金星食を見てみよう




2012年は天文現象の当たり年と言われており、5月に起きた「金環日食」や6月に起きた「金星の太陽面通過」を実際に見られた方も多いのではないでしょうか。



次に見られる大きな天文現象としては8月14日の未明に、日本国内の広い範囲で見られる「金星食」があります。



そこで、今回はその主役とも言える、金星についてあらためて紹介したいと思います。





■ 「宵の明星」と「明けの明星」



金星を表す言葉として、「宵の明星」や「明けの明星」というものがあります。



金星は、地球の内側を回っている内惑星であるため、地球からは太陽とほぼ同じ方向に見えることになります。

そのため、日の出前の数時間と、日没後の数時間しかその姿を見ることはできません。



日の出前の東の空に輝く金星のことを「明けの明星」、日没後の西の空に輝く金星のことを「宵の明星」と言います。



■ 女神「ヴィーナス」の正体



マイナス4等級以上を誇る金星は、地球から見ると明るく輝く美しい天体で、この明るさは太陽・月に次いで全天で3番目となります。



また、望遠鏡で地球から金星を観測すると、月と同じように満ち欠けをしていることが分かります。



さらに、その大きさは、直径が地球の95%、質量が80%で地球とよく似ています。



ところが、その大気は約96.5%が二酸化炭素で占められており、それによる温室効果のため、表面温度はなんと摂氏400〜500度にも達します。

これは、金星よりも太陽の近くを回っている水星の表面温度よりも高く、太陽系で一番暑い(…というより熱い)惑星なのです。



そのうえ、そこに浮かぶ雲は、二酸化硫黄からできており、それが降らす雨は「硫酸の雨」となっています。



ローマ神話の愛と美の女神「ヴィーナス」とも呼ばれている金星ですが、このようにその正体は、地球から見た美しさとはかけ離れた、灼熱(しゃくねつ)と強い酸性のまさに地獄の惑星です。



■ 金星は仲間はずれの星?



地球をはじめ、太陽系の惑星では太陽は東から昇り、西へ沈んでいきます。



しかし、金星だけは太陽系の惑星の中で唯一、西から太陽が昇り、東へと沈んでいきます。(昔のアニメソングでそんな歌詞がありましたね)

これは、金星の自転だけが逆回転をしているために起こる現象です。



なぜこうなってしまったのかはよく分かっていませんが、一説によると、はるか昔、金星に別の大きな星が衝突したことで、その衝撃により自転軸がひっくり返ってしまったためではないかと考えられてします。



■ 2012年8月14日の金星食



日食といえば、先日の金環日食が記憶に新しいと思いますが、太陽の前に月がおいかぶさることで、太陽が隠れてしまう現象ですね。



それと同じで、金星食というのは、金星の前に月がかぶさることで、金星が月の影に隠れてしまう現象を指します。



今回の金星食は、8月14日の未明に東の空に見ることができ、細い月に金星が隠されるような形となります。

地域によって見られる時間は多少異なりますが、東京の場合で2時44分に始まり、3時29分まで続きます。



金星食自体は2003年以来9年ぶりですが、今回のように条件のよい(空が暗い時間帯の)金星食に限れば、1989年に見られて以来、約23年ぶりとなります。



「金環日食」や「金星の太陽面通過」の時のように、日食グラスなど特別なアイテムを用意する必要もありませんから、お手軽な天文ショーとも言えます。



そのうえ、ちょうどペルセウス座流星群の出現とも重なる時期ですので、運がよければその近くに流れ星を見ることができるかもしれません。



■ まとめ



地球から見ると明るく美しい金星ですが、その本当の姿について、お分かりいただけたでしょうか。



2012年の3大天文ショーの最後を飾る金星食。今回の金星食は、夜中の3時前後ということで、起きているにはつらい時間帯となりますが、お盆休みとも重なる時期ですので、夜更かしや早起きができる人は、ぜひこの機会に観測してみてください。



(文/寺澤光芳)



■著書プロフィール



寺澤光芳。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。