7月19日に民主党の輿石東幹事長は、連合の中央執行委員会に出席し、民主党から離脱者が相次いだことに関して自らの責任を認めて陳謝した。その上で、選挙での支援継続を訴えた。連合の中央執行委員会に民主党幹部が出席するのは極めて異例だが、輿石幹事長自身から出席の要請があったという。
 これに対して連合の古賀伸明会長は記者会見で、小沢一郎元代表に関して、「新党を作ったことは極めて遺憾であり、支援関係は見直さないといけない。一線を画さざるを得ない」と述べて、次期総選挙で小沢新党を支援する考えがないことを明らかにした。連合による明確な小沢新党切りだ。

 かつて古賀会長は、小沢元代表と共に地方行脚をするほど蜜月関係にあった。それが、輿石氏と手を結んで小沢切りに出たのだ。一体何が起きたのか。
 少なくとも民主党政権発足後1年間は、連合も消費税率の引き上げには反対だった。だから、本来なら連合は消費税増税に反対する小沢新党を支持してもよいはずだ。
 にもかかわらず、民主党と連合が消費税増税で手を握った理由は、輿石幹事長と古賀会長のバックグラウンドにあるのだと私は考えている。

 輿石幹事長の支持母体は日教組だ。輿石氏は、かつて山梨県教職員組合執行委員長も務めていた。日教組の組合員は、公務員でむしろ税金で養ってもらう立場だ。だから、日教組の「政策制度要求と提言(2011〜2012年度版)」という資料をみても、教育予算の拡充という話は出てきても、消費税増税反対とは一言も書かれていないのだ。
 一方、連合の古賀伸明会長は、松下電器産業に入社し、全松下労連の会長を務めた。パナソニックは、年間700億円以上の消費税還付を受けている。パナソニックが何かインチキをしているというわけではない。商品を輸出した分については、消費税が免税になるうえに、仕入れで支払った消費税が還付されるというルールになっているからだ。だから、輸出比率の高い企業は、企業全体として消費税を払う必要がない。むしろ消費税率が引き上げられれば、逆に還付金が増える仕組みになっているのだ。
 こうした消費税引き上げの痛みを受けない者同士が、消費税増税を容認してしまうから、本来なら生活者代表として消費税増税にブレーキをかけなければならない労働組合が、逆にアクセルを踏んでしまうという異常事態が起きている。

 ただし、この問題には長い伏線がある。日本の労働組合の大きな特徴は、企業別労働組合であることだ。海外の労働組合は産業別の労働組合であるため、様々な企業の労働者が一体となって、強い政策要求力を発揮している。日本の労働組合が企業別という特殊な形態になった理由は、戦争中に企業別に作られた産業報国会という戦争協力組織が基盤になったからだ。
 しかし、それでも戦争直後にはGHQの民主化政策もあって、労働組合は大きな力を持っていた。それが、サービス産業化と非正社員の増加で、組織率を落としてしまった。2010年の組織率は18.5%と1970年代と比べて半減しているのだ。
 組織率が低下するなかで、勝ち組企業の正社員で構成される組合が発言力を強め、消費税率引き上げを推進してしまう。残念ながら、これが日本の労組の実態だ。