェザーニューズ」。同社の新入社員A氏(25歳)の遺族である兄から次のメッセージが寄せられた。「弟は気象予報士の資格を取得した後、念願のウェザーニューズから内定をもらい、08年4月から社会人としての明るい第一歩を踏み出しました。しかし、弟には大変厳しい現実が待っていました。弟の時間外労働時間は入社わずか2ヶ月目の5月に100時間を超え、6月、7月には200時間を超えました。この頃、弟から私に届いた唯一のメールには『毎日深夜2時とか回るから、ほとんど電話できないんだわ。もし家族が心配していたら、大丈夫だと言っておいて」と書いてありました。そして、この時間外労働時間は8月、9月にも150時間を超え、弟の心身を徐々に壊し始めていきました』

 そしてこうつづっている。「自殺する1か月前には長時間労働で疲弊していた弟に対して、上司から『なんで真剣に生きられないのか』『なんでこの会社に来たのか。迷い込んできたのか?』と叱責するメールが届き、弟はそのメールのコピーを持って、怯えながら実家に帰ってきました。家族の顔を見た弟はずいぶん元気づき、とんぼ返りで会社に戻りましたが、悲しくもそれが家族にとって最後の姿になってしまいました。この間、同僚の方が勇気を出して、弟が死ぬことを考えるほど悩んでいることを、必死に会社側に善処を求めて下さいましたが、その声も会社側には聞き入れてもらえず、むしろ、『そうやって甘えているだけ』と突き放されてしまいました。そして皮肉にも、入社から6カ月間にわたる『予選』と称された試用期間の最終日に弟は自殺しました」

 その後、10年6月に千葉労働基準監督署が「長時間労働による過労死」と認定。10年10月にはA氏の遺族はウェザーニューズに対して慰謝料など1億700万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴。すると、2カ月後、会社側が和解を申し入れてきた。これに対し遺族側は「これまでの労働時間管理、労務管理を見直し、社員が健康で安心して働ける職場環境を整え、再びかかる事件を発生させないよう具体的手立てを講じることを約束する」などの和解条件を提示。会社側はこの条件を受け入れて和解は成立した。

 だがしかし、この和解成立の直後、同社の社員が労働環境に不安を覚え、労働組合を結成したが、会社側からひどい目に遭っているという。「今日はその組合員が会場に来ています」と司会者が説明し、ガタイのいい2人の白人男性が壇上に上がった。そして、そのうちの一人がこう語った。

「11年1月に私たちは労働組合を立ち上げました。過労自殺があった後も、社内ではまったく労働管理が改善されませんでした。その中で会社のCEO(最高経営責任者)から一言だけコメントがありました。それは『出来事は一瞬にして終わる。全て過去のことなので、また明日に向かって仕事をしていこう』というものでした」

 さらに「労働組合を結成してから、実は、委員長が解雇されています。私の給料は17%以上、削減されています。今、まだ社内に残っている労働組合員は隔離された状態です。具体的には、400平方メートルのスペースに私たち2人だけが隔離されて、仕事も全て取り上げられています。会社の同僚は、私たちと話をしなくなりました。組合とかかわると会社から報復されるのではないか、と心配しています。さらに今年8月終わりに、私たち2人は異動させられると会社に言われています。ですが、異動先の部署名も仕事の内容もまだ何も決まっていません。きっと今以上に隔離するための戦略なのだと思います」とも語った、

 次に、富士通子会社でソフトウェア開発などをてがける「富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ」(富士通SSL)。2002年4月に同社に入社してSE(システムエンジニア)として働いていた新卒男性B氏は、月80時間以上の深夜勤を含む時間外労働をする中でうつ病を発症し、抗うつ剤の過剰摂取で27歳の若さで亡くなった。

 次にIT企業の「フォーカスシステムズ」。SEのC氏は入社3年目から急激に忙しくなり、06年4〜6月の残業時間は132時間、206時間、161時間と過労死基準を大幅に超過。年間トータルでは1350時間に達し、出勤前の朝食時、両親の見ている前で寝入ってしまうことも増えていった。

 そして同年9月16日、いつもどおり家を出た後、突然、衝動的に京都へ向かい、鴨川の川べりでウイスキーの中瓶をラッパ飲みして、急性アルコール中毒で死亡した。瓶は空に近い状態だった。なぜ京都だったのか。遺族である父親によると、C氏は亡くなる1年前に、高校時代の友人と京都旅行に行って、「すごくよかった。お父さんも行った方がいいよ」としきりに勧めていた。「解離性遁走」といって、つらい時に、急に一番いい思い出のところに行きたくなるうつ病の症状がある。C氏はこれに当たるという。

 次に、100円ショップ形態のコンビニ「SHOP99」(現ローソンストア100)を経営する「九九プラス」。清水文美(ふみよし)氏は高校卒業後、アルバイト生活を送り、26歳の時の06年に、ハローワークで九九プラスの正社員として店長をする仕事に就職が決まった。長年、正社員として働きたかったので、しっかりがんばろうと決意に燃えていたという。


 ところが、実際は、権限のない「名ばかり管理職」で残業代なしの過酷な長時間労働を強いられ、何度も上司に店長を降りたいと願い出たが、聞き入れてもらえず、ついには身体が動かなくなった。病院に行くと、重いうつ病、と診断された。

 その後、清水氏は首都圏青年ユニオンに加入し、組合が会社と団体交渉をしたが、会社側は「病気と仕事の因果関係はありません」と主張。清水氏は未払い残業代と慰謝料の支払いを会社側に求める裁判を東京地裁に起こし、11年5月31日、原告全面勝訴の判決が下った。判決では裁判長が「店長の職務内容、責任、権限、賃金からみて、管理監督者に当たるとは認められない」と指摘し、「時間外労働や休日労働に対する割増賃金が支払われるべきである」とした。うつ状態についても、「業務と本件発症との間には相当因果関係が認められる」として、会社が安全配慮義務に違反したと断じた。

「会場に清水さんが来ています」と司会者の述べた後、清水氏は壇上に上がり、こう述べた。「私がコンビニの店長として一番大変だったのは、人の手配をすることでした。仕事が終わって家に帰り、寝ようかな、と思っていた時に、家から電話が鳴る。携帯電話も鳴る。『店長、お店に来て下さい。人手が足りません』と。この電話は高校生からのものです。高校生は深夜働けないので、私がすぐにお店に駆けつける。次の日も同じように電話が鳴る。これが常態化して、2週間休みが取れない、という日が続きました。しまいには身体に変調をきたし、レジでお客さんに『ありがとうございました』と言おうとしたが、言葉が出なくなりました」

 そして清水氏は次のように話した。

「コンビニですので、商品管理は徹底しています。食中毒などは一切起こしていないと思います。しかし、商品管理の裏で、人がたくさん壊れていっている。そのいい例が私だと思います。私は病気が治らず、今も仕事ができない状態です。同僚も上司も身体を壊していました。こんな人を人とも思わない会社はあってはいけないと私は思います」

 ほかに、ファミレスの「すかいらーく」、牛丼すき家の「ゼンショー」、高級布団の訪問販売の「丸八真綿」、福島第一原発事故の「東京電力」、関越自動車道高速バスで居眠り運転事故を起こしたバス会社「陸援隊」と旅行会社「ハーヴェスト・ホールディングス」。

 約2時間にわたり、これらの企業を紹介した後、いよいよ各賞が発表された。

 まず「業界賞」を、フォーカスシステムズ、富士通SSLの2社が受賞。実行委員会は「IT業界は『デスマーチ』という言葉で表現されるように、慢性的な長時間労働の温床と言われています。そうした現状にあって過労死が正式に認定され、裁判で遺族が勝訴した貴社の事例は、痛ましいながらも貴重と言えます。よって貴社をIT業界を代表するブラック企業と認め、業界全体が改善されるきっかけとなることを願い、『業界賞』を授与します」と読み上げられた。

 次に、「ブラックなエピソードがよくぞここまで集まったと、驚かざるを得ません。貴社を『典型的ブラック企業』と認め、ここに『特別賞』を贈呈します」として、ウェザーニューズが同賞を受賞。

 次にウェブ投票と会場投票で最も票を集めたワタミが「市民賞」を受賞。

 そして「大賞」は、「放射能汚染を引き起こし、復旧作業で20ミリシーベルト以上被曝した労働者は4,000人を超えるなど、原発労働者たちの健康を守る責任を放棄しました。社会正義の観点から看過できない非人道行為であり、人類の歴史においても類を見ない恥ずべき行為です。よってここに『ブラック企業大賞』を授与し、その名を長く記録する」として、東京電力が「大賞」を受賞した。

 最後に主催者の一人の全国一般東京東部労組書記長の須田光昭氏は「様々な労組では、今日挙げた10社だけではなくて、もういっぱい、ブラック企業で働く労働者からの相談の電話が切りがないほどかかってきます。そのなかで、そもそも10社を選んで、そこからさらに数社を受賞させることはどうなのか。そういう迷いはありましたが、今日やってよかったと思います。抽象的に論じるのではなく、個別具体的に名前を出して批判しなければ、ブラック企業はなくならないだろうと思います。無数のワタミ、無数の東京電力があるのは間違いないが、一つでも多くブラック企業をなくしていきたい」(佐々木奎一)